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春の終わりに味わえる(人ん家の?)“野の恵み”

春の終わりに味わえる(人ん家の?)“野の恵み”(by嘉手川学)
 4月である。今頃はどこの学校や職場でも新しい雰囲気でどことなく浮かれ気分だと思う。ボクは個人事務所で一人で黙々とパソコンに向かい、原稿を書いているだけなので、毎年今の時期に久茂地や泉崎、松尾方面を歩いている黒やグレーのリクルートスーツを着た若い人たちを見ると、なんだかこっちの気持ちまで爽やか、というか新鮮なというかフレッシュな気分になり、スタートしたばかりの社会人に対して「まっすぐ進みなさい」と声をかけたくなる(かけることはないし、もし、かけたら変なおっさんである)。

 そんなフレッシャーズが町を闊歩する頃、ボクは家の周りを闊歩して“フレッシュな今だけの味”を探し歩いている。

 ボクの家の周りには実のなる植物を植えている家が多く、また、近くに識名霊園や琉球王朝時代から続いている由緒正しい墓地群もあることから、鳥に運ばれて勝手に生えた実のなる植物も多い。その実を探し求めてボクは家の周りを歩いている。

キームム(毛桃)
 まず最初に(勝手に)手に入れたのが、ウチのマンション向いの庭に成っていた「キームム(毛桃)」である。キームムはボクが子供の頃、実家の庭にも植えられており、実が熟すと赤に近いピンク色が果実の半分以上を覆い、モモの独特な芳香が漂う。もともと甘みは少ないが、今回はまだ時期が早すぎて実が小さく、もちろん熟してもおらず食べても渋みとかすかな酸味しかなく香りもまったくなかった。さすがに何でも食べるボクだが、キームムだけは実が熟すまでもう少しまとうと思った。

ローズヒップ
 続いて(許可も得ず)手に入れたのがローズヒップである。これはとある塀の低い民家の裏庭に無造作に植えられた一年中咲き乱れている野バラのローズヒップで、今の時期から夏にかけてよく見かけるので、勝手に貰ってきたのである。実が硬くまだきれいにオレンジ色に熟してないが、ネットでローズヒップの利法を検索したら、乾燥させてローズヒップティーにしたり、砂糖と一緒に煮てローズヒップジャムとかローズヒップゼリーにすると書いてあったが、そんな面倒くさいことやお洒落なことはできないのでそのまま食べている。しかし、これも熟し方が足りなので酸味が弱くかすかな甘みが感じられるだけだが、咀嚼して嚥下したあとに鼻腔の奥からほのかにバラの香りが立ち上ってきて、それなりに美味しいと思った。が、やはり、もうちょっと実が熟すのを待って食べたほうが美味しいのはいうまでもない。

ビワ
 で、またしばらく歩いていたらビワがたわわに実った庭があり、ちょうど家人がいたのでお願いをして実を貰った。ところで、今年は2月から3月にかけて沖縄が天候不順だったこともあり、例年に比べていろいろな果樹が実の成りかたが変である。もちろんビワも例外ではなく、今年の実はかなり小さく実の熟し方がまちまちである。きれいな実がなっている枝があるかと思えば、熟しすぎて黒く変色した実があったり、逆にまだ熟さずに青いままのみをつけた枝があったりしていて、その中から美味しそうな実を貰って食べた。採れたてなのでそれなりに美味しいのだけれど、例年より甘さが少なくジューシー感があまりせず、熟した実でもコクがなく抜けた甘さとどこかに青臭さが残っていたのである。

サクランボ
 で、次に採ったのがサクランボである。このサクランボも今年は早く収穫時期(食べ歩き)が終わっているのである。例年ならば本土が桜満開の頃に沖縄のサクランボもたわわに実るはずだが、今年は桜の開花が早かったせいかほとんどの桜が実を落としていた。が、うちの近くにある美味しい実をつける桜の木にはちゃんとサクランボが残っていた。ボクと中学生の息子は毎年この時期、近所に成っているほとんどの木のサクランボを食べ比べており、サクランボの美味しい木と美味しくない木の仕分け作業も二人できっちり済ましている。そんな中でも一番美味しいサクランボの実をつける木だけは二人だけの秘密にしており、その桜の木にまだ実がついていたのである。まだ実はついていたのだが、やっぱり今年は実のつき方がいつもより少ない気がする。そのサクランボを持って帰りきれいに洗ってそのまま食べたり、グラスに実をつぶして氷を入れ三ツ矢サイダーを注いでチェリーサイダーにしたら旨かった。ついでに泡盛を入れたら昼間から桜色に頬を染めてしまいそうになるくらいいい気分になった。

シマグワ
 で、翌日、あいにくの雨であったが、うちのマンションに自生している「シマグワ(島桑)」の実を採ろうと思っていたら、なんということでしょう、桑の実がきれいに熟す前に立ち枯れのようになっていたのである。毎年、そこの桑の実を食べる息子に聞いたところ、この前まで順調に熟し始めていたけど急に枯れだしたという。詳しい原因はわからないというが、「あの黄砂のあとから枯れたのかなぁ」と聞くと「あ、たぶんそうだはず」といった。うちのマンションの桑の実を諦めて近所にある桑の木やお墓に自生する桑の木、小学校の桑の木を見て回ったがほとんどの実が枯れているか実が成っていなかった。どうしようかと思っていたらまだいくつか実をつけている木が、ウチから離れた識名集落にあったので、雨の中で撮影しながら実を採ってきた。味は例年より劣る気がしたけれど、甘さが少し足りないくらいでそれなりに美味しかった。そして、シマグワも実をつぶしてサイダーを注ぎ飲んでみたけれど、サクランボの美味しさとは比較にならなかった。

 それにしても、今の時期から秋まで、沖縄では野の(人ん家の庭もあるけど) 味が満喫できるので、嬉しいシーズンの始まりである。これから、ヤマモモや野イチゴ、アセロラ、バンシルーと野になる実が増えてくる沖縄はやっぱりいいよね。なによりもただで味わえるのがいい。だから道を歩いている庭に生えている木を見ると、どんな果物がなるのかフルーツだけに気になる(木に成る)ボクであった。

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http://ryuq100.ti-da.net/c73393.html

春の終わりに味わえる(人ん家の?)“野の恵み”
筆者プロフィール:嘉手川 学(かでかわまなぶ)
フリーライター、沖縄県那覇市生まれ。沖縄のタウン誌の草分け『月刊おきなわJOHO』の創刊メンバーとして参画。沖縄ネタならなんでもOKで特に食べ物関係に強い。現在も『月刊おきなわJOHO』で食べ物コーナーを15年以上掲載中。
著書、編著、共著に『沖縄大衆食堂』、『笑う沖縄ごはん』、『泡盛『通』飲読本』(各双葉社)など多数ある。共著で『沖縄離島のナ・ン・ダ』(双葉文庫)と『もっと好きになっちゃった沖縄』(双葉社)、『沖縄食堂』(生活情報センター)が発売中。


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Posted by ryuQ編集室 at 2010年04月19日   09:00
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