大工哲弘のガムラン‐ユンタ【後編】

バリ島と八重山の共通点は音階まで同じでしたが、歌うにはキーが高いままセッションに挑まれたというCD『ガムラン‐ユンタ』を録音された大工哲弘さん。国やジャンルを越えたセッションとは「相当なエネルギーと緊張感、そして度胸を持ち合わせていないと簡単に飲み込まれてしまう」など、インタビュー【前編】に引き続きさらに踏み込んだ深いお話をたっぷりと語って頂きました。
——音楽の面での共通点では、バリと沖縄・八重山は音階がまったく一緒なんだそうですね!

だから、ガムランなどの演奏を聴いていて「あいっ、これは沖縄音楽じゃないの!」って思うこともありましたね(笑)。
バリ滞在中はほとんど毎日のようにガムランなどの伝統芸能公演を観に通って演奏をよく聴き込んで、そして最終日になって一発で録音することになります。
——そしてその録音では、八重山民謡とバリのガムランとは“リズム”で合わせていったとの事ですね?

——しかも今回は、なんとマイク2本だけで一発撮りされたとのことですね!
大工哲弘:ガムランの曲もそうですが八重山の曲も数えきれない程あるので、次回またあれば今度はマルチトラックを持ち込んでレコーディングしたいと思いますね。
——逆に一発撮りということで緊張感まで含めたその場の雰囲気が丸ごと録れているような。
大工哲弘:この写真(下記写真参照)のように、対面で録りましたね。スタジオなどではそういう録音の仕方はしないのですが、今回の録音ではバリの風も一緒に撮りたいというのもあったからね。

本当はできれば田園風景の中で録りたいと思っていたんですよ。ところが虫除けの旗の音や風車の音がうるさすぎてね。バリのヒンズー教は、虫であっても殺生してはならないという教えがあって、殺虫剤を使わないオーガニックな工夫をしているんですよね。
——完成されたCDの音を聴かせて頂くと、不思議なハーモニーですね。心地よい青銅の金属音と柔らかい三線と歌の競演ってなかなか無いですよね。

かつて1993年にCD『ゆんたとぅじらば』を録った時にはサックスプレイヤーの梅津和時とセッションしたんですが、初めてサックスの生音を聴いた時に「殺されるのでは」と思った程、強烈な音でしたね。でも、あのサックスの音に負けたくないと、それからジョギングを始めたんですよ。体力をつけてからあのアルバムを録ったというエピソードもあります。

しかも、ガムランのキーがGなので、歌うには高すぎる音なんですよ。ガムランのキーはチューニング不可能で高いキーのまま、というのはかなりキツイ。かといって1オクターブ下げるのはしたくないので、高いままガムランの音と真っ向からぶつかり合っていく訳です。

——そのようなエピソードのように音楽的に共演したというだけでなく、何かを越えるための出来事でもあったのですね。
古くは、津軽三味線の高橋竹山さんとのセッションもされたそうですが、あの当時はジャンルの違う音楽と八重山民謡とのコラボレーションって大変珍しかったのではないでしょうか?
大工哲弘:35年くらい前になりますが、まだ高橋竹山先生がご健在の頃、那覇と石垣で共演しましたし、あと、山下洋輔トリオとかとも沖縄でやった事があるのですが、当時そのようなセッションというのはとても珍しかったですね。
あの時代にコラボレーションするという意識がそんなに無かったのは、当時は沖縄のフォークもロックも民謡もどのジャンルも元気だったからわざわざジャンルを越えてやる必要もなかったのかもしれないですしね。
それに、ジャンルの違う音楽とのセッションは失敗するかもしれないリスクもあるから、失敗を恐れてあまり手を出す人が少なかったのもあると思うんです。
——青年の頃からジャンルの違う音楽とのセッションも積み重ねて来られましたが、還暦を過ぎてもなお挑戦され続けていることが凄いことだなと思います。
大工哲弘:とても緊張感があるけど、でもそれがまた楽しみでもあるんですよ。
今回バリと沖縄は同じ5音音階だったからやりやすかったとかではなくてね。
「音楽に国境はない」という言葉があるけど、僕は「音楽に国境はある」と思うんです。そこを越境するのがお互いの演奏者同士だと思うんですよ。

それには、緊張感と、度胸を持ち合わせていないと完全にうち消されてしまいますからね。
ですのでそういったものをいつまでも持ち続けたいと思いますね。
——ぜひ、70歳、80歳になっても、世界中のミュージシャンとの音楽セッション(交流)を聴かせてください。
大工哲弘:そうですね(笑)。目指すはブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ(キューバでベテランの長老ミュージシャンたち)のようにね。

大工哲弘:ガムランで終わるのではなく、歌はどこまでも続くのだろう…とまた我に返ってもう一回ここから再出発していく、というようなメッセージが込められてもいるんですよ。
——最後の最後に、ぜひ読者のみなさんにメッセージを。

楽園だからといってもね、それぞれの島々には元々の歴史と文化や風土があるのですから。郷に従って頂いて、地域にとけこんでほしいですね。そしてその島(地域)の芸能も観て、その精神も学んでほしいですね。その地域ごと(島)に神が宿っている訳ですから、その聖地(精神)を荒らさないでほしいと思いますね。
(→スペシャルインタビュー【前編を読む】)
(取材: 桑村ヒロシ)
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