伊江島へ歌碑巡り


ryuQでもお馴染み、島唄カフェいーやーぐゎーの店主・小浜司氏と行く第6回目の歌碑巡りツアーが伊江島で開催。参加人数、総勢60名!大型バスごと伊江島へ渡り、島の歌碑を7箇所も廻る旅となった。
歌碑を巡りながら小浜氏の琉歌解説を聞き、そして新垣浩先生(野村流古典音楽保存会師範)、新垣小百合さん、石川陽子さんといった古典・民謡のプロの生唄三線付き!という贅沢なツアーなのだ。

本部港からフェリーに乗り、島に向かおうと空を見上げると、天気はあいにくの曇り空のよう。しかし、島に渡る30分の間に、みるみるうちに日差しが照り始めた。そしてかの山、伊江島タッチューはあっという間に目前に迫り、ご一行様、伊江港へと到着。まずは歌碑巡りの前に、この島の歴史と芸能文化の背景を手短にご紹介。
〜伊江島の歴史〜
その昔伊江島は、本土に向かう中継地点にある島という地域的な特色から、沖縄本島にはない古い大和(本土)の芸能や離島ならでの踊りだという独特の伝統芸能が残っているという。薩摩(現在の鹿児島)から徐々に渡ってきたというよりも、一気に持ち帰ってきた、という印象が残るほどの“ヤマト風”。

また17世紀。琉球は薩摩から侵略され勢力が衰える。その頃、島ではサトウキビとサツマイモが栽培されていた。王朝が弱まっている頃、庶民はサトウキビから砂糖を作り、流行らせ独自の貿易で潤い始めた。すると王朝は専売制にしてしまう。それを知った薩摩は、今度は奄美大島をサトウキビの島にしてしまったという。
〜タッチューのふもとで歌碑巡りスタート〜
もう一つ、島の歴史を。伊江島では、“地割り制度”といって土地を皆で分け合うのだが、痩せた土地・肥えた土地を10年に一度、土地換えをしたそうだ。その時、砂を運ぶ際に労働歌として唄われたのが『砂持節』。 “ゼイサー”は士気を高めるための掛け声なのだとか。

「阿良の浜砂やヨ
持てば禁止(ちじ)られて
<ゼイサー ゼイサー ゼイサー>
たんで西泊 <ハイヨ>
持たちたぼり
<ゼイサー ゼイサー ゼイサー>」
(阿良の砂浜を持ち出そうとしたら禁じられた。
どうぞ西泊さん、砂の番人さん、砂を取らせて下さい、の意味。)

そしていち早く見張り役としてここには役人を置いたのだが、役人になるために読み書きなど学ぶ“会所(けーじょ)”という学屋が置かれ(のちほど登場する島村屋敷跡の隣)、ここで学んだ若者たちは、会所で学び番所に就職し、首里に奉公に行き戻って来て出世するという道が開かれていたそうだ。
また、この若者たちは本土にも連れていき、そこでヤマト芸能を持ち帰ってきた。本島ではこのようなヤマト芸能を披露する場所は無かったが、伊江島では披露する機会があったそうだ。
しかし戦争で一時中断。戦後に再びこの村踊りは復活し、1998年12月16日『伊江島の村踊(ムラウドゥイ)』は国の重要無形民俗文化財として指定され、現在もこの伝承・継続のために、子どもから大人まで村ぐるみでの稽古に余念がない。

『砂持節』の歌碑のすぐ前にある御願毛公園(ウグヮンモー公園)の一角にあるのは、『吉田』の歌碑。なんとも不思議な名前の歌のタイトルだが、これは徒然草の著者・吉田兼好を称えたものと言われている。人の名前をまんまタイトルに付けたという歌で、イントロは『秋の踊り』にも似ている。
今回すべての歌碑を廻ったわけではないのだが、他にもこのようなユニークな『様は』(さまわ)、『見れば』など、江戸や薩摩、吉野などといった大和の人や情景を盛り込んだ歌詞が伺え、そして特徴としてこれらの歌には全て踊りもセットでお披露目されるそうだ。
『様は』の歌碑から徒歩5分のところには、伊江島の島唄として有名な『ましゅんく節』の歌碑がある。

「ましゅんくと なびと
見くなびて 見れば
ましゅんくや うすや
なびや美ら 美らさ」
(マシュンクとナビーという二人の美女がいた。
「どちらがちゅらかーぎ(美人)か?」
ましゅんくは 可愛い、ナビーの方がちゅらかーぎだけど
くんじょう(根性)が悪い。)
そんな歌碑解説の後に、唄者、新垣小百合・石川陽子の二人の唄三線が鳴り響く。
バスに乗り、場所を移して、飛沫が跳ね上がる波をバックに、鉄砲百合が広がる伊江島リリーフィールドの公園前に立つのは『仲村渠(なかんだかり)節』。続いて読谷説・伊江島説他、様々な説があるという『特牛節』(こてぃ節 または、くてぃ節)の歌碑へ。こちらは“湧出”(ワジ)という湧き水があるという断崖絶壁の海岸を見下ろせる展望で、野村流古典音楽保存会師範である新垣浩先生の演奏でゆったりと古典に浸る。

さて沖縄三大悲歌劇の一つ『伊江島ハンドゥー小』の舞台になった島村屋敷跡。伊江村の観光公園の中にあり、広い庭にはハンドゥー小の石碑があり、真後ろにタッチューの山を見上げながら、切ない愛の『島情話』が鳴り響くのであった。

さて旅も終盤。いつもは備瀬の並木を抜けた海岸など本部側から対岸のタッチューを眺めるのだが、伊江島ではタッチューこと城山(ぐすくやま)を囲むようにして道中移動する。当然バスの窓から見上げる山の頂上は手に取れるような近さだ。最後は時間も押し、残された時間は20分のみ。タッチューの山頂には健脚者のみが登ることとなった。

沖縄本島にはみられない伊江島の本土風踊りは特異な存在と言われているため、各集落に残るヤマトの影響を受けた唄や村踊りや舞踊は豊年を感謝し毎年旧暦11月にお披露目が行われている。離島であるがゆえ、また沖縄の北部に位置するなど、船に乗れば中国や大和と行き来するのに便利な場所として、本島には残っていない“ちゃんぷるー文化”。機会があればぜひ島に渡り、伊江島の文化を堪能してみるのはいかがだろう。
(文+写真: YANTY藤原、編集: KUWA、琉歌解説: 小浜司)
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