2008年01月07日
年の初めの沖縄文化とは

もういくつ寝なくても、正月だ。
トゥシヌユールー(年の夜・大晦日)と一日しか違わないのに、空気が新しくなるような感覚は、いつの世になろうとも、そんなに変わらないものかもしれない。不思議だな。新暦から旧暦に移行して百年以上たった日本の、それでも旧暦の感覚が日常でもある沖縄でも、元旦は元旦らしい。2008年、まず最初の正月である。みなさま、あけまして、おめでとうございます。今年もまた沖縄県産本を作りつつ、紹介していきますので、お付き合いのほど、よろしくお願いします。
しかし話は2007年の年末に戻る。あるラジオ番組で、沖縄県産本の新刊を紹介しないといけなくなった。ワタクシが勤めているボーダーインクは残念ながらここ数ヶ月新刊がない。さてどうしたものかと書店の沖縄・郷土本のコーナーを見渡してみれば……ちょこんと小さなかわいい本の一群が目に付いた。B6判の、ページ数でいうと100頁前後の、リトル・ブック・シリーズ。あわただしい年末にほっとひといきつけそうな雰囲気。それが、沖縄文化社の本である。

創立が1985年、というから、そろそろ四半世紀に近づく、県内版元では中堅どころの出版社で、「沖縄の歴史や文化を紹介した初心者向けの図書を刊行しています」と、自社のサイトで自己紹介しているように、郷土の文化を学ぶ子どもたちが手に取りやすいような、見た目も内容もやさしい仕上げとなっているのが、沖縄文化社の本の特徴。沖縄ブームやら沖縄移住やら、沖縄出版界に吹く風に巻き込まれることなく、やふぁやふぁと地域に根ざした内容の本を刊行し続けている。(ちなみにこの1980年代は、他にも「ニライ社」や「沖縄出版」など出版社が相次いで創立していて、沖縄県産本の内容が、政治・戦争・歴史・自然といったところから、生活文化へと広がりを見せ始めた頃である)。
シリーズ名はないが、『沖縄昔ばなしの世界』(石川きよこ著)が1991年初版刊行で、今も版を重ねているのをはじめとして、『沖縄のわらべうた』『沖縄の祭りと行事』「やさしくまとめた沖縄の歴史』『ふるさと沖縄の民具』『やさしくまとめた沖縄の古典』『沖縄歴史人名辞典』などなど、書名を並べるとわかる、これぞ郷土の出版社というラインアップ。「初心者向け」ということで、子ども向けかと思いきや、実は大人が手にとってこそ、ほぉと頷く内容の作りになっている。奇をてらわず、正攻法でまとめられた沖縄文化の基礎教養講座のテキストとして最適にちがいない。子どものために買う振りをして、こそっと全部読んでしまいたい。
最新作は『沖縄学習まんが 組踊がわかる本II』(監修/大城立裕 漫画/漢那留美子)。2005年に刊行した組踊の祖・玉城朝薫の五番をまんがでダイジェストして紹介しているのに続く組踊もの第2弾だ。組踊という取っつきにくい沖縄の古典文化を、これまたやさしく紹介している。
そう「やさしく」というのが、キーワードなのだな。とにかく編集している沖縄文化社社長・徳元さんが、見るからにやさしげなほんわかした風貌なのである。会って話しをすると、なんというか、確実に和む。僕はラジオで紹介する時に思わず「沖縄県産本界の癒し系」と名付けてしまいました。ここ数年は「年に一冊」という刊行ペースも、この世知がない沖縄にあって、穏やかものではないか。我が身を反省するばかりである。

『組踊がわかる本㈼』を紹介するに当たり、手に取って、いろいろ眺めていたら、ふと気が付いたことがある。その小さな本の、小さな背表紙の下に、ちょこんと「P」とアルファベットが付いているのだ。P? 何の略だろうか……。はっと思いついて、シリーズ一番最初の『沖縄昔ばなしの世界』の背表紙を見るとあった。「A」。ははーん。本の後ろの頁にあるこれまでの刊行リストを数えると、B6判の本の数とアルファベットの順序は全部一致した。順番に背番号ならぬアルファベットで並べているんだ! ということは、今後、X,Y,Zに至るまで続いていくに違いない。全26巻で第一期完結するという、実は壮大な計画に基づいたリトル・ブック・シリーズだったんだ。
癒し系編集長に直接聞けば実のところがわかるだろうが、敢えて聞かないでいて、新年早々、妄想にふけるのであった。
「明日の沖縄を拓くための第一歩は、
自らの生まれ育った地域を正しく知ることであり、
このことが世界の国々を理解するうえでも不可欠となってきます。
これからも“ふるさと沖縄に学ぶ”という姿勢を忘れず、
地域に根ざした出版活動をめざします。」
(沖縄文化社のサイトより)
●新城和博の『ryuQ100冊』バックナンバー:
http://ryuq100.ti-da.net/c73391.html

プロフィール:新城和博(しんじょうかずひろ)
沖縄県産本編集者。1963年生まれ、那覇出身。編集者として沖縄の出版社ボーダーインクに勤務しつつ、沖縄関係のコラムをもろもろ執筆。著者に「うっちん党宣言」「道ゆらり」(ボーダーインク刊)など。
ボーダーインクHP:http://www.borderink.com/
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