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「煮付け」という名のメニューの不思議

「煮付け」という名のメニューの不思議
今回は、沖縄の人たちが特に問題意識も持たず、食堂で注文する「煮付け」というメニューについて考察したい。よく食堂を利用するウチナーンチュは、わりと頻繁に煮つけというメニューを注文する。ボクは『おきなわJOHO』という雑誌で月に1回は食堂を取材しているけど、取材したほとんどの食堂が自慢のメニューとして、沖縄そばと煮付けをあげることが多い。これはボクの食堂に対する持論だけど、「煮付けの美味しいと評判の店は沖縄そばが美味しく、沖縄そばの美味しい店はどのメニューも美味しい」と思っている。

嶺吉食堂何故そう思うのかというのは後で説明するが、沖縄の人が当たり前と思っている「煮付け」であるが、本土から来た人は食堂の「煮付け」というメニューに対して一様に疑問を持っている。本土で「煮付け」というと、魚や野菜を煮付けた料理のことで煮付けるメインとなる食材がないと何の煮付けだかわからないからだ。たとえばサトイモの煮付けとか、カレイの煮付けなど主となる食材を表に出すことで、「あぁ、これがキンメダイの煮付けだな」となるのである。ところが沖縄の食堂の「煮付け」にはメインとなる食材が表に出る頃はめったになく、本土の人が「煮付けってメニューにあるけどそれって何の煮付け」なのと、聞きたくなるという。が、しかし、食堂のオバちゃんたちは、そんな本土の人の質問に対して「何で、煮付けは煮付けさ、どこも同じものさ〜」といい、「主役のない煮付け」のようにまるで主語のない会話をお客と交わすのである。オバちゃんの質問に対する答えは、しいていえば研ナオコの「かもめはかもめ」状態である。「かもめはかもめ、孔雀や鳩やましてや女になれない」のように「煮付けは煮付け、みそ汁やそばや、ましてやチャンプルーになれない」という感じかなぁ。
みどりや食堂、三角食堂
とにかく、「煮付け」の疑問に対して、オバちゃんたちはつれない返事をするけれど、それは悪意があってやっているわけではない。「煮付け」という言葉が日本語でさらに「煮付ける料理」も本土にもあることから、若干の具の違いはあるけど似たような料理が本土にもあると信じているからだ。「なんで、煮付けは本土にもある普通の料理さぁ」的な考えがあるから、前述のような態度をとるのである。

大衆食堂ミルクが、しかし、実は沖縄の「煮付け」もいわば、本土の「煮付け」と似て非なる食べ物といえる。大きな違いはメインとなる食材があるにはあるが、ほとんどの店が豚肉を使用しているところである。使用頻度の高い部位をいえば圧倒的に三枚肉、次いでロース肉やBロースと呼ばれる肩ロース肉、そして、ソーキやテビチなど。あ、ここで思い出したけど、テビチやソーキの場合、たまに「ソーキの煮付け」や「テビチに煮付け」とメニューに書いてある店もある。豚肉以外の定番の具としては大根、ニンジン、ジャガイモ、コンニャク、豆腐(あるいは厚揚げ)、昆布、カマボコなどである。店によってはゴボウやカボチャ、青菜などがはいり、ピーマンやなすなどが入っている店もある。味付けは砂糖と醤油とだし汁の甘辛いタレで、お店がオープンしたおきから継ぎ足し継ぎ足しで煮付けのタレを守っている店もあり、シンプルな味わいだけど店ごとにその美味しさは違う。

ちなみに、前述の煮付けの美味しい店は沖縄そばが美味しいという理由だが、煮付けには豚肉がよく使われており、煮付けが評判のよく出る店はこの豚肉を大量に茹でることになる。その茹でた豚肉からはダシ骨とは違う旨み成分が滲み出し、鰹節との相性もバッチリなので、沖縄そばのダシに加えることで深い旨みを生み出すからである。
はつみ食堂、家庭料理よね
ところで、関西出身の友達によると、「沖縄の煮付けはおでんに似ている」といっていた。確かに沖縄のおでんとの具と共通するものが多いけれど、むしろ、ボクは沖縄の行事料理で御三味(ウサンミ)と呼ばれる重箱料理が原型ではないかと見ている。味付けも甘辛く煮ておりおでんに比べてご飯との相性もいい。何よりもかつて、庶民にとって行事ごとにしか味わえないクヮッチー(ご馳走)だったことを考えると、憧れの料理が食堂のメニューになったとしても不思議ではないと考えられる。とにもかくにも、「煮付け」は沖縄の食堂のメニューの中でも、注文率は上位に食い込む庶民に欠かせないメニュー、とにかく悲しいにつけ、嬉しいにつけ、楽しいにつけ、何かと美味しい煮付けである。

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「煮付け」という名のメニューの不思議
筆者プロフィール:嘉手川 学(かでかわまなぶ)
フリーライター、沖縄県那覇市生まれ。沖縄のタウン誌の草分け『月刊おきなわJOHO』の創刊メンバーとして参画。沖縄ネタならなんでもOKで特に食べ物関係に強い。現在も『月刊おきなわJOHO』で食べ物コーナーを15年以上掲載中。
著書、編著、共著に『沖縄大衆食堂』、『笑う沖縄ごはん』、『泡盛『通』飲読本』(各双葉社)など多数ある。共著で『沖縄離島のナ・ン・ダ』(双葉文庫)と『もっと好きになっちゃった沖縄』(双葉社)、『沖縄食堂』(生活情報センター)が発売中。


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Posted by ryuQ編集室 at 2010年01月18日   09:00
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