2007年11月05日
「飛び出る沖縄県産本 」(ryuQ100冊11月号)

そういえば、今更だが、ワタクシ「沖縄県産本」とはそもそも一体なんぞや、ということを話していましたでしょうか。どれどれと、この連載の最初の方から見てみましょう(今年の4月から始まっているのだ)……説明してないですね。これ、大切なことなんです。
そもそもこの「沖縄県産本」という言葉は、我々が提唱した造語だ。我々とは「沖縄県産本ネットワーク」である。県内の版元が集まった任意の団体だ。 沖縄に関する本はたくさん出ているが、地元の出版社の本をアピールするために、敢えて「メイド・イン・ウチナー」にこだわったのが「沖縄県産本」というネーミング。
定義は簡単で「沖縄県内にある出版社が出版した本」。内容も著者も沖縄でも、出版社が県外だったら「県産本」ではないというわけ。どう、ココロ狭い感じですね。
でもこんなにたくさんの沖縄に関する本が出ていて、もう10年以上も職業的危機感を覚えている我々としては、生き残りをかけて必死にアピールしているのである。これはほんとである。「いつまでもあると思うな県産本」(かつてボツになったキャッチフレーズだ)。
その「沖縄県産本」が年に一度大集合するのが、毎年「リウボウブックセンター リブロ」で9月末から10月中旬にかけて行われる「沖縄県産本フェア」(主催が県産本ネットワーク)である。第9回目の今年は初日が、例の「教科書検定意見撤回を求める県民大会」と重なったりして、いろいろ大変だったのだが、まぁ何とか無事に終わった。
各出版社の、だいたい今書店に並んでいる既刊本、新刊はもちろんのこと、日頃は書店に売られてないものまで、ずらっと揃えているので、毎年この期間を楽しみにしている読者の方もいる。ただで配っている出品目録を見れば、今現在の県産本のあり方も分かる。
そして楽しみにしているのは読者だけではなくて、実は僕たちもそうなのだ。この時とばかりに、他から出している県産本をまとめて買うのである。古書店の中には「仕入れ」しているところまである。掘り出し物はいつもあるのだ。
今年も結構チェックして初日でたくさん買った。沖縄県地域史協議会、つまり各市町村史を作っているところの集まりが、今年はきっちり参加してくれたのだが、そもそもこうした市町村史は書店ではほとんど売られていないものばかりなので、まずはそこからいくつか選んでみた。

その中から今回お勧めしたかったのが、沖縄県教育委員会の「沖縄県史 図説編 県土のすがた」。沖縄全土を、地理的立場から図説で解説した本なのだが、実はこれ3Dなのである。そう航空写真や地図が立体的に浮かび上がってくるのだ。専用の緑と赤のめがね(右が青、左が赤のセロファンがついた例のヤツ)が付いていて、それを装着して、アナグリフ(立体)画像を見ると、国頭が、本部半島が、南部が、宮古島が、八重山が、まぁとにかく周辺離島もふくめて、ページをめくればどんどん飛び出てくるのだ。地形、地質、土壌、水脈などのわかりやすく解説があるので、まさに手に取れるようなリアルな感じで島の地形が迫ってくる。空から見た珊瑚や海底の3Dもある。
最初「3Dねぇ。子どもだましか」と思っていたが、いやー全然リアルに飛び出てくるので、面白くなってしまった。また現在の姿だけではなく、六十年前の今は亡き沖縄の姿を撮った航空写真(米軍撮影。攻撃用に沖縄のほぼ全域の極めて精密な航空写真を撮っているのだ)と今の姿を待対比する立体画像もあったりする。

「辺土岳の塔カルスト」「古宇利島の石灰岩段丘」「山里の円錐カルスト」「伊是名島のチャート円錐丘」「伊良部島の海崖」「石垣島平久保崎の円柱丘」「与那国島ティンダバナ」「北大東島の幕」「硫黄鳥島」など、ちらっと取り急ぎ目次から拾っただけでも、地形マニアならピンとくるでしょう。
いやそういう知識がなくても、文字通り沖縄が飛び出てくるのを見るだけで、楽しめる一冊だ。勉強にもなる。見過ぎると目がチカチカしてくるが。
県が作っただけあってたっぷりと予算も人員も手間暇もかかっていそうなこの本もまた、日頃は沖縄県公文書館に行かないと手に入らない本なのである。もっと県民の目に触れて欲しいものだ。
これなんか沖縄県が作っているから、まさに「沖縄県産本」なんだろうな。(文・新城和博)
●新城和博の『ryuQ100冊』バックナンバー:
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プロフィール:新城和博(しんじょうかずひろ)
沖縄県産本編集者。1963年生まれ、那覇出身。編集者として沖縄の出版社ボーダーインクに勤務しつつ、沖縄関係のコラムをもろもろ執筆。著者に「うっちん党宣言」「道ゆらり」(ボーダーインク刊)など。
ボーダーインクHP:http://www.borderink.com/
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