沖縄県産本フェアの密やかな楽しみ(新城和博)
沖縄県産本業界は、九月ともなると、二学期を迎える学生なみに忙しい。というのも毎年九月末からスタートして三週間ほど開催される「沖縄県産本フェア」があるからだ。その準備で、我がボーダーインクの編集スタッフも時折自らの業務をうっちゃんなぎて、はまっている。特に今年は第十回目、ということもあり、九月十三日から始まるプレイベント「地域史・字誌フェア」やホールイベント、さらには大景品抽選会と、力の入れようが違う。(日程など詳しくは「沖縄県産本フェア」ブログ:http://kensanbonfair.ti-da.net/へ)。
このコラムでは、主に「沖縄県産本」を紹介する、というのが趣旨であるが、その「県産本」とはなんぞや、と体感するのには、このフェアに足を運んでみるのが一番だと思う。「沖縄県産本の今」が現出しています。そして、そこでぜひ活用していただきたいのが、出品目録である。
「沖縄県産本出品目録」は、1999年に行われた第一回以来、フェアの度に作られ、無料で配布している。参加している各版元ごとに出品された本のタイトルや著者名、定価などが記載され、その年次に発行された新刊には印がついている。もちろん各版元の連絡先やメールアドレスやサイトのURLなどもばっちり載っている。
当初800点ほどの出品数だったのが、第十回の今年は1400点を超えている。年を重ねるごとに少しずつ趣向を凝らして、第一回目は「県産本の潮流」として、戦後から今までの沖縄の出版の大まかな流れをまとめた文章と年表があり、第六回にはさらにそれを深化させてたパネル展「戦後県産本のあゆみ」の内容が抜粋されている。これはなかなか通史として便利で、僕は某大学の講義の際の資料として活用させてもらっている。
第八回の目録には参加版元へのアンケートが掲載されていて、今読んでもなかなか興味深い。ちなみにボーダーインクのコメント・PRはこうである。
〈出版はビジネスであると同時に思想です。売れる売れないは二義的で、信念を貫くのみと居直ることもできます。しかし割り切りも居直りも思考停止であることには変わりありません。つねに未知なるものとして立ち現れる現在を主戦場とするところにこそ、出版の醍醐味と悲惨があるように思えてなりません〉
とても社のPRとは思えないこの文章はM社長の手によるものだ。「出版の醍醐味と悲惨」まっただ中の僕の心に染みます。
こういうのもある。
〈「県産本」っていうと、中身は「沖縄」なんだろうな。この頃は「沖縄ブーム」とやらでカラフルなガイドブックが書店の棚を賑わしている。「俺も早くこの時流に乗らなきゃ」と思ってみても、「そば屋」「cafe」「穴場」とか、そんなのに浮かれてもしょうがない。自分なりに「沖縄」を見つめ、ゆっくりでも一つ一つ作っていくしかないんだろう。でも「県産本=沖縄」でなくてもいんじゃない〉
これは「ryuQ100冊4月号/ある意味『ミスター・沖縄県産本』」で紹介した、ゆい出版のコメント・PRだ。
この目録を最終的に沖縄県産本ネットワークとしてまとめる作業を行っているのが、沖縄タイムス社の友利仁(ひとし)氏である。十回目の今年はさらに凄いことになっていて、出版社別は当然の事として、今回はキーワードや著者名から引ける索引を用意しているらしい。はっきりいって、とても楽しみにしている。目録作り大好きの友利氏ならでのは仕事だ。
沖縄県産本ネットワーク編としては、実はもうひとつ単行本の形でまとまった『沖縄県産本目録』(発売元・沖縄タイムス出版部)が、2003年に出ている。これも実は友利氏の手によるものなのだが、1991年1月以降から2003年8月までに発行され、または流通されており、克つ、T氏がその存在を確認した「県産本」を、分野別にまとめたものだ。もちろん書名、著者名の索引付き、である。
「凡例(のようなまえがき)」で、この目録を作るにあたっての[沖縄県産本とは]についての定義が面白い(沖縄県内の出版社が出した本こそが県産本であることは前提として)。すなわち「単行本であること」「定価を記してあること」「1991年以降に刊行されたこと」。最後については説明が必要だ。そもそもこれまで刊行された県産本の全てを収録するのは無理。ではどこで区切ってその目録に載せるのか。そこで出てくるのが『新版奄美・沖縄学文献資料目録』(天久斉編ロマン書房本店発行)と『沖縄書書誌総覧』(新城安善著沖縄図書館会発行)である。この両書の発行が1991年だったのだ。〈図書館の蔵書目録を別にすれば、その両書以降、沖縄関係の書誌に関する本は流通していないはずである〉なのである。
ということは、この両書に、『沖縄県産本目録』、そして今回のフェアの索引付き目録を合わせれば、これまでの沖縄県産本の、特に本屋で流通した県産本については、その全体像を把握できるのではあるまいか。違うか。でも楽しみなことである。
ちなみに『新版奄美・沖縄文献目録』の版元のロマン書房とは、現「BOOKSじのん」のことであり、沖縄県産本ネットワークにも参加している。編者の天久斉(ひとし)氏は、今回のフェアのプレイベントのため、沖縄島を飛び回り60ほどの「字誌」を集めてきた。字誌は、一般の書店ではほとんど流通しないものなので、これは県産本マニアの方は必見の品揃えとなるはずである。フェアは準備する方も苦労も多いが、こうした楽しみも待っているのである。二人の〈ひとし〉の活躍に注目だ。
●新城和博の『ryuQ100冊』バックナンバー:
http://ryuq100.ti-da.net/c73391.html
プロフィール:新城和博(しんじょうかずひろ)
沖縄県産本編集者。1963年生まれ、那覇出身。編集者として沖縄の出版社ボーダーインクに勤務しつつ、沖縄関係のコラムをもろもろ執筆。著者に「うっちん党宣言」「道ゆらり」(ボーダーインク刊)など。
ボーダーインクHP:http://www.borderink.com/
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