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海人カメラマン・古谷千佳子物語【第3話】

海人カメラマン・古谷千佳子物語【第3話】
漁師さんとのコミュニケーションを築きながら、海に生きる人々の懸命な仕事ぶりをとらえ続ける海人カメラマン・古谷千佳子さん。また彼女自身の生き様もドラマチックです。15歳の時に遭遇した漁師さんの仕事姿に、強烈なインパクトを受けたことがきっかけで、今、彼女は自らも海人を経験し、そこからはじめて“表現”しようとカメラを手段として作品づくりをしています。彼女が本当に“表現”したいものとは? 古谷千佳子物語【第3話】をお届けします。

 第1話:「沖縄の海人にみた“原点”を表現したい」(只今掲載中)
 第2話:「海人への道。そして表現者としての道」(只今掲載中)
 第3話:「海人に惹かれるのは、そこから色濃く深いものがみえてくるから」(本日掲載!)


——漁師を自ら体験し、それを表現したいと、まずは漁師になる前に下準備をしてから沖縄の海人のひとりとなり、そしてそれを表現するための手段として写真を選びました。写真を本格的に修行するため、一旦、沖縄を離れ東京でスタジオマンとして下積みをしながら、夢を叶えるための努力を惜しみませんでしたね。

古谷千佳子:東京での広告撮影の仕事は春秋が忙しく、その時期は目を三角にして広告の仕事を頑張り、夏冬は沖縄に戻ってきて自分の作品づくりに励む、というスタンスで頑張っています。

私自身が漁師としてやっている頃は、たまに漁の現場にもカメラを持ち込んで撮っていたんですが、
「何、サボって写真撮っているんだ!遊んでいるなー!」って怒られていましたけど(苦笑)、今はカメラマンとして写真を撮るために船に乗っているので、撮りやすい環境が作れてきています。
海人カメラマン・古谷千佳子物語【第3話】
——どうしてそこまで、海で働く人々の姿に惹かれるんでしょうね?

古谷千佳子:シンプルなものが好きなんだと思います。シンプルというか“原点”を感じたんですね。

私は自分の生まれ育った東京が嫌いだった時期があったんですが、今は嫌いでは無くなったんです。東京にも原点の枝分かれがちゃんと在るのに、その原点が見えにくいだけで、本当はしっかりと在るんですよ。それが見えにくくて苦しかっただけなんだと思います。

沖縄という場所は、そういった“原点”が見えやすい場所で、色濃く深いものがみえてくる。東京だから無い訳でなくて、分業化によってコミュニティーが薄くなっているので見えにくくなっているだけなんではないかと思うんですよ。

——なんで見えにくくなっているんでしょうね。

古谷千佳子:日々の暮らしが忙し過ぎて見えにくくなっていたり。分業化で便利になった分、様々なことが“省略されて”見えなくなってしまっている。

わたしの親くらいの年齢の人たちは、戦後何も無いところから始めてきたので、今の便利がどのように便利になったのかがわかると思うんですが、でも今の時代(すでに便利な環境)に生まれてきている人たちにとっては、“当たり前になりすぎて見えなくなって遡れない”んだと思います。わたしもそうでした。
でも、ここ沖縄でその“原点”(=当たり前になりすぎて見えなくなっているけど本来大切なもの)を知ることができて、その苦しさから開放されたというか。

最近おかしな事件が多くなってきているのは、そのへんがわからなくなってきているのかなって。どうしていいのか、自分でもそれを辿れないんだと思うんですよ。

海人カメラマン・古谷千佳子物語【第3話】便利になった現代は、人との交流や、人が結ぶ絆までが薄くなって、ほんとうはみんな寂しいんですよ。なのにコミュニケーションまでどんどんとコンビニエンス化されたりしていますよね。うまく感じ取れなくなったり、うまく感情などを表現できない人たちが増えてきているのかなと思います。

そして沖縄といえば、地域、親戚、家族とのコミュニティーが強いですよね。都会ではそれが見えにくくなっているだけで、でも本当はそこが大切な原点でスタート地点ですよね。その原点を思い出してほしいなって。人の暮らしの原点が色濃く残っているのが沖縄だからこそ、それを感じてもらえたらと思うし、ちょっとほっとするだけでもいいし、「沖縄に行ってみたいな」って興味をもってくれるだけでもいい。

わたしにとっては、東京も沖縄も故郷だと思っているので、都会の子供たちとかにも“当たり前になりすぎて、見えなくなっている大切なもの”を気が付いてもらえるキッカケになるための“架け橋”になればと思っています。

私だって同じでした。マイナス面でいえば、小さい頃は、本当に好き嫌いが激しくて、理科の教科書にいろんな虫とかが載っているのが嫌いでしたね。たとえば、水族館の魚をみるのも恐くて泣いていた子だったんですよ。
「魚がきれい」とかいえるように変化したのは、15歳の時に沖縄に来て実際の海に潜ってから以降です。それまではとにかく当時は魚とか苦手で、先生に怒られようと、その理科の教科書のページが開かないようにノリ付けしていたくらいなんですよ(笑)。

あんなに魚が嫌いだった子が、魚をさばけるようになれるくらい変わっちゃう事だってある。マイナス100を、プラス100に変えられる可能性だってあるんです。
マイナスを克服できた時にはとても強くなれる。だから、今となってみると、好き嫌いが激しいということでさえも、また力だと思うんです。

——そういうことを、写真という“表現活動”を通して実践されているんですね。
ただ“海”や“海人”を写真に写して表現されているだけでなく、その向こうにあるとてもリアルなもの(今は見えにくくなっているもの)や本来大切なものを“表現”する媒体として、それが写真作品なっているのですね。


海人カメラマン・古谷千佳子物語【第3話】古谷千佳子:作品は、それに限定したメッセージばかりではないんだけれど、集約されているものとしては“わたしたちはいろんなものを頂いて生きている”。魚の命だったり、自然の恵みに生かされていたり、自然との共生だったり。

わたしの仕事で表現するものは、大切なものを思い出してもらう為の“キッカケ作り”なのだと思っています。でも、そこから先はそれぞれが考えることではあるんだけど。

それと私は、やっぱり撮ることが好きなんだなぁ。漁で獲物を捕ることもそうだし、写真を撮るのも、似ているところがありますね。

——きっと撮るのが好きなだけではないんでしょうね。「15歳の時に、まずカメラよりも、先にとらえたい被写体と出会った」というエピソード話を伺ったりすると、撮るのが好きなだけなら、収入のいい東京での広告写真家を続けていてもいいのでしょうけれど、古谷千佳子さんの場合はそうではなかったわけですからね。そして海だけでなく、陸にあがって島で暮らす人々の姿も、古谷さんの視点はとらえていますよね。

古谷千佳子:海で漁をする人たちだけでなく、陸での生活を守っている人(妻、家族)がいるから、男の人たちは安心して海に出られるのだし、専業ではなく半農半漁の人たちもいるわけですよね。

それに陸と海はつながっていて、陸を守れないと海を守れないし、そういう調和が大事だなっていう事にだんだん気が付いてきて、私も海の中に潜ってばかりいたところから水面に顔をあげて陸に這い出すことで、ようやくいろんなものが見えてきたんです。だから、海人だけでなく、海あっちゃーも畑人も撮ります。

——そうやって、古谷千佳子さんのように、たとえば沖縄の海人さんの暮らしを通して“人の営み、人と人の絆”を根気を持ってドキュメントをしてくれるかたがいるから、表層だけではない沖縄の姿がみえてくるのであって、そこからまた伝播していろんなきっかけが生まれてくるんだと思います。
——海人さんたちを撮るようになってからもう何年目くらいになるのですか?

古谷千佳子:そうですね、12年くらいになりますね。

——これまでも何回か個展を開かれたりもされましたが、写真集はこれで何冊目くらいになるのですか?

海人カメラマン・古谷千佳子物語【第3話】古谷千佳子:みなさん意外に思われるかたも多いのですが、実はこれで1冊目なんですよ。そういうお話はあっても、なによりも現場に出ることを優先に出掛けてしまっていたので、なかなかタイミングが合わなかったんです。今はようやく作品をまとめる時期なのかなとは思っています。

せっかく撮らせてもらった方々がいるのに、このままだと(作品としてカタチに残さないと)、引退されて丘に上がってしまうおじいちゃんや、高齢になって亡くなられてしまうおじいちゃんとかに申し訳なくて。

なので、撮り続けて12年になりますが、ここで節目にして写真集にしてみようと思いました。

——そして、これから古谷千佳子さんが目指してゆきたいところは。

古谷千佳子:まだまだ撮りたいものはあるのですが、撮るだけでなくて、観てもらう為の場もしっかりしていきたいですね。

また、伝えたい表現手段としても、写真だけでなく、文章だったり、スライドショーでその地の方々と会話を交わしたり、また子供たち向けのワークショップもしていけたらと思っています。たとえば、海のことから“食”というのは“命をいただいているもの”という事とかを、堅苦しくなく伝えてゆけたらと思っています。

私はそのキッカケが沖縄の海や海人だったりしたのですが、またこんどは私の作品を通してそのようなキッカケにして頂けたらと思っています。

 第1話:「沖縄の海人にみた“原点”を表現したい」(只今掲載中)
 第2話:「海人への道。そして表現者としての道」(只今掲載中)
 第3話:「海人に惹かれるのは、そこから色濃く深いものがみえてくるから」(本日掲載!)



※古谷千佳子『海人ちーかのブログ』:http://kakosukem6.ti-da.net/

(インタビュー: 桑村ヒロシ、取材協力: 古谷千佳子事務所)



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Posted by ryuQ編集室 at 2008年08月21日   09:00
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