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沖縄にもおでんが恋しい季節がやってきた?(嘉手川 学)

嘉手川学
沖縄11月に入り例年なら「そろそろニシ風(ウチナーグチで北風のことネ)吹き始めて、沖縄にも冬が始まる気配だね」って書きたいところだが、ここんところ、どうもイマイチピンとこない。ボクのコーナーでは今の沖縄の季節や空気感を書き出しというか、前振りというか、時候のあいさつというか、長いマクラというか、とにかく季節の話題から書き始めている。しかし、先月も先々月も原稿を書いている日がたまたまそうだったので「沖縄は涼しくなった」みたいなことを書いたら、それから2〜3日もしないうちに、夏が戻ったような陽気になり、ボクの原稿が「てぃーだブログ」にアップされるときには書き出しが的外れで、まるで当たらない天気予報のような、ボクは「お間抜け」ぶりを発揮した感じであった。
とはいっても、長いマクラに時候のあいさつを書かないとなんだかもの足らず、予想通りに推移しない季節を恨みつつ、それでも今回も季節の話からはじめたいと思うのは、今回の「食」のテーマが若干、季節感にまつわるからである。

沖縄地方は11月入っても連日最高気温が30度近くまで上がり、最低気温も25度前後で推移していた。そして、この原稿を書く数日前の11月7日には気温が11月としての最高気温を更新する30.8度まで上昇した。日本列島が北から順に着々と冬の装い始めたにもかかわらず、沖縄の秋や冬はいったいどこへ行ったのかと巷(主にボクと女房だけど)では噂していたが、10日の朝には那覇の最低気温が18.9度となり、沖縄にとって寒い朝となったのである。(前日よりも温度差が何度かあると体感温度的には寒いと感じたりする)
この時期、沖縄に住んでいる人にとって寒いと思えるのは最低気温が22度ぐらいからで(23度は微妙)、かといって長袖のシャツを着る人が極端に増えるわけではない。午後のなると多少天気が悪くても気温が上昇することがわかるため、少しぐらい朝が冷えてもしばらくは半そでやかりゆしウェアで過ごすのである。

で、ここからが本題ネ。
その気温が20度を割った寒い日の朝、ボクは那覇市内にある創刊25周年を迎える某JOHO誌を訪ねたら、一人の女性スタッフ「学さん、今日は寒いですね。こんな日は泡盛のお湯わりを飲んでおでんが食べたいですね」といった。ボクは「え、お湯わり!?」さらに「おでん!?」と驚いたのである。やっと今月のテーマ「おでん」が出てきた。
おでん
話は変わって沖縄でおでんというとどうもイマイチ、ピンと来ないという人もいるかもしれないが、実は沖縄は南国にもかかわらず、おでん天国とも言うべきところで、おでんを専門とする飲み屋が多く、それぞれに常連客がいたりして、一年中おでんを食べて泡盛を飲んでいるのである。それで何を驚いたかというと、「寒いからおでんが食べたい」といったことである。今は一概にはいえなくなったけれど、特に40代以上の親父たちには寒くなったからおでんという発想はなく、おでんが食べたくなったら、「おでん」という看板を掲げている飲み屋(おでん屋)で泡盛を飲みつつ食べるものだからである。真夏でもクーラーをがんがんに冷やしたおでん屋(クーラーが故障していたり、冷えない店も少なくないが)で汗をかきながらおでんを食べることが、沖縄の「おでん」の食し方だからである。

しかし、最近ではコンビニでおでんの美味しさを知った若い人たちは、おでんは冬に食べるものという認識を持ちはじめ(中学生の息子とその友人たちからのリサーチ)、寒くなると鍋と同じように家でおでんが食べたいというようになった。

昔、ボクが子供だったころ、おでん屋は、親父たちが酔っ払ってこぼす愚痴を聞いてあげたり、客同士が本音を語り合う場所で、呑ん兵衛の親父たちにはそれなりに必要不可欠の場所だった。最近ではそんな親父も少なくなり、おでん屋におでんを食べなれた20代前半の若い世代も進出するようになった。

ところで沖縄のおでんは本土とネタがだいぶ違うようである…
もともとおでんは関東風や関西ふうなど地域性の出る食べ物だが、沖縄のおでんは他地域と比べすごく特徴的だと本土出身者はいう。ずっと沖縄のおでんを食べているとそう思わないが、いわれてみるとなるほどと思う。大根やコンニャク、竹輪、がんもどき、昆布、茹で玉子、厚揚げといったなど全国共通のネタもあるが、ハンペンやつみれ、さつま揚げ、ごぼ天といった練り物を置く店がほとんどなく、代わりにウィンナーソーセージや青菜、そして沖縄おでんの主役・テビチが入っている。というか沖縄でテビチのないおでんはおでんじゃないといわれるほどで、お皿の中央にデーンと鎮座し存在感をアピールしているのである。ちなみに青菜として出される野菜はチンゲイ菜やウンチェーバー(空芯菜)、レタスが主流で、ほうれん草や小松菜はこれらはその野菜がないときの窮余の策でしかない代役的な野菜である。

独自に進化した沖縄のおでん。主役になったテビチだが、おでんのテビチはさらに進化している。ボクが好きな行きつけのお店「おでん東大」の三代目の美也子さんが考えた「焼テビチ」がそれである。やわらかく煮込んだテビチを、フライパンでじっくり焼いたもので、ソロはカリッと香ばしく中はやわらかでジューシー。骨の周りのこげた部分を必死になって歯でこそげ落としてまで食べたくなる絶品である。おでんの美味しさもさることながら、ここの店を(マニアックな沖縄ファンの)全国区に知らしめたのも焼きテビチである。
焼きテビチ
この話を書いていたら急に「おでん東大」のおでんや焼テビチが食べたくなった。
前述の沖縄が少し寒くなったから泡盛の「お湯わり」や「おでん」が食べたいといったのは、沖縄に移住してきて5年目の本土出身者である。彼女はおでん東大も焼きテビチも知らない。確かに寒くなったらおでんは旨い。けど、そうじゃなくても旨いおでん屋さんを知ると、季節に関係なく、いつでもおでんが食べたくなるのが沖縄のおでん好きである。ちなみにウチナーンチュは気温が10度を割るよっぽど寒い日や風邪を引いて飲み会に参加したときだけしかしか泡盛のお湯わりを呑まない。むしろ、おでん同様、季節に関係なく毎日たくさんお湯わりを飲んでいるというほうが、新しい泡盛の呑み方を実践している正しい酒飲みとしてと、酒呑みのウチナーンチュに尊敬されるのである。

●嘉手川 学の『ryuQ100味』バックナンバー:
http://ryuq100.ti-da.net/c73393.html

沖縄にもおでんが恋しい季節がやってきた?(嘉手川 学)
筆者プロフィール:嘉手川 学(かでかわまなぶ)
フリーライター、沖縄県那覇市生まれ。沖縄のタウン誌の草分け『月刊おきなわJOHO』の創刊メンバーとして参画。沖縄ネタならなんでもOKで特に食べ物関係に強い。現在も『月刊おきなわJOHO』で食べ物コーナーを15年以上掲載中。
著書、編著、共著に『沖縄大衆食堂』、『笑う沖縄ごはん』、『泡盛『通』飲読本』(各双葉社)など多数ある。共著で『沖縄離島のナ・ン・ダ』(双葉文庫)と『もっと好きになっちゃった沖縄』(双葉社)、『沖縄食堂』(生活情報センター)が発売中。



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Posted by ryuQ編集室 at 2008年11月17日   09:00
Comments( 1 ) 琉球百科シリーズ
この記事へのコメント
おでんですか~。

この時期、恋しいですよね!

個人的には、大根が好きです。
Posted by 沖縄不動産ブログ同友会の管理人 営業MEN at 2008年11月22日 17:17
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