2008年07月18日
海人カメラマン・古谷千佳子物語【第1話】

海人カメラマンとして、その生き様がTVドキュメンタリー『情熱大陸』でもとりあげられ、7月19日(土)には初の写真集『たからのうみの、たからもの』を出版することになった古谷千佳子さんに今回スポットをあててみました。TV番組の時間枠だけでは描ききれなかった古谷千佳子物語(WEB版)を連載でお届けします。
「沖縄の海人にみた“原点”を表現したい」
——そもそもどうして“沖縄の海”や“海人”さんを追いかけ続けることになったのか、そのキッカケは何だったのでしょう。古谷千佳子:15歳の時、沖縄へ家族旅行した際に、まず綺麗な海に惹かれました。
そして大学でダイビングを始めてあちこち潜っていたんですけど、沖縄でたまたま出会った漁師さんの姿に強く惹かれました。
“素潜りでタコをとって、鮮魚店に卸して日々を暮らしている”そんな姿に感動したんです。
——その時はまだカメラとの出会いよりも、まず先に被写体に惹かれたのですね?
古谷千佳子:大学時代に油絵を専攻していて、自分の記憶を引き出す糸口としてカメラは使ってはいたんだけど、その頃はあくまでも記録の為の手段でしかなかったんですね。
それよりもまず被写体(の生き様)にインパクトを受けました。
東京で暮らしていると、パック詰めされた魚や肉しか知らなかったので、自分で素潜りして魚やタコを銛で突いてそれで日々を暮らすという“原点”のようなものに強い衝撃を受けたんです。
——人間の営みの原点、そこに深い関心を抱かれたのですね。
古谷千佳子:分業化された現代社会はそれは合理的なんだけど、自分がどこに立っているのかがわからない。これは沖縄に暮らして気が付いた事なんですが、それが不安や社会のストレスにつながっているのかなとも思うんです。
自分たちの立ち位置がわからないような社会に暮らしている時に出会った漁師さんの姿に、“原点”を垣間見ることができ、そこにとても感動したんですね。
私は“表現者”になりたいと思っていたんですけど、本などで知識を得るよりも、自分で体験してそれを自分自身の体で吸収して表現したいなと思っていたんです。
漁師さんの世界を知ったことがきっかけで、実際に沖縄で暮らしたいと直感で感じ、それを実行しようと思いました。
その時の“暮らしたい”という気持ちは、“住みたい”というよりも“この仕事をしたい”。そしてそこから自分を表現して生きてゆきたいと思ったんです。

——絵画や写真も自己の表現かもしれませんが、暮らしを体感してそこから生まれてくるものも“表現”なのだということですね?
古谷千佳子:身体で吸収してどう表現してゆこうか、というのがまず先にあって、カメラマンになろうなんていうのは実は後の話なんですね。
また、画家になろうというのともまた違ったんです。
その前に、沖縄に行くならまず資金作りと漁師になる為には体づくりもしなければと思って、まず会社(旭化成)に就職したんです。昼休みは外食はせず、お弁当を作って公園で食べたり、マラソン部の人たちと一緒に走ったり、会社まで17kmくらいの距離を自転車で通勤したり、プールで泳ぎ込みをしたり、あとは潜水士の勉強をしたりしていました。
——海人になるために、一流企業に入ってお金を稼いで準備資金を作り、また体づくりのトレーニングも怠らず、それらを有言実行してゆく精神力は凄いですね。
古谷千佳子:アルバイトもした事が無かった娘が「海人になる」と両親に言ったとしても、きっと反対されるだけなので。とくに当時はダイビングというと危険なスポーツというイメージがあったんですよ。ましてや漁師となると言えば、間違いなく反対されていたことでしょう。ですので、(自分の目標は)誰にも言わないで、密かに自分の中で“沖縄に行くぞ”と決心して、2年くらい会社勤めをしました。
わたしは、やりたくないことは頑張れないのですが、そのかわり、自分が興味を抱いてとてもやりたことなら、ひたすらそれに向かって歩んで行く。
ダメといわれようと、もうきかないし、ダメといわれるのが判っているから、一人もくもくと計画を実行して行くんです(笑)。

——海人に弟子入りする前に、まずはその下準備を2年掛けて実行に移したという、古谷千佳子さんの情熱に驚かされました。
古谷千佳子スペシャル・インタビュー第2話では、いよいよ憧れていた海人になるため、実際に沖縄に渡ります。そこで、彼女を待ちかまえていたのは…
(古谷千佳子物語はつづく)
第1話:「沖縄の海人にみた“原点”を表現したい」(只今掲載中)
第2話:「海人への道。そして表現者としての道」(只今掲載中)
第3話:「海人に惹かれるのは、そこから色濃く深いものがみえてくるから」(NEW!)
※古谷千佳子『海人ちーかのブログ』:http://kakosukem6.ti-da.net/
(インタビュー: 桑村ヒロシ、取材協力: 古谷千佳子事務所)
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