上原キコウ『沖縄トラッド』インタビュー[第1話]
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登川誠仁、大城美佐子、知名定男、大工哲弘、名護良一、金城恵子、と昔歌を歌える大御所唄者たちの歌を新録した。どの歌を歌うのかを選曲したのはご本人たち自らのもので、曲解説もご本人たち自身によるもの。今までありそうで無かった新しいスタイルのオムニバスが登場した。
今回、このアルバム『沖縄トラッド』を企画プロデュースした上原キコウ氏に直撃インタビュー。
「だからこそ、伝統的な音楽のほうを残したかった」
——通常オムニバスアルバムといえば、過去にリリースされた作品から集めたコンピレーション盤を想像するところ、このアルバムはなんとすべて新録というこれまでに実現することの無かったスタイルで、意欲的な作品を生み出しましたね。
上原キコウ:確かにオムニバスを新録するという手法はほとんど無いですからね。
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今作のように昔ながらの音楽を聴くと意外な再発見があったりするんですね。それは沖縄音楽に限らず、世界各地のプリミティブな民族音楽にもあったりもするんですが、僕の場合はCDを制作する仕事をしているという事と、元々沖縄の人間なので沖縄民謡を掘り起こす事をしていったら、そういう事に気が付くようになりました。
そこで、今の感性で沖縄のトラッドミュージック(伝統音楽)を音源化してみようと、今回新しく録音したという経緯があるんです。
——また、唄と三線のみというシンプルで基本的な構成がまた見事なほどですね。
上原キコウ:最近の沖縄民謡にはシンセサイザーやギターやマンドリンなども入っていたりしますが、それ自体は進化していっていると捉えればそれもありだとは思います。
ただ、先人達がやろうとしていた事を理解する為にも、オールドスクールが必要なんです。そこでこの『沖縄トラッド』を制作しました。
また今回は、“民謡”という言葉を使わずに“トラッド”という言葉を使っています。民謡というのはその土地の“民”の“謡”で大衆音楽なんですよね。その土地の大衆に受け入れられたものが民謡であって、現在で言えば例えばBEGINもそうだと思います。
だからこそ、伝統的な音楽(トラッド)のほうを残したかったというのがありますね。
——そこで今回、登川誠仁(敬称略以下同)、大城美佐子、知名定男、大工哲弘、名護良一、金城恵子、という顔ぶれで構成されたとのこと。なかでも他のコンピレーションでは普段なかなかお見かけできない方々、たとえば名護良一さんや金城恵子さんも入っているところがまた渋いですね。
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上原キコウ:沖縄民謡通にはたまらないと思いますよ。たとえば、名護良一さんの唄は、嘉手苅林昌さんの唄に通じるものがありますよね。彼の唄の情感とか好きですね。
そして金城恵子さんですが、彼女のお店で実際に唄を聴かせてもらった時、キーが低く感じたんです。そこで今回の作品では、キーを2つ・3つほど上げて頂きました。
ご本人は上手く歌いたいという気持ちのほうが強いんで、やっぱり高音のところでかすれたりするのを嫌うんですね。でもプロデューサーの立場でいうと、リスナーサイドでありたいと思うんです。
上手く歌える唄が欲しいのではなくて、“いい音楽”が欲しい。
そんなふうに、民謡酒場やイベントを巡り廻っていました。
——なるほど、そうだったのですね。
上原キコウ:そして、登川誠仁さんの場合は昔唄をよく存じていらっしゃる。これは貴重なことです。
今時代が新しくなるにつれて、唄のフレーズが簡略化されてきているように思えるんですね。その理由ははっきりとは分かりませんが工工四(譜面)にその要因があると言う人もいますね。
音楽を記号で記すことには限界があり、工工四など譜面(平均律で割り当てられた譜)は“大雑把なメモ”程度に捉えるべきだと思います。
というのは、元々は師匠が弟子に口伝で教えていたものなんですよね。そこには微妙な音程のフレーズも本来は音としてあるはずなんですね。それがどんどん失われていっている気がしていますね。
——「西洋音階のドレミファソラシドは平均的に割った音」と言われますものね。
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現在、我々が耳にするドレミファソラシドの平均律は、18世紀以降の西洋音楽の為にある音律なんですよ。
アジアとヨーロッパの根本の違いは、アジアは旋律のほうに趣をもって感情を表現しています。一方、ヨーロッパのほうは、響き、コードなんですね。その為にどうしても平均律を使わざるをえないのが西洋音楽。平均的に音を出そうとするので綺麗ではないんですよね。
(同じ様にしようとした音律なので、決して綺麗では無いんですよ)
——ここに収録された沖縄民謡の名人の方々は、そういった純正(本来)の唄を歌っていらっしゃると。
そして、選曲と歌詞もご本人にお任せした訳ですよね?
上原キコウ:そうですね。こちらからは「できるだけ古い唄を」という点はリクエストさせて頂きました。
それから今回は、歌詞はあえて載せていません。その理由としては、そこに歌われている歌詞は、時代的には今と違いすぎているんです。また、歌う人によってその歌の解釈が変わってくるので、その人の解説に留めることにしました。そういう経緯で、歌詞ではなくご本人達の曲解説を載せたのです。
——音響的に工夫された面などは。
上原キコウ:ポストロック世代の音響派の人たちも聴けるように、現代の感性で音のアンサンブルを作っています。唄者のダイナミクスをできるだけ活かして録音しました。
アルバム1枚がまるで組曲のような『沖縄トラッド』
——また、こんなところを聴いてほしい、というようなポイントはありますか?
上原キコウ:このアルバムの中でも、おひとりずつオススメ曲がありますよ。
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知名定男さん曰く「技術は愛だ」と、まさしく“愛を感じさせる技術”を感じた唄でした。この歌を録り終わった時に、アルバムの冒頭1曲目はこの曲だと決めていました。
M-3. ナークニー(大城美佐子)
彼女のナークニーは、言葉で多くを語るよりもまず聴いてみてください。
M-6. カイサレー(名護良一)
嘉手苅林昌さんの流れを組む名護良一さんのこの唄。情が入ってグッとくる唄ですね。
M-7. ヤッチャー小(登川誠仁)
こういうクールなヤッチャー小はほかではあまりありません。現在の登川誠仁さんのヤッチャー小です。いぶし銀の貫禄を感じさせてくれます。ぜひほかのヤッチャー小と聴き比べてください。
M-13. 女郎花(金城恵子)
この曲で金城恵子さんに普段よりもキーを上げて歌って頂きました。つらそうな歌声が歌の世界観にもマッチして、より哀しく表現出来たと思います。
M-14. 小浜節(大工哲弘)
やっぱり大工哲弘さんの小浜節はなんともたまりませんね。この唄が流れたとたん、ゆったりとした時間が感じられます。
そのように1曲1曲をみても深いのですが、また“このアルバム1枚で組曲”だと思って作っていますので、そこのところも感じて頂きながらぜひ聴いてみてください。
また今回の2枚組アルバム『沖縄トラッド』の目玉のひとつ、ボーナスCDでは次世代の唄者まで紹介しているところも魅力的なポイントです。
さらには、ここに収録された名人たちの生の唄が聴けるライブツアーをこれから開始してゆくとのことですよ!
(つづく/インタビュー[後半]はコチラ→)
※リンク:『沖縄トラッド』公式HPはこちら→
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(取材: 桑村ヒロシ、取材協力: PMエージェンシー)
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