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南島詩人・平田大一:シマとの対話・第14話『源遠長流』

第14話『源遠長流』(南島詩人・平田大一)
〜沖縄の過去と未来について考えるとき、僕はシマと対話する。シマとは、僕にとって老賢者のような存在〜

南島詩人・演出家として活躍する平田大一。県内外を縦横無尽に走り抜け、骨太な活動を続ける日々の中で、思索の森を歩き、刻む、真実の言葉たち。
『シマとの対話』第14話(毎週水曜日更新)
南島詩人・平田大一:シマとの対話・第14話『源遠長流』
旅の空の下で島を想う。
素直な眼差しで、島を想う。
島が、僕の原点だ。

99年10月15日。
「人と人でつながらない仕事って何だろう」
大阪、高槻の湯船につかり
キムさんはポツリと呟いた。

世の中は「タイムカード」そして、
地位や役職でつながってゆく仕事ばかりが
仕事と思われているから、僕も大きく深呼吸
大きな湯船に肩までつかりゆっくり考えてみたんだ。

1日8時間が仕事、
「アフターファイブ」などという
概念は一体何だろう。

真夜中の風呂場に二人
キムさんと過ごす二人だけの打ち上げは、
本当に人の心が嬉しい「コンサート」だったねと
つい夜遅くまで語り合い「今」の自分を照らしては
ふと考えてみたんだ。

あの頃、島を飛び出してきていた僕は
帰るべき島がない
帰るべき家がない
ホントに!その淋しさに
心が凍えてしまいそうだったから

帰るべきところなき自分というものを
ゆっくり見つめてみたんだ。
色々考え込みすぎて、少し臆病になっていたのかもしれない。

あの頃、どうしようもなく霞んで見えた。
「演出家」というあてにならない道。
「力なき自分」という現実。

酒のせい、それとも風呂で上気したからか、
つい、語り過ぎた夜、黙って話しを聞いていたキムさんは、
優しく笑みを浮かべて僕にこう言った。
「今のままでいいよ、今の君のままで。
人と人でつながらない仕事って何だろう。
俺達は、幸せだよ。そう思わないかい?」
キムさんは、そう言って、また微笑んだ。

僕は、顔を洗うふりをして、そうして静かに涙を拭った。

僕がしたい仕事って何だろう。
人に胸を張って強き自分でいられる仕事って何だろう。

背中で娘に語れる生き方って
何だろう。

家族って何だろう。
生まれた島って何だろう。
根っこって、何だろう。

僕の中から声がする。
「挑み」を求めよ!と声がする。

家族と島と弱き自分に
今こそ向かい合えと声がする。

自分でしかできない生き方を
やりたいだけだ!
それを、やってみよう。
うん。
やってみよう。

「ヒラタダイイチ」というシゴトを。
それが、僕でしかできない仕事なんだ!

ザブン!
勢いよく、湯船に沈んだ。

「前略 南のシマジマ」

コンベンションセンター展示棟。
世界中から集まった「ウチナーンチュ」
5000人の前に僕はいた。
2006年10月15日。

40分という短いステージの出演の為に
集まった僕の仲間は14団体、約400人。
「ちばりよー!世界のウチナーンチュー!」
僕は力の限り叫んだ。
世界に届けとばかりに叫んだ。
あの夜。
あの大阪の夜から、丁度「7年目」の夜だった。

キムさん。
僕は、今でもあの夜のことを忘れていない。
キムさんの優しさを忘れてないよ。
あの夜が僕の流れの源なんだから。
「源遠長流(げんおんちょうりゅう)/源遠ければ、流れは流し」
僕の国ではそう言うんだって、キムさんに伝えたい。

そして、僕は今も旅の空の下にいる。
素直な眼差しで、島を想いながら、
島が僕の原点だと想いを馳せながら。

その島には、優しい太陽の風が
今日も吹いていると、僕は信じている。

南島詩人 平田大一
南島詩人・平田大一:シマとの対話・第14話『源遠長流』

Profile
平田大一(ひらた・だいいち)
南島詩人・演出家・那覇市芸術監督
1968年11月7日沖縄県竹富町小浜(こはま)島生まれ。

進学先の東京で、アートユニット「I・N・U」に参加、自作の詩を朗読する舞台活動を開始。卒業後は生まれ島「小浜」に戻り、アーティストへの楽曲・詩の提供、実家の民宿を拠点に「キビ刈り援農塾」をスタートさせるなど、地域と文化に根ざした幅広い活動を行う。
2000年から与勝地域の子供達による現代版組踊『肝高の阿麻和利』の演出を手がける。
2005年3月に勝連町・きむたかホール館長を卒業、4月11日に有限責任中間法人TAO Factoryを立ち上げ、代表理事に就任。同年、那覇市芸術監督に就任。
うるま市、浦添市、八重山、金武町、那覇市、5つの地域の子供たちのための舞台を手がけるほか、毎年、新作舞台を精力的に制作。沖縄県内はもとより、県外、国外にも支持者を増やしている。
代表作に現代版組踊『肝高の阿麻和利』、現代版組踊『大航海レキオス』など多数。著書は詩集『南島詩人』、『歩く詩人』(冨多喜創)。

・平田大一ブログ『シマとの対話』:
http://hiratadaiichi.ti-da.net/


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Posted by ryuQ編集室 at 2008年02月06日   09:00
Comments( 0 ) 南島詩人・平田大一『シマとの対話』
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