「君知るや 沖縄の宝 銘酒泡盛」と桑の葉(比嘉淳子)
奥手の私が泡盛デビューしたのは、30代後半。
それ以前の私は恥ずかしくも、私の血はワインなのと、女優の様な台詞を宣うワイン派だった。
いえば、泡盛なんて、おっさんが車座になって世迷い言をつまみに飲む酒、とマイナスイメージが頭を占領し、悲しいかな、そんな大人をみて育った少女は、泡盛は御願に使うか料理酒的な使い方をする「女が口にしてはいけない酒」とインプットして、無駄に費やしてきたのだった。(ああ、モッタイナイ)
転機が訪れたのは今から遡ること4年前、友人が那覇市久茂地に古酒Barをオープンさせたことによる。
思えば、これが泡盛信奉者になるプロローグだったとはそのときは知る由もなかった。
オープン当日、タダ酒を飲みに、いや、お祝いに駆けつけると、祝い客「女子の部」でミーグチ(一番乗りの客の意味)の誉れある座を獲得し、カリー(果報)客として刻まれた。(男子の部ではこのサイトでもおなじみの嘉手川学さんだったと記憶する。)
話は反れて、祖母は私の誕生を心待ちにしていたそうだ。
母は、私を孕んだ頃、白い大蛇から子を授けられる夢をみたそうで「ああ!気持ち悪かったわぁ!」という夢で妊娠を知ったそうだ。
んで、生まれたのが巳年の真夏の巳の日。ただ、残念だったのが女子だったということ(嫁ぐという理由から。事実、嫁に行くと決まった日、巳の徳は置いていけといわれた。母ちゃん、そりゃ無理っす)。
祖母曰く、巳年の巳日生まれは大徳があるとかで、新規開店があればミーグチーで貸し出され、クジ引きがあれば寝ていようが連行され、嫌々ながらも礼金でお小遣いを稼いだものだ。振り返れば、祖母や母のマネージャー力もかなりなものだったと思う。「オツムはお馬鹿でも神童だったのに、今じゃね〜」と、母は懐かしがる。
そう、私はカリーを運ぶキューピット役なハズなのに、友人の店で泡盛の奥深さ、魅力にハマってしまい、泡盛コレクターとなり散財することになってしまった。
泡盛は香りも味も時を重ねる毎に熟し、7変化していく奇跡の酒である。
蒸し米に黒麹菌を加え、酵母と水を足して出来た液体のくせして勝手に息吹き、熟成を増して円熟していく。シトラス系、バニラ系、ベジタブル系、グリーン系と風味を変えていくそれには、生まれた土地の土、水、空気の記憶を残しているといわれ、たかが酒なのに生物体としての息遣いを感じずにはいられない。
中にはひねて薄っぺらい味になったもの、素直にまろやかなもの、艶っぽいものもある。
あの暗い瓶の中、黒麹菌の世界でなにが起きているのだろう。
もしや、黒麹菌の世界でも、お昼のメロドラマよろしく、いじめや争い、恋愛や結婚、三角関係から小姑問題などがあったりして、むふふと、妄想はかぎりない。
そんな風に、麹菌が試練を重ねて深い風味を出していたりするのなら、尚、女心をくすぐるのに。
ひるがえれば人生哲学であることに気づいた。
様々な経験を重ね、困難も丁寧に解決してきた人間が老いた時、その人の発する人間味や快い香りに人は集まるものだ。角が取れ丸くなったと表現されたりもする。アドバイスの引き出しの豊富さは苦難の数に比例するものだと思う。
ここまでの話から、連想するのは、「老いて丸くなる」で有名な、「柊」。
我が家の柊をみるにつけ、苗木だった頃、花も咲かさず、角を出し、人を突いて傷つけてきた木だったが、一緒に年を重ねると、葉の角も取れ、丸葉の多い木となった。冬寒い頃になれば、うっすらと甘いバニラ香を放って周囲の人をうっとりさせてくれる。冬の日、庭に出て柊をみては物思いに耽ったりするもよい。そして、若い頃と葉姿を変え、成熟していく木は他にもある。
桑の木がそれだ。
若木の頃は柏のような葉形をしているが、花や実をつけるお年頃になると、丸く柔らかい葉になる。
そういえば、黒麹菌の里は、沖縄自生の桑の木の幹肌にあるという。
幹肌のあの黒い点々が黒麹菌「アスペルギウス アワモリ」の里だそうだ。
きっと、昔の人が、「偶然」近くにあった桑の枝で蒸し米を混ぜていたとき、「偶然」の雨で慌てて瓶に入れたら、「偶然」に芳醇な酒が出来ていて、味をしめたのだろう。
“偶然が重なれば奇跡になる”
こうして出来た奇跡の酒泡盛は酔うために飲むのではなく、是非、ちぶぐわぁ(極小おちょこ)で風味の微妙な変化をじっくり味わってほしい。
私は、防腐剤もなしに何十年と熟成を重ねる姿に私淑を感じる。
ぐわっし!と男前に飲むよりも、チビチビと壮大なドラマを巡らせながら、時には、ひねた古酒にあたって「お里がわかるわね〜」といびりながら飲む酒は、濃ければ濃いほどチビリ具合が要なのだ。
●比嘉淳子の『ryuQ100花』バックナンバー:
http://ryuq100.ti-da.net/c73394.html
プロフィール:比嘉淳子(ひがじゅんこ)
2児の母。すっかり“沖縄のおばぁ”的存在になりつつあるこの頃。
『沖縄オバァ列伝・オバァの喝!』『オジィの逆襲』『沖縄オバァ列伝・オバァの人生指南』(双葉社刊)、『琉球ガーデンBOOK』『よくわかる御願ハンドブック』(ボーダーインク社刊)、『琉球新報・うない』『琉球新報・かふう』のほか、最新刊『沖縄暮らしのしきたり読本』が発売中!
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