『ジュゴンの海』(インタビュー第1話)
古くは沖縄の人類発祥伝説にも登場するジュゴンは、実際に数千年も前から人との関わりがあったともいわれますが、現代の沖縄にはもう数えるほどしか残っていません。ジュゴンの餌場となる藻場の海の環境がこの100年足らずで激変したこともあり、絶滅危惧種となっています。
その姿はめったに見ることができなくなりましたが、数十年前のまだ子供の頃にジュゴンを実際に見たことがあったという前田一舟さん(うるま市立海の文化資料館の学芸員)が、地元の子供達とジュゴンについて学ぶきっかけを作ろうと生まれた物語が『ジュゴンの海』です。
その物語の著者・長浜益美さん(絵と文を担当)と、今回の仕掛け人・前田一舟さん(解説担当)のおふたりに、ジュゴンのことや新しく生まれたこの物語の背景について、たくさんのお話を聞かせて頂きましたので連載でお届けしていきたいと思います。
――この物語を描くきっかけとなった背景について
前田一舟(解説担当者):'97年くらいに地元メディアに、辺野古の海にジュゴンが現れた姿が映し出されて、シンボルになりつつあったんですけど。そうじゃなくて、人との関わりが3500年くらい前からある訳ですから、それに実際に私たちのおじいさん、おばあさんがジュゴンを見てきていますし、もう少し身近になってほしいということで、これまでジュゴンについて調べ続けてきた訳なんです。
調べて残すだけでなくて、いかに子供達につなげていくかというのがあって、それで子供達向けに総合学習などをしかけていたんですね。
ジュゴンは世界で8万頭いると言われているのですが、でも沖縄では、おそらく20頭もいないんじゃないかとも言われています。
それくらい少なくなってきて、ちょうど100年くらい前と比較すると数百頭も激減している情況なんですね。
それから、子供達と総合学習をしながら気付いたことがあって、ジュゴンの姿がどういうものなのかビジュアル的に必要だなと、先生や生徒の皆さんと話しているうちに、絵本や紙芝居が必要じゃないかということになりました。
それで知人を通して、長浜益美さんに連絡を取り、依頼をしたのがはじまりでした。
長浜益美(絵と文の担当者):世間ではジュゴンが反戦の象徴みたいになってきているかもしれませんけど、文化的な面からもぜひ知ってほしいなと思いますね。
前田一舟:本当は自分たちの生活がジュゴンの住む海に直結しているんですよね。家庭から出る汚水や、赤土流出だったり、道路などの騒音だったりが影響しているので、そういうところから見直さないといけないんじゃないかと。
――古くは数千年も前から、ジュゴンは人との関わりがあるのですか?
前田一舟:はい。遺跡からジュゴンの骨が出てくるんですよ。海から5kmから10kmも離れているんですね。体重400kg近くもあるジュゴンを人間が抱えていけるようなものではないので、解体して乾物にして陸地に持ってきたんじゃないかと思われるわけです。さらにその骨でアクセサリーや道具を作っていたんじゃないかと調査されているところです。
喜納えりか(編集担当):長浜さんが描かれているジュゴンは親しみやすいタッチで表現されていますが、実は学術的にも忠実に描かれているんですよ。
前田一舟:実際に泳いでいる映像を見ていないのに、よく描けているところが凄いなと思います。
長浜益美:自分が描くと決めた時に、犬や猫ならイメージしやすくて普通に描けますが、でも、ジュゴンといったら普段見かけない生き物なのでどう描いていいものか。それで最初にこの話を頂いた時にお断りさせて頂いたんですよ(笑)。
前田一舟:はい、一度断られました(笑)。
長浜益美:でも、「ジュゴンって何?」って電話を一旦切った後に頭の中のイメージでジュゴンが泳いでいるのが浮かんだんですね。「もしかしたら描けるかもしれない」と思い、すぐ電話をかけ直して資料を送って頂きました。
それから、物語のストーリーは3日くらいで大体出来て、それでまずはジュゴンを知らないと描けないですよね。そこで一度お会いして、ジュゴンの姿が映ったビデオとか写真とかジュゴンの暮らす海などを拝見させて頂いて、たくさんインプットさせてもらいました。
ジュゴンを描くからには間違って描いてしまってはいけない。正しいかたちというのをまずは把握して、それからキャラクターを作っていきたかったんですね。
前田一舟:先日、本土のほうから電話があって、「ジュゴンはどこで見られますか?」「ジュゴンにはいつ会えますか?」という問い合わせがあったんですよ。沖縄の人でも今では見ることができなくなったジュゴンに、いつでもご覧頂ける絵本などは必要だなと思いました。
そしてこの絵本の活動のほかに、私たちが5年前から屋慶名小学校の子供達と総合学習をやっていたのを、伊計島の小学生の皆さんとも総合学習をやりはじめたんですよ。伊計小学校には全校生徒が7名しかいないんですけど、大きな学校ではない分、子供達の吸収力がもの凄いんですよ。地元のおじいさん、おばあさんからの話を子供達自身が聞き取って吸収し身につけたものを表現していくんですね。その学習の成果を、長浜さんにも観てもらったんですよ。
長浜益美:それを観て、子供達の為にもしっかりやらないといけないなという原動力になりましたね。
――ジュゴンはふだん見かけることができない生き物ですし、美ら海水族館にもいません。時々報道などで映されているジュゴンの姿は背中の一部だけだったりして、全容を見ることはなかなか無いですので、それが前田さんの活動でジュゴンのぼりや、長浜さんの絵本で知ることができますね。
前田一舟:僕は小学生の頃、地元の屋慶名の海でジュゴンを見たことがあるんですが、見ていない人のほうが多くて、ジュゴンがいることすら信じない人だっているんですね。
全国の水族館の中でも、唯一飼育しているのが三重県の鳥羽水族館だけなんですが、そこにも出掛けて行き、どのような動きをするのか、たくさん写真も撮ったりしてきたんですよ。
そして、いつかそれが求められるような時代が来ると思っていました。
――“それが求められる”とは、具体的には?
前田一舟:ジュゴンそのものというよりも、子供と家族をより深く結びつけるようなツールが絶対必要だと思ったんですよ。
(つづく)
※インタビュー【第2話】はコチラ→
※インタビュー【第3話】はコチラ→
※絵本『ジュゴンの海』のお求めはコチラ→
(取材: 桑村ヒロシ、取材協力: ボーダーインク))
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