『おきなわのわらべ歌』スペシャル【後編】
沖縄のわらべ歌の伝承と現状、そして未来へ向けた取り組みを、NPO法人沖縄児童文化福祉協会理事長の比嘉悦子さんにインタビューさせて頂きました。
――沖縄児童文化福祉協会10周年記念公演では、昔から沖縄に伝わるわらべ歌、日本の唱歌、世界の童謡曲などが披露されましたが、沖縄のわらべ歌についてはどれくらい前から伝承され続けているものなのでしょうか?
比嘉悦子理事長:人から人へと伝承されてきたものなので正確な年代はわかりませんが、いずれにしても、今歌われているわらべ歌というのは、島言葉で生活をした子供たちですから、明治生まれのお年寄りたちが残した歌といえますね。
私もわらべ歌を記録し続けてきていますけど、明治20年頃から学校が始まっていくものですから、日本語の唱歌の教育が浸透していくんですね。
その頃から島言葉(沖縄方言)を使ってはいけないというのが始まっていて、いかに沖縄の子供たちに日本語(標準語)を使わせようかという教育が始まるものですから、徐々にですね…。
それでも明治の終わり頃までは、家では島言葉での会話が出来ているのですが、大正生まれからは学校教育というものが徹底していて、また時代もヤマトグチを使うのがおしゃれでもあり、沖縄の唄を歌うひとのほうが少なくなりつつあったんですね。私の母は大正13年生まれですが、沖縄のわらべ歌はもう歌えなかったですからね。
明治生まれの昔の人は、遊びで歌ってきたので体に歌が染みついているから、90歳過ぎたおばあちゃんでもしっかり覚えていたりするんですね。ところが大正生まれになると小学校からヤマトの教育を受けているものだから、沖縄のわらべ歌に関しては記憶が途切れ途切れになっていて、唯一、おばあちゃん子だった人たちがわずかに知っているくらいですね。
――日本各地でもそうだったかもしれませんね。
比嘉悦子理事長:むしろ沖縄のほうが、遅くまで島言葉だけの生活があったので、まだいいほうだったと思います。
――昔はわらべ歌(や島言葉)を遊びながら覚えていったものですよね。
今では、おばあちゃんたちが子供だった頃の記憶を辿りながら、なんとかそれを伝承させて頂いて、そこから復活させようと。
比嘉悦子理事長:そうですね、伝承させようとやってきているわけですけど…。
――どんなご苦労がありますか?
比嘉悦子理事長:現在、沖縄のわらべ歌だけで伝えようとするには無理があるんです。
県内各地へ出前コンサートに行ってもあまりにもギャップがありすぎて、観に来ている子たちのお母さんでさえ、沖縄のわらべ歌を聴いたことが無かったりとか、いきなり昔からのわらべ歌っていうと、ちょっと難しいんですね。
それに現代のリズムも非常に単調なので、今の子供たちはモダンなリズムのほうに慣れていますよね。なので、沖縄のわらべ歌を聴いても魅力を感じてもらいにくくて、ぽかんとしていたりとか。
今の子供たちのアテンションをキャッチして、「面白いな」と興味を湧かせるためにはとても難しいんですね。
それでまず最初はディズニーの歌を歌ってから、沖縄のわらべ歌のほうに入っていったりとか、そういう現状ですね。
――今回のわらべ歌の舞台は、毬つきをしながらとか、とてもインパクトのあるものばかりでしたが、現代の子供たちの心には響かないのでしょうか?
比嘉悦子理事長:聴いて頂いて「あぁ、いいな」と思ってくださったら嬉しいのですが、つい数ヶ月前にも浦添市のてだこホールでも沖縄のわらべ歌を披露したんですね。その時の来場者からのアンケートで「言葉の意味がわからない」という感想が複数もあったんです。
つまり、自分たちの島言葉を、まったく外国語のように聞く人たちが増えてきたんだなと思っています。
それで今回の舞台でも、子供たちのわらべ歌の舞台の中で島言葉を説明していくおばあ役を入れたんですね。
昔は、そんな説明さえ必要無かったものです。すべて島言葉で表現できていたものが、今まで通りにはいかないので、現代語での説明を交えながらやってみました。世の中が変わって来ていることを、肌で感じています。
――「シンプルで単調だったからこそ、子供が覚えやすかったんじゃないか」と壇上でおっしゃっていましたね。あとは島言葉ならではの言葉のリズムとか、歌詞も身の周りにあったものからとか、それを反復させたものだったはずですよね。
昔言葉が難しくても、逆に、わらべ歌から入門できるではないかとも思えるのですけど。
比嘉悦子理事長:わらべ歌の価値というのは、島言葉が無くなっていく中で、わらべ歌の歌詞には先人たちからの島言葉が残っているんですよね。ですので、わらべ歌を教えながら島言葉を伝えていく。
自分の子供がまだ小学生の頃のエピソードですが、近所の子供たちにわらべ歌を教えていたんですね。その中には外国人の子供もいたんですが、日本人と区別しない指導をしてもちゃんと覚えていましたね。おっしゃるように、言葉にリズムがあって単調なので外国の人でも覚えやすい。ということは、島言葉を教えるいい手段だといえますよね。
――決して難しいものではないことの証明ですよね。
今回はそういうことを再認識できた公演だったのではと思います。
比嘉悦子理事長:ありがとうございます。会場の反応も良くて、みなさんに楽しく参加してもらえたようで、いい舞台だったと思います。
――最後に、読者のみなさん向けてメッセージをお願いします。
比嘉悦子理事長:昔の子供たちは動物が遊び友達だったり、自然のなかで育まれてきました。今の子供たちは人形とかテレビゲームとかばかりで、あまり自然とふれ合うことができないというところがあって、そういうあたりまえだった豊かな部分が不足していますよね。
わらべ歌には、夕焼けとか星や月も歌に歌われているんですね。宇宙を見上げる視点、そういう目や感性を持つということは心豊かでもあったと思うんです。沖縄のわらべを通して、そういう豊かな感性を育てたいと思っているんです。
自分たちのおじいちゃん、おばあちゃんたちが歌ってきた歌を知ってほしいし、そういう歌を通して、家族大事にする心、自然を通して小さなものにも命があるということを知ってもらいたい。
わらべ歌も素晴らしいですし沖縄の古い民話も語り継いでいくというのも私たちのひとつの目的ですが、最終的には、そのように子供の心の健やかな成長というのを願って活動しています。
(※10周年記念公演の様子はコチラ→【前編】をご覧ください)
(取材: 桑村ヒロシ、取材協力: NPO法人沖縄児童文化福祉協会)
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