琉球アンダーグラウンド・インタビュー
2002年当時、日本の音楽界やクラブシーンに強烈なインパクトを与えた新クラブサウンドが誕生した。アメリカ人、ジョン・テイラーと、イギリス人のキース・ゴードンが沖縄で出会った事から1998年にスタートした音楽ユニット、その名は琉球アンダーグラウンド。彼らは沖縄の音楽、特に沖縄民謡などをテクスチャーに用いクラブミュージックとしてアルバムとしては過去3作品を世に出してきた。
そして2009年春、いよいよ待ちに待った最新作、3年ぶり4枚目のアルバム『ウムイ』が4/15にリリースされる。今回、半分は“沖縄の童歌(うちなーわらべうた)”を起用したというその理由は? また、“『ウムイ』というタイトルについて”、“共鳴しあう女性ヴォーカルのそれぞれについて”、また“沖縄音楽について”など、過去の作品のエピソードも交えながら、県内在住のキース・ゴードン氏に話しを伺うことができたので、リリース前にぜひご紹介したい。
——3年ぶりの新作『ウムイ』ですが、“沖縄の童歌(うちなーわらべうた)”を多く起用されていますね。
キース・ゴードン:前作『シマデリカ』('06年)が発売された半年後に娘が生まれたんだけど、彼女が夕方の6時とか7時ごろに泣き出す時に、いろいろトライしたけど泣き止まない。そんな時にレゲエやダブミュージックを聴かせると落ち着いてくれたんだ。また沖縄の童歌(うちなーわらべうた)を聴かせても泣き止むので、今回のアルバムに入れてみようと思ったんだ。
——『ウムイ』が出来上がって今はどんな気持ちですか?
キース・ゴードン:今は完成したばかりなので凄く満足しているけど、歌っていうのは、聴けば聴くほど飽きるものもあるし、大好きになるものもある。だけど半年後、もう一度歌を聴いたらどうなるか分からないから、半年後どうなっているのか?なんだと思う。だからその時も大好き・良かったと思えたら“成功だな”と思えるんだ。
——それはこれまでの作品でも同じスタンスなんでしょうか?
キース・ゴードン:そうだね。
——ではこれまでの作品は成功ですか?
キース・ゴードン:例えばこうしてインタビューをされている時点では、音楽っていうものについてはなかなか説明しにくい。昔は限られた時間で作らなければいけなかったけど、現代はいつでもスタジオが使えて(DTMなど)、歌を何回も編集が出来たりアレンジもできるけど、期日が来ればリリースはしなくてはいけない。だから完成していない歌でも世に出さなくちゃいけないんだ。だから「今、どう?」って聞かれても、正直「まだ完成していない」と言うしかないんだよね。
——ところで、沖縄の音楽(沖縄民謡)はキースさんにはどのように聴こえるんでしょうか?
キース・ゴードン:自分の中で、コネクト(つながる)するような気がするんだ。
——何がつながる気がするんですか?
キース・ゴードン:It's very warm. I can feeling. とても暖かい。暖かい気持ちに感じる。沖縄の音楽は自然で内容の詳細が分からなくてもイメージが伝わってくる。そして、あとで歌詞を調べると自分が感じたことと合ってるんだ。
——やはり歌詞の意味は大事?
キース・ゴードン:そう。だけど僕らは外国人だから歌詞は分からないけどね、曲の感じやボーカルの歌い方で気持ちは伝わってくる。
——琉球アンダーグラウンドがサウンドを作る時、テクニックとマテリアルのどちらが重要なのでしょう?
キース・ゴードン:一番大事なのは歌が伝わろうとしている気持ちが、伝わるかどうか。例えば最初のアルバムで『Soi Soi』という曲があるよね。原曲とMIXした曲で同じように『Soi Soi』が伝わるかどうかというのが大事なんだ。アレンジしてつまり原曲に対して失礼にならないかどうか。出来上がった後に原曲と全く違う雰囲気や魂が抜け出てしまったと感じたら、世に出すのを諦める。
作曲者や、伝統的な音楽を維持しようとしている人たちに対して失礼ないように意識しながら、自分はベストを尽くして作りあげるんだ。
——ということは、原曲をMIXして出来た作品がこの『ウムイ』。原曲と同じ気持ちの物がメッセージとして『ウムイ』に込められている、と考えていいですか?
キース・ゴードン:そうですね。だけどもし問題があるとすれば、気持ちはなかなか主観的なものだけど、自分が作った曲と原曲を聴いた時の気持ちが“違う”と感じたらズレが生じてしまっているという事なんだ。
——ところで曲作りの際ですが、ジョン・テイラーさんとはどうやってやりとりをしていったのでしょうか?
キース・ゴードン:これまでは1年に1回は直接会って話し合いをしていたんだけど、最近はお互い子供ができてなかなか会えない。だけど電話やEメールでお互いどんな音楽を聴いているか確認したり、「○○を作りたいけどどう?」というようなやりとりをするんだ。自分たちのスタイルはロックバンドとは違うから実際に会うことがなくても今は問題がない。一番大事なのは“お互いの好きな音楽の意見がマッチするかどうか”なんだ。
——それぞれの役割というのはあるんですか?
キース・ゴードン:お互いに得意なスキルはあるけど特に役割分担がどうっていうのは特にない。それぞれお互いの長所を尊重しながら作品を作るんだ。
——話題を今回のアルバムに戻しますが、ボーカル参加をしている内里美香・仲村奈月・上間綾乃さんの女性ボーカル3名について、何かエピソードってありますか?
キース・ゴードン:3人とも違う個性・性格を持っているんだ。ミカは成熟した声を持っていて、アヤノは若くて明るくナイーブなところもあって性格は声にも現れている。そしてナツキは例えば古いタイプの沖縄民謡を唄うような女性のユニークな声を持っていて、そして僕らの音楽の事を知っていた。3人の声はそれぞれトーンが違うのでうまく重なって響き合うと思う。
ファーストアルバム『琉球アンダーグラウンド』を作る時から、沖縄のシンガーとコラボレーションしたかったという。そしてセカンドアルバムにてその希望が叶った。当初はそれぞれ個性の異なる声質について、どうだろうか…という考えを持ったそうだが、3人が違う声だからそれぞれの声を感じることができ、その特徴が面白いと感じたそうだ。
——ところで今回『ウムイ』というタイトルにした理由は?
キース・ゴードン:タイトルを決めるのは非常に難しくなかなか決まらなかった。英語は僕らにとっては当たり前すぎる。そこで「沖縄の方言は?」「OK、いいよ」ということで、いくつかの方言をタイトル候補あげていった中で“ウムイ”という言葉が出てきた。
『ウムイ』(想い)には、自然や文化など沖縄の人たちが大切にする気持ちが現れている。だから僕らもその気持ちを大切にしたいと思ったんだ。そして『ウムイ』という響きが良くて好きだね。
——アルバムは、どんな風に聴いて欲しいですか?
キース・ゴードン:僕らのファーストアルバムはどのジャンルにすればいいか音楽業界でも分からなかったようで、最初はダンスミュージックとして紹介されたんだ。
確かにダンスの文化から来ている音だとは思うけど、実際には踊る音楽というわけではないよね。
だけど今はこういったジャンル、エレトリックな音楽を聴く層が増えてきたと思う。そして以前『mo-ashibi』のアルバムを沖縄の60歳の女性から「アルバムを買ったわよ」と言われ、本当に気に入ってくれて車の中でずっと聴いているそうだ。つまりそのように、あるカテゴリの人のためだけの音楽ではなくて、いろんな人に愛される音楽であって欲しいなと思うんだ。
今はインターネットを通じていろんな人たちが音楽を聴ける環境があり、交流もしやすくなった。同じような音楽を作っている人たちと一緒にネットワークを作り、過去には『Ryukyu Remixed』というアルバムも誕生した。
キース・ゴードン:インターネットのおかげでハンガリーの人で琉球アンダーグラウンドが大好きな人がいて、ホームページを作ってくれたんだ。でもハンガリー語だから分からないんだよね。面白いよねぇ(笑)。
“琉球”というキーワードで、沖縄とアメリカにいながら全世界で通じるクラブサウンドを作る二人。
歌そのものや歌詞・作曲者・唄い手、そして自然・文化、尊敬・理解そして親愛など全てを“ウムイ”という気持ちを大切にしながら接するというその姿は、沖縄や沖縄民謡に対するリスペクトが溢れるように伝わってくるとても深いインタビューだった。
ダブ、ヒップホップ、アフロビート、ラウンジグルーブ、エスニック…。エレクトリックの層と沖縄民謡・若手女性陣のボーカルがミックスチャーされ、また沖縄子守唄の新しい表現も試みた今作『ウムイ』は、ドライブや子守唄に、ビーチパーティーや通勤のお供にetc、様々なシチュエーションで楽しむことができそうだ。
(文: YANTY、編集+写真: KUWA、取材協力: リスペクトレコード)
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