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牧志ウガン奉納大角力大会

牧志ウガン奉納大角力大会
高良弘沖縄角力(おきなわずもう)で歴史ある『牧志ウガン奉納大角力大会』が、今年は大相撲5月場所千秋楽と同日の5/24(日)に行われました。ウガン(御願)とあるのは、沖縄の角力は奉納相撲。牧志ウガン奉納角力は300年の歴史があるといわれますが、その歴史も一時途絶えている時期がありました。地域活動の実働部隊となる青年会からまずは復活させ、その3年後の平成5年に『牧志ウガン奉納大角力大会』を復興させたという牧志青年会の元会長・高良弘さんにお話を伺いました。
牧志ウガン奉納大角力大会「8年ほど途切れていたんですけど、やはり沖縄角力が好きであり、途切れる前まで自分自身も選手としてやっていたものですから、なんとか復活させたいという想いがありました。また、先輩方からもなんとか復活させてほしいという声があがってきていたものですからね」。

牧志ウガンに奉納する角力とは

青年会長どれ程にこの『牧志ウガン』が大切なのか、牧志青年会現会長の長岡力さんがこう語ってくれました。
「なんでこの牧志ウガンを守らなければならないのかというのは、琉球王朝の時代の東方の御願所の中心となる本御願なので、ここを守り、奉納する行事を任されているという事がどれだけ大きい意味を持っているのかというのを、高良弘さんをはじめ先輩方に教えてもらってきました。

ウガン他の地域のかたからも、牧志の御願所といえば「牧志ウガンの奉納ね」と言われるくらい、昔から有名で皆さんに知って頂いているところなので、自分たちは裏方ですが参加させてもらう事で自分たちは大きなものを背負ってやっているんだよというのを感じながらやっています。
ですから、あくまでも牧志の御願所に奉納することを主な目的として、奉納角力を行っています」との事。

この牧志ウガン奉納角力を主催している牧志青年会といえば、那覇大綱引きでは『東の一番旗』(東方の代表旗)を預かっている青年会です。すっかり都会化した国際通りのド真ん中で、今も大切な伝統が受け継がれていました。

沖縄角力の魅力と見所

角力協会理事長そして沖縄角力の魅力と見所については、沖縄県角力協会理事長・宇地原清さんに語って頂きました。
「沖縄角力の魅力というのは、大相撲の場合とは違い、沖縄角力の場合は背中と腰まで土俵につけなければ勝ちでありません(柔道の“一本勝ち”のように)。ほとんどが投げ技で決まるので迫力がありますよね。柔道でいえば、内股、払い腰、大外刈りと見応えのある大技で決まるということ。それが沖縄角力の醍醐味ですね。
それから、沖縄角力が江戸相撲と大きく違うのは、3本勝負なのですよ。制限時間もあるので、スピードがあって勝負がはっきりするところが魅力ですね」との事。沖縄角力の場合、最初からガッツリと組み手を取ってからはじまるので、そこも江戸相撲や柔道と大きく違うところ。

牧志ウガン「また伝統的な沖縄角力の大会といえば、『牧志ウガン』は波の上宮の奉納相撲と同様に歴史的にも古い大会だと言われています。ウガンというのは五穀豊穣や地域の繁栄を願っての角力大会。各地の祭の中でも沖縄角力が奉納されたりしていますよ」と宇地原理事長。この『牧志ウガン』でも、関係者の方々が御願所へ拝みをしてから奉納角力は行われています。

各階級で、それぞれドラマが展開!

また、『牧志ウガン』では軽量級・中量級・重量級と体重別で行われているのですが、もちろん今年も各階級の試合でドラマがありました。

軽量級には、沖縄角力で初の女性力士となった大城梨沙さん(久米島)が、昨年の『牧志ウガン』でデビューし今年で2回目の挑戦。順当に勝ち上がり準決勝ではこれまで対戦成績一勝一敗の天願雄太さんとぶつかり、見事突破。決勝戦では、現役レスリング選手でもある金城海輝さんに惜しくも破れましたが、男子相手に堂々の準優勝でした。
「沖縄角力の魅力は1対1の勝負でもあるんですけど、組んだ状態から試合がはじまるので、相手の力と拮抗しているのが自分にも伝わってくるんですね。気を抜いたほうが負けるというか、心が負けるというか。ギリギリの真剣勝負で、そういう緊張感があるところに魅力を感じています」と大城梨沙さん。今後も期待されるひとりです。
大城梨沙
中量級では、7連覇中の横綱・新垣力さん(読谷)が、昨年に続き、実弟でもうひとりの横綱でもある新垣直也さんと決勝で対戦し、見事連覇の記録を更新しました。
「昔、沖縄角力をはじめた頃に、親父から“牧志ウガンは伝統がある場所”と聞いていたので、そこで優勝できたのは嬉しいですね。弟にはまだまだ負けられません。8連覇という記録ですけど、誰にも塗り替えられないような連覇を続けていきたいですね」と、横綱として貫禄のある堂々としたコメントでした。
新垣力
62歳の現役力士の奮闘に拍手喝采!

そして重量級では、今大会、最も会場の声援が大きく盛り上がった試合があります。沖縄角力は大会参加への年齢制限は無いのですが、62歳で今なお現役の新垣勝さん(宜野座)が今年も参戦! 初戦では1週間前に行われた波の上宮での試合で破れた相手と再び対戦。力自慢の若者相手に一勝あげるごとに拍手喝采! 見事勝利を納め2回戦へ! 次の相手は同郷のしかも後輩です。お互い真っ向からの真剣勝負で1本取られながらも2本目は取り返したり。それはドラマのような名勝負を繰り広げました。最後はさらに逆転され惜しくも試合には敗れましたが、会場はその闘志に大きな感動をもらいました。
新垣勝
「現役でも30代ぐらいまでの中、60歳を過ぎた自分がチャレンジしている闘志をみた観客席からの声援も励みになり力になりますね。参加できることを楽しみにしています。その姿から兄弟や家族にも力づけようと思っています」と新垣勝さん。私も感動した一人ですとそう告げると、
「感動はお金では買えないですからね。ありがたく、そして健康あってのことです。これからもまだまだ、せめて65歳くらいまでは挑戦し続けたいですね!」とこれからも挑み続けることを宣言。今回、上位入賞にはなりませんでしたが、果敢に挑戦し続ける精神と技術が評価され、見事技能賞を受賞されました。

宜志富紹司また、その重量級を制した宜志富紹司さん(辺野古)からは、
「沖縄角力の魅力は、身体が大きければ必ず勝てるというのではないんですね。やはり技、小さい者でも技があれば勝てる、それが魅力ですよね。そういうところをぜひ皆さんにみて欲しいですね」と沖縄角力の醍醐味を語って頂きました。

その想いと感動を、未来へと届けよう

牧志ウガン現在、全島大会の中でも一番盛り上がるといわれる『牧志ウガン』では、このように、まるでドラマのような名シーンがいくつも観られたのでした。
「この『牧志ウガン』を観て、また若い人たちにも感心をもってもらえたら」と語るのは、元会長・高良弘さん。
そして現会長の長岡力さんも「奉納角力なので全島から来てくれるのも嬉しいですし、また子供たちも集まってくれるのが嬉しいですね(午前中は小学生の部も開催)。今参加している子供達が大きくなったら一般の部へ参加してもらったりとか、願わくば自分の子供達とかに受け継いでいってもらいたいですね」。

伝統を未来へつなぎたい。その想いはきっと次の世代にも届き、共鳴し続けていく事でしょう。

(取材: 桑村ヒロシ、取材協力: 牧志青年会、沖縄県角力協会)


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Posted by ryuQ編集室 at 2009年05月26日   09:00
Comments( 0 ) 沖縄のスポーツ
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