『沖縄 暮らしのしきたり読本』著者・比嘉淳子に聞く【第1話】

ryuQ編集室

2008年10月09日 12:30


ベストセラー本『御願ハンドブック』の著者であり、琉神マブヤーのエンディング曲の作詞者でもある比嘉淳子さんの最新刊『沖縄 暮らしのしきたり読本(御願・行事 編)』(双葉社 刊)がついに出版。
なぜ今、この本を世に出そうと思ったのか、どういったメッセージが込められているのかを著者ご本人に語って頂きました。スピリチュアルブームの今だからこそ、本来の沖縄の御願行事やその心得について等々、しっかりとお届けしたいインタビュー集・シリーズ第一弾です。

第1話「原点にヒント。そして良心を育むこと」編

——今回この本を世に出そうと思ったきっかけは。

比嘉淳子:以前に沖縄で出版した『御願ハンドブック』(ボーダーインク 刊)は初めての試みでもあったので、それでもまだまだ言い足りなかった事があるんですね。
というのも、“ヒヌカン(火ノ神)がある沖縄の一般家庭向け”を前提に書いたハウツーものでもあったのですね。
ですので今回、全国出版した『沖縄 暮らしのしきたり読本(御願・行事 編)』については、本土の人や、また県内でも本土復帰(1972年)以降の若い世代などに、ヒヌカンや御願(ウガン)についてよく知らない人にも理解できるよう、沖縄の風習(や行事)や御願の事を書いてみたのです。

——本土復帰以降の若い世代に向けてのハウツー本というのはよくわかりますけど、またどうして本土の方々にも読んでもらいたいと思われたのでしょうか?

比嘉淳子:本土にも古いしきたりのあるお家では“カマドの神様”が居たりしたという話も耳にしましたが、それは沖縄の家庭の“ヒヌカン(火ノ神)”に共通するものであったりするんですね。
現在本土では少なくなってきたり、そういう古い風習が忘れられてきているところ、沖縄にはまだ残っているんですね。そのいい風習をもう一度沖縄から辿ってみるのもいかがでしょうか。

例えば沖縄では、害虫さえもただ殺して駆除するのでは無くニライカナイ(楽土)に返す『アブシバレー』というが行事に残っていたりしますよね。小さな虫や花を愛おしむ気持ちって何だろうかとか。
また本土にも地方によっては微かに残っているそういった風習の意味や意義を知るきっかけにしてほしいというメッセージでもあるんです。

——昔ながらの行事やその大切な部分(心)が、沖縄の人の心や風習に残っているのですね?

比嘉淳子:それに最近では、物騒な世の中になってきて、街の中に監視カメラが増えてきていたりしますけど、少しおかしいと思いませんか?
昔私たちが子供の頃の時代は、悪いことをしようとすると「おてんとう様が見ているよ!」「うやふぁーふじ(先祖)が見ているよ!」っていう意識の元、道徳的な善悪の判断ができていたものですし、誰か大人たちの目がいつもどこかにあったものですよね?
それが今の時代、人や道徳心ではなく、監視のテレビカメラが私たちに向かっているのって、よく考えるとおかしい事でもありますよね?

「人の目が見ていなければ、どんな事をしてもいいんだ」って、先生や大人たちが見えないところでイジメがあったり、犯罪があったり。目に見えるものだけではない、怖いものを知らない人たちが増えてきたんじゃないかと思うんですね。

——そこのところをもう少しくわしく説明して頂けますか?

比嘉淳子:冒頭の「はじめに」でも書いた「神を怖れるということは、もの習いの始まり(神畏りーしぇー、物習ぬ元)」という昔から語り継がれた黄金言葉(くがにくとぅば)がありますが、まさにそうだとずっと思っていました。

見えない神(や自然界)も敬えるということは“すべてに感謝”という事にもつながるわけです。

たとえば“空気”も見えないですが“あり”ますよね。
見えないものだからって、その領域を汚していいものでもありませんし、見えないものに敬意を示せるという事は、誰にでも敬意を持てるような、つまり、他人の命も大切にすることができると思うのです。
そういう深い教えが、昔ながらの沖縄の黄金言葉に残っているんですね。

——昔ながらの風習や教えの中に、大事なものが眠っていて、それを見直すことが今の世の中にも価値がある事なのですね?

比嘉淳子:人間は生物でもあるので弱肉強食は本能かもしれませんが、それを抑える“理性”が“良心”だと思うんです。そこ(心)が大事なので、ひとりひとりの良心を鍛えることが、世の中の平和を作ってゆけるきっかけになるのではと思います。

第1話「原点(昔ながらの教え)にヒント。そして良心を育むこと」編(10/9(木)掲載)
第2話「旧暦と、あの世とこの世」編(10/10(金)掲載)
第3話「火ノ神(ヒヌカン)」編(10/11(土)掲載)


(取材: 桑村ヒロシ、取材協力: チームくがに)

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