沖縄から世界へ羽ばたく注目のプリマドンナ 長崎真湖
アメリカで開かれた国際バレエコンクール「ユース・アメリカ・グランプリ2007」シニア女子部門で1位を獲得し、世界から注目される沖縄県宜野湾市出身のバレリーナー長崎真湖さん(19歳)。
アメリカ、スイスなど海外での本格的なバレエ留学を経験し、すでにモンゴル国立オペラハウスバレエ団ではプロのプリマとしても舞台で活躍。
さらなる飛躍が期待される中、9月からアメリカ・ワシントンD.Cに拠点を置く「ワシントンバレエ団」に入団しました。
世界の頂点をめざしての渡米直前、沖縄から世界へ羽ばたく注目のプリマドンナ長崎真湖さんにインタビューしました。
——バレエを始めたのは何歳からですか?
長崎真湖:母がバレエ教室をやっていたことや3歳年上の姉(長崎遙)もバレエを習っていたので
3歳の頃にはもうバレエをやっていました。でもバレエを始めようと思ったのでもなく、やりなさいといわれたのでもなくそれはまったく自然に「やっていた」というスタートでした。
——きっかけとなるバレエ環境があったのですね
長崎真湖:でも小学生の頃はバレエが大嫌いで、仮病を使ってはレッスンを休みがちで、バレエから離れたいとも思っていました。
——ずっとバレエが大好きで続けている方かと思っていましたが、悩みや苦しみもいろいろあったのですね
長崎真湖:ズル休みをしてバレエをやめたいと真剣に悩んでいた頃、母が「コンクールに出て1位になったらやめていい」と言ったんです。
——バレエの師であるお母さんからのこの言葉をどう受け止めたのですか?
長崎真湖:「やめられるならー」と、コンクールで1位になろうと毎日練習に励みました。
すると不思議なことに、嫌いで休みたいと思っていたバレエがどういうわけか面白いように感じるようになって自信がついてきている自分に気が付きました。
——結果はどうだったんですか?
長崎真湖:1位でした!
——それは素晴らしい結果でしたね。その1位が大きなターニングポイントになったのですね?
長崎真湖:コンクールの前日初めて母にプライベートとしてのレッスンをお願いしました。
1位になったらやめていいと言われていたけれど、1位になったら私自身がバレエをやめられなくなりました(笑)。
あんなに嫌いでやめたかったはずのバレエだったのに、眠るのもおしいぐらいバレエが楽しくて、練習に夢中になっている自分になっていたんです。
(小学6年生で受けたコンクールは
世界へはばたくバレリーナ真湖さん誕生となる
大きな転換期となったのでした)
——長崎佐世さんは、母であり師として、葛藤する我が子をどんな風に見てきたのでしょう?
長崎佐世:嫌いだと言うのに、親としてもバレエをさせておいていいのか考えたこともありました。
実は私自身も若い頃バレエが嫌いな時期がありまして、バレエ以外の民族舞踊や、ダンスへ転向も考えたこともあったのです。
しかし、30代の時に事故に遭い、身体が一時思うように動かなくなったことがあり、この事故がきっかけであらためてバレエの素晴らしさを知ることになりました。
現在、バレエ教室主宰も34年目になりました。
バレエというのは情操教育でもあり、身体と精神を美しく健康に成長させますし、マナーも学ぶことができます。人としての成長に大きく繋がるのです。
バレエで舞台に立つことがなくてもいい。時々でもいいからレッスンを通して、人としての身体や心の健康的な成長を願ってきました。
——海外でのバレエ留学やプロとしてモンゴルではすでにプリマとして活躍され、そして今年、アメリカでの国際コンクールで1位という素晴らしい受賞となりました。
バレエが嫌いだったという子供時代からターニングポイントを経て見事に世界へ向かっていますね。
受賞の瞬間、真湖さんどんなお気持ちでしたか?
長崎真湖:震えて失神しそうでした…。自分が認めてもらえたと、とても嬉しかったです。そして、もっともっと勉強して自分を磨こうと身が引き締まりました。
——師として(また母として)受賞をどのように?
長崎佐世:今年の1月からに急成長めざましく、表現力が伸びました。
観客に訴えられる踊りができるようになったことが大きいと思います。国際コンクールでは技術の差はほとんどありません。皆がトップレベルです。
その中で自分自信をどう表現して見せるかが大きい審査だと思います。
小さい頃からバレエが嫌いだと言っていたけれど、人というのはお腹にいる頃からDNAで伝わっているものがあるんです。
自然に見て学んで自分の力を自分で伸ばしていけると信じていました。
三つ子の魂100までもという例え言葉があるように、知らず知らずと自分の力で育っていくものがあると。
——さて真湖さんは、また新しい挑戦が始まりますね。
名門のボストンバレエ団やアメリカンバレエシアターという難関にも合格していたのですが、真湖さんが選んだ新しい道はワシントンバレエ団。
決めたポイントは?
長崎真湖:これまでやっていないことにたくさん挑戦できること、自分の可能性に広くチャレンジしたいと思ったんです。精神面も技術面も自分を高めていきたいです。1つ1つの挑戦をクリアしながらなんでも学んきたいと思います。
——これまでにも海外留学経験も長いので英語など言葉の心配などはないのでしょうね?
長崎真湖:はい。大丈夫です。
長崎佐世:実は、中学の頃に真湖はいじめにあい、一般の学校をやめ、沖縄県内にあるアメリカンスクールに通うようになりました。
姉の遙もしばらくしてから真湖と一緒にアメリカンスクールに通うようになり、二人とも自然に学校生活で英語での会話ができるようになりました。
結果として海外での言葉の心配はしていません。
——「いじめ」にあったことも、プラスへの転換となる大きなターニングポイントとして新しい道を切り開かれ、そして大きく成長されたのですね。
これからの希望をそれぞれお聞かせください。
長崎真湖:ワシントンでは、はじめて挑戦する新しいたくさんの勉強を吸収して、自分のものにできるよう、技術はもちろん精神面でも成長したいと思います。
自分の踊りはしっかり持ち、自分をよりしっかり確立したいと思います。
長崎遙(姉):現在 バレエの先生となり生徒たちの指導もしていますが、ずっとずっと先の将来、妹が現役のバレリーナーを退く時がきたら、姉妹で後進の指導が出来ればという夢をもっています。
長崎佐世:沖縄でのバレエ愛好者は案外多いと思っています。私のところには200人以上の生徒がいます。
そして沖縄からも国際コンクールで賞をとれるという結果は、沖縄でバレエを習う人達に大きな希望となりました。そして世界のバレエ団で活躍することは後輩達の大きな励みとなります。
世界レベルへ自分を高め、沖縄のバレエのレベル向上にも貢献していく気持ちをもって勉強を身につけてほしい。
母親としても支えが必要なことがあればサポートしますが、基本的にはほとんど口を出さない主義です。
また失敗もしていいと思います。
失敗があるからこそ成功があると思っていますので、いろんなハードルをクリアして成長して欲しいと願っています。
ターニングポイントをいつもプラスに羽ばたく長崎真湖さん。
世界のトップバレリーナーへ向けて、
たくさんの勉強をして素敵な
プリマとして輝いてください。期待しています。
※取材協力:
・有限会社ゆめ企画
・N・S バレエアカデミー新都心校
(有限会社 沖縄インターナショナルバレエコーポレーション)
住所:沖縄県那覇市安謝2丁目20-5
TEL:098-941-0360
FAX:098-941-0375
http://www.nagasakisayo.com/
(文:吉澤直美、編集+撮影:KUWA)
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