フォトセラピー【池間島編】

昔懐かしい写真が人の心を癒すことができる瞬間について、池間島で行われた半世紀前の写真の展覧会『忘れがたき故郷、池間島』での来場者からの感動の声や、具体的なエピソードなどを交えてご紹介したいと思います。
お話は、池間島の老人福祉施設きゅ〜ぬふから舎代表・前泊博美さんに伺いました。
——とても意義のある写真展を開催されましたね。
前泊博美代表:はい、今回注目なのは、今から“約50年前の池間島に戻れる”ことが凄いんですね。
この写真を見て、その当時の方々が昔を甦させる。当時の“自分に戻る”ことができるんです。そしてそれが生きる力になって行くんですね。とても素晴らしいことなんですよ。
そして、そこに写っている人ばかりではなく、写ってはいない子や孫たちまでもが昔を思い起こすことができたんです。

たとえば、30年ぶりにグアムから帰郷できた女性は、自分の父親が写っていて凄く感動されていたんですね。
若い頃の父親の姿を知らないはずなんですが、写真によってその姿を見ることができたんです。それで、会期中に3回も通ってくれたんですよ。
最後に会場に来られた時は「あっ、父の声が聞こえる」と見渡すと、上映中のDVDから聞こえてきました。集落で宮古民謡を歌っている歌声を聴いて気づかれたんですね。
しかも「うちの父が体調が良くない頃の声だ。自分が子供の頃はもっと声に張りがあった」って、凄く感激されていました。

そして「あぁ、父が引き寄せてくれたんだ。来て良かった。」と話されていましたね。
——島の出身者たちも集まる池間島の大きな行事(ミャークヅツ)の時に、うまくタイミングを合わせて開催されたそうですね。

池間島でカツオ漁が最盛期の頃に大きな船の船主さんなのですが、その方の関係者の方が、「写真に写っているよ!」と那覇まで連絡を入れてくださって、ご夫婦でわざわざ那覇から飛行機に乗って来られた方もいらっしゃいました。
その写真は、当時羽振りが良くて、娯楽を楽しんでいるワンシーンだったのですが、奥さんがそれを見て、
「この時代は景気が良くてね。当時の主人は、よく働き、よく遊んでいましたね(笑)。そういう時代もあったのよ」っておっしゃっていましたね。
そのように1枚の写真をきっかけに、写真の前で延々とお話されるんです。あの頃に戻っているんですね。

——そのようなドラマがいっぱいあったのですね。
前泊博美代表:市街地の平良在住の方からも、自分の母親が写っているというので、わざわざ観に来られた方がいらっしゃるんですね。そのお母さんとは、当時ツカサンマ(島の祭祀を司る神人)をされてきた方で、ツカサが5名で写っている写真とか、後ろ姿までわかるそうで、
「あぁ私の今の年齢の頃は、母はこうだったのね」とか「私より若かったのかしら」とか、写真の中に懐かしい母ちゃんがいるって、何回も何回も観てくださって。

ほかにも、池間島の今はない原風景が写真の中に残っていて(例えば、水門とか)、
当時小さかった子供だった人たちが、「そうだよね〜。昔、こんな場所があって、よく遊んだよね〜」って、話が尽きないんですよね。
「うわっ、この子は誰だ〜!」って当時の鼻タレ小僧を指さしているんですが、それがご本人だったりとか(笑)。
またその隣に写っている子供たちについても、ひとりひとり「あっ、誰々ちゃんだ!」ってわかっていったりとか。
また、とてもすばらしい干潟(フナガリ)があった頃の様子を、写真で観ることができたりしました。

芦川剛志(写真の複刻作業担当):そういう写真が、100枚も200枚もある事が凄いですよね。
前泊博美代表:それが残されているという事自体が、とても驚異的な事なんです。
芦川剛志:そのように、この展覧会は島のみなさんにとって感動と大きな衝撃だったようです。
前泊博美代表:あるかたは、自分の妻が幼い頃の写真が写っているのでどうしてもほしいと、展示パネルをはがして持ち帰った方もいらっしゃいました(苦笑)。
——まだ半世紀前の記録なので、なんとか記憶も辿れる。
前泊博美代表:そうなんですよ。その記憶を最初に辿ったのが、ここ(福祉施設ふくらしゃ)の利用者のお年寄りの方々だったんです。
とても感動されていて、一時期は朝から晩までDVDが再生され続けられていたのですが、さすがにもう見飽きたようですね。でも時々、たとえば1カ月ごととかのDVD上映なら、またいいかもしれませんね。
とにかく何が凄かったかというと、認知障のかたも、昔のことをきっちり覚えていらっしゃっていて、私たちも知らない昔の池間の事をたくさんご存知で教えてくださるんですよ。
だから懐かしい写真の活かし方がこういうところにもあって、認知障の予防にもなる。
記憶を取り戻せて、活き活きと過ごせる。それがわずかな瞬間だとしても凄いことなんですよね。

1枚の記録写真から記憶を呼び戻すことがどんなに素晴らしいことだったのか、たくさんの素敵なエピソードを聞かせて頂きました。
島の人々の心をつないだこの写真展のいきさつや背景などを、池間島の漁師として暮らしながら写真家として今回の展示写真を複刻された芦川剛志さんに、この続きの深いお話を伺いたいと思います。(→続きはコチラ!)
(取材: 桑村ヒロシ)
(取材協力: 老人福祉施設きゅ〜ぬふから舎、芦川剛志写真事務所)
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この記事へのコメント
池間島の昔の貴重な写真、
本当に素晴らしいですね!
写真って、
人と人、
人の記憶にとって、
大切な材料を提供しますね!!
写真を大切にしたいと感じました・・・
本当に素晴らしいですね!
写真って、
人と人、
人の記憶にとって、
大切な材料を提供しますね!!
写真を大切にしたいと感じました・・・
Posted by パイパティローマ at 2008年12月04日 10:01
琉球の旅人・パイパティローマさんへ>
いつもコメントありがとうございます。
写真は時を刻むものでもあったり、
そしてその中に思い出(としての記憶)とか、
時を経てのちに貴重な記録になっていることも。
ぜひ旅先で、沖縄で、今を写し続けてくださいね。
(ryuQ・KUWA)
いつもコメントありがとうございます。
写真は時を刻むものでもあったり、
そしてその中に思い出(としての記憶)とか、
時を経てのちに貴重な記録になっていることも。
ぜひ旅先で、沖縄で、今を写し続けてくださいね。
(ryuQ・KUWA)
Posted by ryuQ編集室
at 2008年12月04日 21:54

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