2008年07月23日
南島詩人・平田大一:シマとの対話・第38話『グスク』

〜沖縄の過去と未来について考えるとき、僕はシマと対話する。シマとは、僕にとって老賢者のような存在〜『シマとの対話』第38話。
南島詩人・演出家として活躍する平田大一。県内外を縦横無尽に走り抜け、骨太な活動を続ける日々の中で、思索の森を歩き、刻む、真実の言葉たち。
(毎週水曜日更新)

天に向かって広げた手は
風の行方をさがしていたのか、
そこにただ屹っているだけ、
それだけで天とつながる。
古の者よ
この地にどのような
志を興したのか!
シン!と一人
「静寂」の中、佇んで
グスクの真ん中に立っている。
誰が手向けたのか
線香の煙
空気の流れを
教えるかのように
木々の間から見える碧い空へ
昇って消えていった。
古の志
古の情熱
古の夢
感じて
僕は、今を生きる。
聖地は何ゆえ
聖地であるのか
地の持つ力ゆえ
祈り満ち溢れるがゆえ
人の念い天に届くゆえ
あるいは!
古の夢「今」も生きるがゆえ。
風が吹く。
蝉が鳴きやみ
気がついた。
「静寂」などではなく
実は蝉の大音声の
中にいたこと。
気がついて
ぐるり
城の址を見渡した。
我が胸の中の聖地と
共鳴する
この地から
新たなる志を発信する。
その真ん中には
そう、いつも、
「人」がいた。
天のカタチをした
「人」がいた。
人ありて
廃墟はグスクに
なるだろう。
束の間の「静寂」を破るかのように
蝉!
また吼え始める。
南島詩人・平田大一
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2008年07月16日
南島詩人・平田大一:シマとの対話・第37話『消費する文化…

〜沖縄の過去と未来について考えるとき、僕はシマと対話する。シマとは、僕にとって老賢者のような存在〜『シマとの対話』第37話
南島詩人・演出家として活躍する平田大一。県内外を縦横無尽に走り抜け、骨太な活動を続ける日々の中で、思索の森を歩き、刻む、真実の言葉たち。(毎週水曜日更新)

今の子ども達は恵まれすぎている。
お金があれば全てが揃う贅沢、
チョイスをすればいいだけの現実。
今の子ども達は生まれつきの「消費者」なんだ。
とある、トップ・マネージメント・セミナーでの
とある、企業の社長の意見に
ハッとさせられた。
会議の統一テーマは
「経営力と現場力が高める企業の生産性」
何故?僕が招聘されたのか?
統一テーマを眺めながら
じっくりと考えながらの新幹線。
一流企業の役員幹部が対象の経営者セミナー
の特別講師に招かれたんだ。
僕は子ども達が地域の伝承や伝説を
題材にして舞台に立つことで
地域を知り、自分を知り、やがては誰かに喜びを届ける
人間になっていく!
子どもが変わることで、大人が変わり、遂にはマチも変わる!
とその日、力説した。
日本を代表する企業の皆さん約150人。
歳を重ねた先輩達は「この国の未来」「次世代への道標」を
気にかけていた。
ビデオの中の子ども達「肝高く!」舞踊る。
演じ終わった後の挨拶の中での
「お父さん、お母さん、ありがとうございました!」
というコメントに、場内から期せずして拍手が起こる。
中には、目頭をおさえる人もいる。
講演会は大成功だった。
あの子達のお陰だった。
懇親会での語らいの席で興奮した表情の
その人が言ったんだ。
「今の子ども達は恵まれすぎている。
お金があれば全てが揃う贅沢、
チョイスをすればいいだけの現実。
今の子ども達は生まれつきの『消費者』なんだ。」
一息つくと、続ける。
「私の子どもの頃はね『生きる』だけでも精一杯。
今とは価値観がまるで違うんだよな。
でも、今がそう言う時代だからこそ!
だからこそ、君達の活動が貴重なんだよ。
『消費者文化』に生きるあの子達が、
立派に『生産』しているんだもの。
感動という名の『こころ』の生産活動をしているんだもの。
誰かに、ありがとうと言われる喜びを
誰かに、ありがとうと言える歓喜びを知っているんだもの。」
トンボ帰りの新幹線。
この活動を始めて十年目。
僕は深い想いで車窓から外を見た。
「平和で豊かな今が悪いんじゃないはずだ。
所詮、こういう機会を作り出せない大人の僕たちの
責任が大きいだけなんじゃないか。
僕は、もっともっと多くの子ども達に出会いたい!
そして語りかけてあげるんだ。
『タフになろうぜ!したたかに!
遠慮しなくていいんだ。夢を語っていいんだ。
出しゃばっていいんだ。自己主張が激しくってもいいんだ!』
大きな声で、自分の存在を叫ぶんだ!」
そして、遠くのシマで
今日も健気に稽古をしている
南の島のカケラ達に会いたくなった。
僕は自分の道を歩いている。
自分の道を堂々と歩いている。
でも、それは
まぎれもなく!
あの子達のお陰だ。
南島詩人・平田大一
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2008年07月09日
南島詩人・平田大一:シマとの対話第36話『空に舞う祈りの詩』

〜沖縄の過去と未来について考えるとき、僕はシマと対話する。シマとは、僕にとって老賢者のような存在〜
南島詩人・演出家として活躍する平田大一。県内外を縦横無尽に走り抜け、骨太な活動を続ける日々の中で、思索の森を歩き、刻む、真実の言葉たち。
『シマとの対話』第36話(毎週水曜日更新)

明け方、早い時間
海にきた。
走り続けた
靴を脱ぎ捨て
潮風に向かって
大きく深呼吸
無性に
海に還りたくなったんだ。
心静かに
海につかる
ぬるい海水に
頑なだった気持ちも
ほぐれていく。
水平線に浮かぶ雲は
夏のカタチ
眩しい陽ざしに
背筋もシャンと伸びる。
大きな舞台を終わらせた
かかわる時間が長いプロジェクト
山を越えた後の
自分へのご褒美なんだ。
風が優しく
吹いていく
僕の頭の上を
勢い余った燕(つばめ)が
ピーッと駆けていった。
波に揺られながら
自然と口をついて出た「歌」は
今、手懸ける舞台の「祈りの歌」。
山の向こう 鷲が舞うと云う
羽を広げ 風をつかむ
海に映る雲に 明日を占えば
己が生命の 声のままにと
尚巴志よ!鬼鷲よ
民を結ぶ 道を征け
尚巴志よ! 翔べ、尚巴志よ!
世界に鳴響む(しけにとよむ)
魂ぬ詩(ぬちぬうた)
潮風に乗った声は
時代も島も越えて
どこまでも碧い宇宙(そら)に
飛んでいった。
南島詩人・平田大一
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2008年07月02日
南島詩人・平田大一:シマとの対話・第35話『夏花』

〜沖縄の過去と未来について考えるとき、僕はシマと対話する。シマとは、僕にとって老賢者のような存在〜
南島詩人・演出家として活躍する平田大一。県内外を縦横無尽に走り抜け、骨太な活動を続ける日々の中で、思索の森を歩き、刻む、真実の言葉たち。
『シマとの対話』第35話(毎週水曜日更新)

明るすぎる太陽の
影が濃ゆすぎる…。
このシマの
光と影を考える。
このシマの
昔と今を考える。
海を歩く。
流れ着いた色とりどりの容器、
よく見たら
隣の国々の船から
投げ捨てられたものばかり。
白い砂浜に
累々と転がる
カラフルな容器。
悲しいぐらいに
この綺麗な浜辺の
風景の中におさまって。
浜辺で泳ぐカップルの
風景の中におさまって。
真上から照りつける
陽ざし
立っているだけで
汗がとまらない。
白い浜辺を歩けば
棘棘のアダン葉の奥に
見えてきたんだ
「人間魚雷」の格納庫。
アメリカ軍上陸のとき
敵艦に当って砕けろ!と教えられ、
死に方を教えられ
用意していた特攻艇。
若者達は
この綺麗な浜辺で
この灼熱の浜辺で
何を考えて毎日の訓練に
明け暮れていたのだろう…。
海から吹く風の
トロリとした熱風に
全てが飛んでいく。
結局
船は自爆することなく
無駄に捨てられた。
アメリカ連合軍は
八重山諸島には目もくれず
沖縄本島の中部を目指す。
唯一の「上陸戦」、
それが地獄絵図の始まりだった。
このシマの
光と影を考える。
シマの拝所の入り口の「鳥居」
そんなもの
このシマの元々の文化なんかじゃないよ
と知人が言う。
このシマの
今とこれからを考える。
砂糖キビなんて
この国の政策のひとつ
だから「キビ畑」から「歌」が生まれない
と知人が言う。
やたら威張った「添乗員」が
目の前を通り過ぎていく。
このクニのおかしな「旅のカタチ」。
飽きられていくシマが生まれる「旅のカタチ」。
このシマの
光と影を考える。
このシマの
人の欲深さを考える。
考えながら浜辺を歩く。
歩く
僕は
一人の詩人になる。
波打ち際、赤い漂流物。
浜辺に打ち上げられていたのは
さっきのカップルの捨てた
赤い赤い「夏の花」だった。
南島詩人・平田大一
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2008年06月25日
南島詩人・平田大一:シマとの対話・第34話『手紙』

〜沖縄の過去と未来について考えるとき、僕はシマと対話する。シマとは、僕にとって老賢者のような存在〜
南島詩人・演出家として活躍する平田大一。県内外を縦横無尽に走り抜け、骨太な活動を続ける日々の中で、思索の森を歩き、刻む、真実の言葉たち。
『シマとの対話』第34話(毎週水曜日更新)

気がついたら夏。
高い雲の夏が来た。
島の家、大きな窓から見える雲のカタマリ
ゴウンゴウンと唸りを上げて
凄い勢いで流れていく。
久しぶりの生まれ島は
もう夏の祭りの季節。
気がつけば遠くで太鼓の音がする。
あの雲のせいか、
この暑さのせいか、
海に流した「手紙」を思い出す。
遠い記憶の彼岸の空に
想いをつづった
あの夏の便り。
前略
再会を約束して
別れましょう
散って彩る花もあるけれど
今はまだあなた
サヨウナラ
とは言えません
再会を約束して
別れましょう
涙もひとつこぼせたら
素敵な思い出
拾い集めてかき集め
夜空を飾る星にして
あなたに幸いばかりがあるように
祈りましょう
再会を約束して
別れましょう
散って彩る花もあるけれど
今はまだあなた
サヨウナラ
とは言えません
再会を
再会を
約束して別れましょう
押しては返す
あの波のように
僕たちは何度もここで
廻りあう。
夕暮れの海に出てみれば
流れ着いた「思い出」が幾つもあって
僕は刹那!
少年の頃の僕になる。
白い月が
笑っていた。
南島詩人・平田大一
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