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シマとの対話〜第II章(第15話)『勝負の3分間』平田大一

勝負の3分間
南島詩人・平田大一の“今この瞬間”に綴り出される詩、そしてそれに呼応するような1枚写真とのコラボレーションでお届けする連載『シマとの対話』。第II章を好評連載中!(毎月中旬更新)
シマとの対話〜第II章(第15話)『勝負の3分間』平田大一
第II章(第15話)『勝負の3分間』

「重要人物がみえるので来るように」
と県庁からの突然の要請で駆けつけた
国立劇場おきなわ。

ドアの向こうからやってきたのは
「沖縄担当大臣」のM氏であった。

「沖縄の文化振興と観光振興について、
 皆さんの率直な意見をお聞かせ下さい。」

テレビの印象より精悍な顔立ちの大臣。
真っ直ぐな瞳で、集められた沖縄文化の代表4人に静かに聞いた。

国立劇場おきなわ芸術監督のK先生。
琉球大学教育学部長のN教授。
イベントプロデューサーのS氏。
そして、なぜかこの僕がその場の末席にいた。

「大臣の次の日程がありますから、
 手短にお一人5分程度でお願いします」
随行の内閣府の担当官がぴしゃりと言う。

国立劇場と文化の担い手の課題や現状が語られ
沖縄の文化の特性や可能性について語られ
手がける興行の財政的な負担軽減への支援が語られ
僕の順番になったところで先ほどの担当官が
「すみません、皆さん熱く語られるのは宜しいのですが…
 時間が押しておりますので最後の方は、2、3分でお願いします。」

僕は、余りの想定内のやり取りに、何だか笑いがこみ上げてきた。
そして、このへんてこりんで切羽詰った雰囲気が
ある日の状況と似ていて、つい思い出して可笑しくなった。

あれは4年ほど前、東京でのこと。

全国的に有名な日本最大の人材派遣会社P社の主催で
「社会起業家100人プロジェクト」みたいなことで
推薦されエントリーした時のこと…

持ち時間一人20分「事業展開の可能性と将来性を発表すること」
と聞かされ準備して控え室に。
控え室には僕以外で三人が来るべき順番を待って待機をしていた。

僕の順番の次の女の子はビッシリと書かれた原稿の
最終チェックに余念がない…
何度もぶつぶつと読み返しては原稿をテーブルに伏せて
また、ぶつぶつと繰り返す。
彼女だけでなく見るとみんな神経質なまでに
目が血走っている。

やがて僕の名前が呼ばれ控え室から廊下へ。
係りの人の先導でプレゼン会場となる部屋へ移動を始めた時だった
「…すみません、本日発表の皆様全員にお願いをしているのですが、
 審査委員長の都合でどうしても早めに切り上げなければならなくなり
 …一人3分程度での発表をお願いします。」
とその係りの人が歩きながら言った。

「へ?」とビックリしている間に発表会場のドアの前に到着。
瞬間!僕は全てを理解した。
「20分を3分にしてということは…もしかしてこうやって
エントリーの人たち全員にプレッシャーをかけているのかも」
…よく分からないけど、かなり挑戦的な大会だってことはわかった。
僕は用意していた原稿をキッパリと捨てることに決めて
深呼吸を一つ…小さく「なめんなよ…」と呟くと
勢いよくドアを開けて会場に入った。
一瞬、次の順番の女の子の必死な顔が浮かび
参加している全員の健闘を本気で祈った。
「こんなプレッシャーになんか負けんなよ…」

一ヵ月後。
掲載された審査結果。
僕は全国からエントリーした300人余りの中で
見事!最高賞であるグランプリを受賞した。
そしてそれが今の「タオファクトリー」の活動になっている。

さて、国立劇場おきなわである。
M大臣を相手に「3分一本勝負」
のゴングが鳴った。

「大臣。必要以上のお金は要りません。
 でもチャンスを沢山下さい。
 そのチャンスを自力でモノに出来るタフな人材をつくること
 その人材を育成することが、僕の仕事だと思っています。
 合併にも、政権交代にもぶれない地域の取り組みを
 これからもしていきます。
 そして、今年もまた東京公演を予定しておりますので
 是非一度、実際に沖縄の子ども達が演じる
 奇跡の舞台を観ていただけたら幸いです。」

実際はそんなに上手くは喋れては
いなかったかもしれないけど
熱く語った3分間。

そして、再会を約束して
大臣は次の日程にせわしく移動していった。
一瞬で通り過ぎた台風のように。

3分間で綴る想い…

生きるとは「気迫!」なんだと
あらためて痛感する日々である。

                南島詩人/平田大一
Photo_KUWA
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南島詩人・平田大一とKUWA(ryuQ)の写真とが
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書籍版『シマとの対話【琉球メッセージ】
文:南島詩人・平田大一 / 写真:桑村ヒロシ(KUWA)
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Profile
平田大一(ひらた・だいいち)
南島詩人・演出家・那覇市芸術監督
1968年11月7日沖縄県竹富町小浜(こはま)島生まれ。

進学先の東京で、アートユニット「I・N・U」に参加、自作の詩を朗読する舞台活動を開始。卒業後は生まれ島「小浜」に戻り、アーティストへの楽曲・詩の提供、実家の民宿を拠点に「キビ刈り援農塾」をスタートさせるなど、地域と文化に根ざした幅広い活動を行う。
2000年から与勝地域の子供達による現代版組踊『肝高の阿麻和利』の演出を手がける。
2005年3月に勝連町・きむたかホール館長を卒業、4月11日に有限責任中間法人TAO Factoryを立ち上げ、代表理事に就任。同年、那覇市芸術監督に就任。
うるま市、浦添市、八重山、金武町、那覇市、5つの地域の子供たちのための舞台を手がけるほか、毎年、新作舞台を精力的に制作。沖縄県内はもとより、県外、国外にも支持者を増やしている。
代表作に現代版組踊『肝高の阿麻和利』、現代版組踊『大航海レキオス』など多数。著書は詩集『南島詩人』、『歩く詩人』(冨多喜創)、写真詩集『シマとの対話【琉球メッセージ】』ほか。

・平田大一ブログ『シマとの対話』:
http://hiratadaiichi.ti-da.net/


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Posted by ryuQ編集室 at 2010年03月16日   09:00
Comments( 0 ) 南島詩人・平田大一『シマとの対話』
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