『沖縄 暮らしのしきたり読本』著者・比嘉淳子に聞く【第3話】
初日、2日目にひき続き、比嘉淳子さんに著書『沖縄 暮らしのしきたり読本(御願・行事 編)』について、そこに書いて伝えたかった事は何なのか、さらに掘り下げてお話を伺ってゆきます。比嘉淳子インタビュー【第3話】です。
第3話「火ノ神(ヒヌカン)」編
——そして、本にも書かれている沖縄の家庭にもある「ヒヌカン(火ノ神)」について、わかりやすく教えて頂けますか?
比嘉淳子:火も水も酸素も自然界にあるものは人間が創造したものでは無いですよね。その火・水・空気の3つの神様を模して、海とか川の石を3つ並べて(御三石)、カマドの形に神様を祀ったのです。
ヒヌカン(火ノ神)を通すと、天にもつながる、竜宮(海)にもつながるスポークスマンみたいな役割を持つんですね。
例えば家庭にあるヒヌカンは、天の役所の出張所みたいなもので、各集落にあるヒヌカンは町役場や県庁みたいなものと例えるとわかりやすいかと思います。
だから、引越先の地では、まず集落のヒヌカンに「新しくここの地域に住まわせてもらいます。よろしくお願いします」と住所登録をするようなもので、さらにはもっと大きな事を「こんど○○をします」と申告しにゆく国の役所みたいなのが、もっと大きな御嶽だったりするのです。
——それが例えば、世界遺産にもなった斎場御嶽だったりするのでしょうか?
比嘉淳子:斎場御嶽はいきなり行くところではありませんし、まだ自分の足元も固めていないのに、それはいきなり国会議事堂にゆくようなものです。
何人かのベテランの神人(カミンチュ)さんにもインタビューをさせてもらったのですが、「斎場御嶽には行ったことが無い」という方々もいらっしゃいます。私たちにとっては、元々は身近な場所では無いんですね(本来は王家の儀式や参拝の聖地)。
そういった神聖な場所であって、本来はエネルギー充電の場などでは無いんですけどね。ところが観光でいらした参拝客の中には、手を広げて何かやっている人たちの姿などを時々見受けますけど…、
沖縄では、拝所で“力をもらう”なんてという概念が無いんですよ。
“もらう”ものでは無くて“気づく”ためのものであって、例えば、目標を立てて一生懸命頑張って、その知恵に気づかせてもらう。内面を活気づけさせ、浄めて自分の内側から光らせるもので、“もらう”ものではないんですね。
——昔から沖縄に伝承されている伝統行事のことや、参拝の仕方やお供えの仕方など、この本はその基礎を知ることができるガイドブックになっていますね。
その中でも「御願の心得」(p94-95)というコーナーに、御願(ウガン)とはどういう意味を持つもので、そしてどういう心構えが必要なのかがわかりやすくまとめられていますね。
「御願とは、自分自身が目標をあげることで、他力本願な棚ボタでは無い」「御願は“お金持ちになりたい・商売繁盛”などの錬金術ではない」とか。
比嘉淳子:例えば、“商売繁盛”の拝みって無いんですよ。
もしレストラン経営者の場合、いいお客さんがつくように何が必要でしょう? 何よりもまず、みんなが和合をとって、笑顔を絶やさないようにする努力が必要だったりしますよね。
そういった努力の目標を立てて頑張ってゆくのでサポートや気づきをお知らせください、というのが本来の御願であって、まさか、何も努力をしないのに、商売繁盛の神頼みをしたからって数日後に簡単に繁盛するという事はまずありえない訳です。
御願とは目標を宣言することなんです。ことわざで「一年の計は元旦にあり」とありますよね。それと同じで誓いを立てることなんです。
沖縄では旧暦2月に『タティウガン』があり、そこに一年の目標を立てることも含まれます。目標を立てるとは、誓いを立てること、自分が宣言することなんです。
毎年お正月にはお宮で「今年も○○になりますように」と“お願い(他力本願)”していたけど、本当は“誓い(自ら宣言)”をすることだったんですね。
興味深い話は尽きないのですが、本の中でもいろんな事が語られていますので、どうぞ続きは『沖縄 暮らしのしきたり読本(御願・行事 編)』(双葉社 刊)をご覧くださいね。
●第1話「原点(昔ながらの教え)にヒント。そして良心を育むこと」編(10/9(木)掲載)
●第2話「旧暦と、あの世とこの世」編(10/10(金)掲載)
●第3話「火ノ神(ヒヌカン)」編(本日10/11(土)掲載!)
(取材+写真: 桑村ヒロシ、取材協力: チームくがに)
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この記事へのコメント
昨日、購入しました♪
とても解りやすく書かれていて、「マブヤーグミ」の詳しいやり方を知りたかったので
勉強になりました。
うちな~んちゅのバイブルですよね(*^_^*)
比嘉淳子さん ありがとうございました(^人^)
とても解りやすく書かれていて、「マブヤーグミ」の詳しいやり方を知りたかったので
勉強になりました。
うちな~んちゅのバイブルですよね(*^_^*)
比嘉淳子さん ありがとうございました(^人^)
Posted by かなさ at 2008年10月12日 14:22
ありがとうございます。
マブヤー込めをはじめ、御願などは各家庭でやり方が違ったりしますが、要は心がこもっているかです。
沖縄には、たくさんの愛情を伝播するおまじないが残っています。
大切にしたいものですね。
これからもよろしく御願いします。
マブヤー込めをはじめ、御願などは各家庭でやり方が違ったりしますが、要は心がこもっているかです。
沖縄には、たくさんの愛情を伝播するおまじないが残っています。
大切にしたいものですね。
これからもよろしく御願いします。
Posted by 比嘉淳子 at 2008年10月18日 19:04
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