『ジュゴンの海』(インタビュー第3話)
今年は『2010国際ジュゴン年』です。そのジュゴンですが、日本では沖縄・奄美にわずか十数頭しか生息していないとも言われています。
うるま市立海の文化資料館の学芸員・前田一舟さんと屋慶名小学校、伊計小学校の生徒さんたちとのジュゴンについての総合学習で、紙芝居『ジュゴンの海』(作絵・長浜益美さん)が生まれる機会となり、それがより多くの人にもご覧頂けるように絵本(2010年6月23日発売)となって広がりをみせています。スペシャル・インタビュー【第1話】/【第2話】に引き続き、【第3話】をお届けします。
——今年は『2010国際ジュゴン年』、そして絵本『ジュゴンの海』の発売日が6月23日『慰霊の日』というタイミングでしたね。
前田一舟(解説担当者):僕はちょうどその日で良かったなと思いますよ。というのは、各都道府県には県民の日というのがありますが、沖縄だけ県民の日はなく、慰霊の日が恒久平和を願う日としてありますからね。
この絵本に描かれているのは、人間とジュゴンの争いも描かれていますが、共存共栄できるようなそういう道を見つけていくという意味では、出版の日がこの日で合っていると思っています。
長浜益美(絵と文を担当):この日にこだわった訳ではなく本当はもう少し前に出来上がる予定だったのですが、偶然にこの日になったということは、後で考えてみるといい偶然として良かったなと思います。
——絵本の構想期間はどれくらいだったのですか?
長浜益美:まず絵本の前に紙芝居のほうがとても早く出来上がりました。全17枚をわずか1カ月で描きました。
前田一舟:毎年4月にうるま市立海の文化資料館(屋慶名海中道路)でジュゴンのぼりを掲揚するのですが、依頼した年は、ジュゴンのぼりを掲揚する日に紙芝居『ジュゴンの海』をやったり、子供達のジュゴンの総合学習の発表会をしました。
僕はまさか1カ月で描いてくださるとは思ってもみなくて、それに間に合わせてくださいました。
長浜益美:私自身もびっくりしました。
これまで、何作か紙芝居を描いてきましたが、こんなに早く出来上がるなんて初めてです。
前田一舟:やっぱり、自分の中から生まれてくるものというのはスピードも違うのでしょうね。
紙芝居の原画が1ヶ月と言いましたが、実質は2週間くらいでしたからね!
長浜益美:私は紙芝居とか絵を描いていたけども、まさか物語の文章まで書くタイプだとは思っていなかったんですね。
それがこの絵本のキッカケで思いがけず出来たので、これは私にとってはとても嬉しいことですね。
前田一舟:そして今回、まさか“オリジナル”のジュゴンの物語を書き下ろしてくださるとは思ってもみなかったですね!
というのは、各地に伝承されているジュゴンの昔話のひとつが絵本に描かれると思っていたんですからね。
——現代版の新しいジュゴンの物語が、またひとつ誕生したということですね。
前田一舟:もっと多くの人が沖縄の地元のものを見たほうがいいと思うんです。いっぱい宝が転がっているんですよね。
そしてそれ(宝)を持っているのが、地域のおじいさん、おばあさんだったりするので、そしていろんな背景まで含めてこういう作品がどんどん増えていったらいいなと思っています。
長浜益美:それから、子供の頃の体験ってとても貴重だと思うんですね。
まずは前田さんがジュゴンの総合学習を持ってきて、そこから子供達のいい反応を担任の先生がちゃんと発展させてくれて、子供達がやりたいようにしていくことができた。
その子供達の動きが、大人の私達を動かした。子供達の頑張りがなかったら、私の紙芝居や絵本も出来なかったかもしれない。そういう意味でも子供達に恩返ししたいなと思います。
これから思春期を迎えて、何かつまづく事があっても、心の支えとか、負けないで立ち上がれるような原動力のひとつになるような、そういうものになったらいいな。絵本のようなかたちになるものを残してあげられたらいいなと思います。
前田一舟:伊計小学校は全校生徒7名ですが、地元の書店のお姉さんはチラシを配って歩いているくらいですからね。地元にも元気を与えているのかなと思いますね。
——最後に、全国の皆さん向けに、この本を通して伝えていきたい事を一言ずつお願いします。
長浜益美:人間もジュゴンと同じ自然の一部。ただ文明のいろんな恩恵を受けていると時々そういうことを忘れてしまう。文明に近づけば近づくほど、自然から離れてしまうような、不自然な情況になっていく。
そういうことに気付くきっかけだったりとか。人間もほかの生物の命を頂いて生きている存在であるし、だから人間も自然の一部なんだよ。みんな地球に住む生命体なんだなっていうのを感じてくれたらいいかなと思います。
前田一舟:本土の人からみると沖縄は自然が残っていてと見えるかもしれませんが、実はそうではないですよね。
それに、都会にいる人たちでも、きっと身の回りに何か宝があると思うんですよね。見かけだけの文明だけでなくて、精神的な文明というのが、元々おじいさんたち、おばあさんたちがつないできた宝があるはずですから、それを気付くようなきっかけがあればと思っています。
※インタビュー【第1話】はコチラ→
※インタビュー【第2話】はコチラ→
※絵本『ジュゴンの海』のお求めはコチラ→
(取材: 桑村ヒロシ、取材協力: ボーダーインク)
それがこの絵本のキッカケで思いがけず出来たので、これは私にとってはとても嬉しいことですね。
前田一舟:そして今回、まさか“オリジナル”のジュゴンの物語を書き下ろしてくださるとは思ってもみなかったですね!
というのは、各地に伝承されているジュゴンの昔話のひとつが絵本に描かれると思っていたんですからね。
——現代版の新しいジュゴンの物語が、またひとつ誕生したということですね。
前田一舟:もっと多くの人が沖縄の地元のものを見たほうがいいと思うんです。いっぱい宝が転がっているんですよね。
そしてそれ(宝)を持っているのが、地域のおじいさん、おばあさんだったりするので、そしていろんな背景まで含めてこういう作品がどんどん増えていったらいいなと思っています。
長浜益美:それから、子供の頃の体験ってとても貴重だと思うんですね。
まずは前田さんがジュゴンの総合学習を持ってきて、そこから子供達のいい反応を担任の先生がちゃんと発展させてくれて、子供達がやりたいようにしていくことができた。
その子供達の動きが、大人の私達を動かした。子供達の頑張りがなかったら、私の紙芝居や絵本も出来なかったかもしれない。そういう意味でも子供達に恩返ししたいなと思います。
これから思春期を迎えて、何かつまづく事があっても、心の支えとか、負けないで立ち上がれるような原動力のひとつになるような、そういうものになったらいいな。絵本のようなかたちになるものを残してあげられたらいいなと思います。
前田一舟:伊計小学校は全校生徒7名ですが、地元の書店のお姉さんはチラシを配って歩いているくらいですからね。地元にも元気を与えているのかなと思いますね。
——最後に、全国の皆さん向けに、この本を通して伝えていきたい事を一言ずつお願いします。
長浜益美:人間もジュゴンと同じ自然の一部。ただ文明のいろんな恩恵を受けていると時々そういうことを忘れてしまう。文明に近づけば近づくほど、自然から離れてしまうような、不自然な情況になっていく。
そういうことに気付くきっかけだったりとか。人間もほかの生物の命を頂いて生きている存在であるし、だから人間も自然の一部なんだよ。みんな地球に住む生命体なんだなっていうのを感じてくれたらいいかなと思います。
前田一舟:本土の人からみると沖縄は自然が残っていてと見えるかもしれませんが、実はそうではないですよね。
それに、都会にいる人たちでも、きっと身の回りに何か宝があると思うんですよね。見かけだけの文明だけでなくて、精神的な文明というのが、元々おじいさんたち、おばあさんたちがつないできた宝があるはずですから、それを気付くようなきっかけがあればと思っています。
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(取材: 桑村ヒロシ、取材協力: ボーダーインク)
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