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沖縄の新ソウルフード。タコは入っていないけどタコライス

暑い日には「ぜんざい」食べて元気に暑気払い
 本土では月遅れの旧盆が終わり行楽地の人手もそろそろピークを過ぎて、夏が徐々にフェードアウトしはじめる頃だと思うけれど、沖縄のお盆は8月22日が旧盆の初日のウンケー(お出迎え日)で、24日が最終日のウークイ(お送り日)になることから、県内各地はエイサーで盛り上がるため暑い夏はまだまだ終わりそうにない。

 エイサーといえば県内各地に伝わる念仏踊りの系統を踊る野外舞踊集団のことである。もともと沖縄本島中部を中心に踊られていたが、迫力ある太鼓のリズムと勇壮な踊りに魅了され沖縄県内全域に広まって、今では沖縄の旧盆になくてはならない夏の風物詩の一つになっている。エイサーのリズムを聞くとチムワサワサー(ときめいてしまうこと)して、矢も盾もたまらなく、太鼓の音のするほうへ駆け出す子供や女性陣は多い。エイサーは沖縄本島中部から始まった、現代のウチナーンチュの魂を揺さぶる「ソウルダンス」なのである。

タコライス発祥の地の看板 で、何が言いたいのかといえば、実は、今回テーマの「タコライス」も中部から始まり、全県下へと広がった沖縄の人になくてはならない―県民食の「沖縄そば」には大きく及ばないものの―新しい沖縄の「ソウルフード」の一つとして頭角を現している食べ物なのである。

伝統の「五大丼三大ライス」に対抗するオキナワンライス

 チャンポンのときにも少し触れたけど、本土の料理界というか、B級グルメ界(ちなみに、ボクは沖縄の食堂や食べ物を愛すれば愛するほど「B級グルメ」という言葉に違和感を覚えてしまい、沖縄の食べ物を紹介するときは常に「大衆グルメ」と呼んでいるので、ここでも「大衆グルメ」という言葉を使うことにするネ)には日本全国津々浦々の民草に愛され、さながら国民食のごとき伝統の味の「五大丼三大ライス」というのがある。「天丼」「うなぎ丼」「カツ丼」「親子丼」「牛丼」の五大丼と、「カレーライス」「オムライス」「ハヤシライス」である」。が、戦前・戦後と為政者の思惑(だと思う)で本土と切り離された沖縄では、この伝統の味の「五大丼三大ライス」というのが根付かず、独自の丼ものとライスもの発達した。

 その丼ものとは野菜たっぷりの「カツ丼」、三枚肉が美味しい「ラフテー丼」、夏の味覚の「ゴーヤー丼」、沖縄近海のマグロを使った「中落ち丼」の四大丼で、ライスものは「(黄色い)カレーライス」、チキンの入っていない(ことが多い)ケチャップ味の「オムライス」、麺類ではなくスプーンで食べる「チャンポン」、そして今回紹介する「タコライス」である。いずれも戦後生まれ、あるいは本土復帰後に生まれた新参者であるが、これが、ボク(だけが)の提唱している沖縄の大衆グルメの「四大丼四大ライス」である。
タコライスが県内各地に広がった理由

キンタコのタコライス で、今回、その四大ライスの中でも筆頭格のタコライスを紹介する。
 今でこそタコライスは沖縄県下に知れわたった県民食(ソウルフード)として認知され始めているが、ボクが始めてタコライスを食べたのは1990年の10月頃で、当時、知り合いが発行していた沖縄の文化を若い人の目線で捕らえたサブカルチャー雑誌の創刊号でOTVアナウンサーの仲地恵さんが「タコライス」を紹介している記事があり、それを読んだら食べたくなったので、「タコライス」発祥の店といわれている金武の「パーラー千里」まで行ってタコライスを食べたのである。それからいっぺんでタコライスのファンになり、ボクはアッチコッチの雑誌やガイドブックにタコライスの話を書くようになったのである。特に「るるぶ沖縄‘94」でパーラー千里のタコライスの紹介記事を書いたら、以降、「タコライス」は、他のガイドブックや雑誌、テレビなどメディアで注目されるようになり、「タコライス」をメニューとして出す店が県内各地に広がり、やがて、「オキハム」や「ホーメル」といった県内の大手食肉加工工場が商品として開発し、それから学校給食にも出るようになり沖縄の県民食として親しまれていったのである。

いよいよ本題、タコライスを味わう

 というわけで、やっと本題のタコスライスの紹介である。
 ちなみにタコライスとは酢につけたタコ(タコ酢)をスライスしてご飯の上にのっけたもの。ではなく、タコスの具をオン・ザ・ライスしたものである。タコスとはトルティーヤというトウモロコシの粉でできた皮で、香辛料をたっぷり利かせた挽肉をレタスやチーズと一緒に挟み込んだメキシコ料理で、沖縄には戦後、テキサス州出身の料理人やメキシコ系アメリカ人経由で米兵相手のレストランから始まったいわゆる戦後生まれのアメリカの味である。

キンタコ外観 今ではタコライスの発祥の店として金武町の「キングターコス」が知られているが、実は最初に始めたのは同じく金武町の「キングターコス」の姉妹店の「パーラー千里」である。タコライスの生まれた本当のきっかけは、お店で出していたタコスの具を賄い料理としてご飯の上にのせたら、あまりにも美味しかったので、店主がタコライスの名称で販売したのである。すると、安くてボリュームがありしかも美味しいと評判になり米兵の間で大ヒット。しばらくすると地元の人にも人気が出てやがて全県に広がって大ヒットとなり、アッチコッチの店でタコライスが売られるようになった。

おすすめの店を紹介

赤とんぼのタコライス ぼくの好きなタコライスの店は、やっぱり発祥の店でもある金武町の「パーラー千里」と「キングターコス」である。なにしろ、ごはんはホカホカの炊き立てのコシヒカリを使っており、タコスミートは香りがよくてスパイシーで絶妙な塩加減はご飯との相性もバッチリ。量がまたハンパなくチョモランマ並みに盛られたご飯の上にたっぷりとタコスミートとチーズをのせ、さらに千切りレタスとトマトをトッピングして、皿からこぼれる落ちるのを前提として盛っているのである。ご飯と絶妙にマッチしたミートの美味しさはもちろん、チーズのコクと風味は食欲をそそり、たっぷりの千切りレタスとトマトがミートとチーズのやや重たいともいえる味わいに新鮮で清冽な爽やかさを与え、いっそう美味さを引き出して味の多重高層を生み出しているのである。そして何より、トマトを使ったピリッとしたサルサがタコライス全体の味を引き締め、チョモランマ盛りのタコライスを飽きることなく一気に食べさせてくれるのである。

赤とんぼ その他では那覇の開南から下った通りの「サンライズ・なは」にある屋台風の小さなパーラー「赤とんぼ」である。さりげないけどタコスミートとチーズとレタス、ご飯との相性やバランスが絶妙で、ボク的には那覇で一番美味しいタコライスと思っている。

●赤とんぼ 那覇市牧志2-21-16 ℡098-866-9535 10:00~21:00 無休 
●パーラー千里 金武町金武4257-1 11:00~02:00 無休 
●キングターコス 金武町金武4323-1 ℡なし 12:00~05:00 無休

んじゃ、そういうことで、今月はここまで。

嘉手川 学の『ryuQ100味』バックナンバー:
http://ryuq100.ti-da.net/c73393.html

沖縄の新ソウルフード。タコは入っていないけどタコライス
筆者プロフィール:嘉手川 学(かでかわまなぶ)
フリーライター、沖縄県那覇市生まれ。沖縄のタウン誌の草分け『月刊おきなわJOHO』の創刊メンバーとして参画。沖縄ネタならなんでもOKで特に食べ物関係に強い。現在も『月刊おきなわJOHO』で食べ物コーナーを15年以上掲載中。
著書、編著、共著に『沖縄大衆食堂』、『笑う沖縄ごはん』、『泡盛『通』飲読本』(各双葉社)など多数ある。共著で『沖縄離島のナ・ン・ダ』(双葉文庫)と『もっと好きになっちゃった沖縄』(双葉社)、『沖縄食堂』(生活情報センター)が発売中。



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Posted by ryuQ編集室 at 2010年08月16日   09:00
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