神谷千尋インタビュー【前編】

神谷千尋。3年ぶりの新作ミニ・アルバム『チェーリング』発売直前インタビュー

民謡を基礎にしながらもポップな楽曲にこぶしの利いた伸びやかな声が、耳にとても心地良いラインナップ。新境地を開いた津堅島の歌姫に、前後編の2話にわたってお送りする“直撃ロング・インタビュー”です!
大人になったので自分の経験や心を吐き出してみた。
——久しぶりのオリジナル・アルバムですね。3年間どんな気持ちで、どんな事をされていましたか?
神谷千尋:新しいものを早く発信したいという気持ちでいっぱいだったので、「やっと発信できるな」という想いですね。この3年間は曲作りをしたり、歌詞を書き溜めていたりしてきました。
——千尋さんと言えば民謡がベースにあるとは思うんですけど、このアルバム『チェーリング』のために何かされていたことはありますか?

自分がの目標...ではないんですが、気にしているのはビョーク。個性がしっかりとあって、その世界観を広げている感じが素敵で尊敬しています。
——沖縄のビョーク!?
神谷千尋:なれたら素敵ですね(笑)。
——では、いろんな音楽を聴くなどして、今回の新しい神谷千尋ワールドが生まれたと!
その『チェーリング』ですが、“こんな新しいことをやってみた”というような具体的な試みなどはありますか?
神谷千尋:みんなからは、沖縄民謡の延長で進んでいくんじゃないかというイメージがあったと思うんですが、それは自分にはこだわりはなくて、ただ原点が沖縄民謡ということ。基本的に自分の性格が一箇所のところに留まるのが苦手なタイプなんで、常に新しいことをしていないと落ち着かないんです。
だから今回はレゲエ色が強かったり、いろんな楽器をふんだんに使っていたりして、面白いものが出来上がったと思います。

——歌詞について印象的なフレーズが目につきますね。それは、必ずしも恋愛に特定しないですけど、例えば人を想う歌詞などが多く見られます。意識して書いたんですか?
神谷千尋:そうですね、年頃になってきたのでそろそろいいかな、と(笑)。大人の階段も上りつつ。自分も含めて誰もが経験していることとか、恋人や家族に対する想いに共感できるものを作りたいという気持ちになってきたんです。
——これまでもたくさん書き溜めていたんですか?
神谷千尋:書き溜めてはいたんですけど、実はテーマだけ残してギリギリで決まらないとか、レコーディングの直前で言葉を変えたのもありますよ。
——歌詞を読ませていただくと、意外に歌詞では使われないようなフレーズが随所にありますよね。ビョークがどう、とかではなくって歌詞だけど詩的な表現が随所にあったり。
神谷千尋:歌詞が先にあったものもありますけど、曲があって歌詞をつけるときに歌詞が変わっていったり、またアレンジが出来上がってもそのアレンジの雰囲気で詞が変わったのもあるので、まったく違うものになってたりするのもあるんです。
——今回は7曲ということで、曲の前半に比べると後半では三線が使われたりして民謡っぽい雰囲気もありますね。これらの作品については。

愛しくて恋しくて愛してる人を奪われた悲しみ。ひいおばぁちゃんもおばぁちゃんもそうだったんですけど、戦争で旦那さんを亡くして何十年も忘れずに苦労しながら思い続けたことを、自分は感じてきたのでこういう曲を一つ作ってみようかな、と。
——『カナーサヨー』では作曲もされているんですね。三線を弾いてできた曲ですか?
神谷千尋:これは“カナーサヨー”という言葉とメロディが同時に出てきたんです。
——戦争は何十年も前のことだけど、そうは思えないまるで最近体験したような気持ちが書かれているような気がしたんですが…。
神谷千尋:現代でも、9.11などで愛する人を亡くした方がいらっしゃいますよね。そういう事も含めて作ったんです。だからたぶんそのようにも感じるのかなと思います。
——比較的、明るいコードの沖縄民謡の楽曲が多い中で、この曲は悲哀をとてもシンプルに表現しているところが、20代の沖縄のアーティストにしか書けない曲だな、という印象を持ちました。
そして『いつかの』では今年亡くなったおばぁちゃんのことについて書かれたということですが…。
神谷千尋:幼稚園まで津賢島に住んでいてそのあと本島に引っ越してしまったんですけど、島では民宿をやっているので週末ごとにしょっちゅう島に帰っていたんですね。
だからおばぁちゃんといることが多かったんです。今年、78歳で亡くなったんですけど、音楽の道に進むことに背中を押してくれたので、何か恩返しができないかな、と思っておばぁちゃんのために作った曲です。
——おばぁちゃんは民謡はされていなかったんですか?
神谷千尋:していなかったんです。おじぃ、おばぁはしていなかったんです。叔父さん(神谷幸一)もひぃおじぃちゃんから習ったんです。あの頃は、「三線を弾いたらダメ」といわれる時代だったそうです。
——温かく、想いがこもっている感じの歌ですね。
神谷千尋:手紙を書くみたいに書いた歌詞ですが、本当はここだけに感情は収まりきれない。まだ満足はしてないんですけど、歌ったら伝わるかなと想って勝手ながらおばぁのためだけに歌っています。
不景気でも♪金がなくても♪楽しんでいこう♪
——話は変わりますが、先日、北谷で行われたレコ発ライブでは、懐かしいHISの『日本の人』(※)を歌っていましたよね。
(※HIS=故・忌野清志郎、細野晴臣、演歌歌手の坂本冬美をボーカルにした企画物ユニット。『日本の人』はアルバムタイトルにもなっている1曲)
神谷千尋:あれはプロデューサーのDonさんのアイデアではあるんですけど、もともと、忌野清志郎さんも細野晴臣さんも大好きで、ほのぼのして脱力できる、だけど内容が深い歌なんですが…。今回の『チェーリング』は(楽曲に)統一感はないんですけど、“日本を明るく、世界を明るく”というテーマがあって、日々の疲れとか不景気とかを音楽で少しでも和らげて皆で明るく笑っていこうよ! なんくるないさーでいこうよ! というのがあるんですね。だから『日本の人』から『浮世唄』に繋がるんです。

——そこで『浮世唄』なんですね。これはかなり他とは違うタイプの楽曲ですね。
神谷千尋:これは言葉遊びで楽しかったですよ。
——民謡だけどレゲエ調。新しい平成の新民謡がまた一つできたと思うのですが。
神谷千尋:水タンクや鍋を叩いたり、人間の原点みたいな大昔に人が音を出したような身の回りにある楽器じゃないものを使ってレコーディングして、とにかくこの曲は“遊んで遊んで唄で楽しんで、辛いこと忘れちゃおうよ”という曲です。言葉も頑張りすぎない、きっちりしない、てーげーな感じです。
——ライブは鍋持参で!?
神谷千尋:そうですね。おばぁとか、シンメーナーベーとか叩いてもらいたいですね(笑)。
まさか千尋がこんなの書くなんて誰も思ってないと思うし。
——“ごー愚痴は ー愚痴 おぼれ酒”って凄いですよね。書きあげてみてどうでしたか?

(一同大爆笑!)
——お父さん(神谷幸祐)も、レコーディングにもライブにもギターで参加(『いつかの』)されていますが、これらの曲について何かおっしゃっていましたか?
神谷千尋:民謡の唄者には“自分の音の世界はコレ”っていうのがあるみたいです。「民謡は弾けるけどポップスは、分からない」って言うんですよ。だから民謡に関しては厳しく言えるんですけど、ポップスに関しては千尋のオリジナルということで、何も言わないですね。(→つづく)
「何気なく千尋のために書いてみない?」と言って集合したという楽曲の作家陣を紹介すると、まず神谷千尋本人の全詞と作曲は『ひいらぎ』『カナーサヨー』の2曲。そして1曲目に聞くことができる壮大な世界観を展開してくれた石川清貴さんの『恋の人』、ホイフェスタのコーヘーさんの『ユメノマタユメ』。All Japana Goithの濱SHOWさんからは『星のリズム』、元ザ・コブラツイスターズの川畑アキラさん作曲の『いつかの』。そしてベーシストやエンジニアとして実力派の通称Donさんこと久保田真弘さんが『浮世唄』とアルバム・トータルのプロデュースを行い、このような豪華なメンバーでアルバム『チェーリング』が誕生した。
(※インタビュー【後半】を読む→)
(文: YANTY、写真+編集: KUWA、取材協力: スパイスレコーズ)
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