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シマとの対話〜第II章(第17話)『風と種と根の話し』…

風と種と根の話し
南島詩人・平田大一の“今この瞬間”に綴り出される詩、そしてそれに呼応するような1枚写真とのコラボレーションでお届けする連載『シマとの対話』。第II章を好評連載中!(毎月中旬更新)
シマとの対話〜第II章(第17話)『風と種と根の話し』…
第II章(第17話)『風と種と根の話し』

雨上がりの5月!
島には素敵な風が吹いている。
梅雨明けを、もう既に思わせるが如くの入道雲。
都会とは違う「時間軸」のズレというか
心の遊びの範囲の広さというか
吹く風に向かえば、心地いい…
やはり、島の懐はかなり深いようだ。

縁側から吹いてくる南風…
風に向かって
大きく深呼吸をした。


正直な話…そんな僕でも
島に帰る度に葛藤がある。

自身の「根っこ」の喪失感…
自身の「居場所」の喪失感…
還るべきふるさとを失った記憶が今も蘇るからだ。

君は信じられないかも知れないけど
僕にとって「生まれたシマ」というのは
「生きること」において大変な場所なんだ。


2004年6月18日。
僕は「島人有志一同」を名乗る者たちが投函した
抗議の手紙がもとでシマの長老達、青年達に訴えられた。

「平田大一は、島の精神である『神歌』を島外に持ち出し
 金儲けで私腹を肥やしている犯罪人である!」

強い口調の内容の手紙は小さな島で大きな波紋を呼び
折りしも帰省した僕を待っていたのは「島人裁判」だった。

血走った目ン玉にグルリと囲まれた真ん中に
座することを命じられた僕は文字通り「針のむしろ」の上の状態…
乾ききった口からは、言葉は勿論、唾さえも出てこない
数十分にわたる「取調べ」は静かにだけど容赦なく行われた。

島外で芸能活動を行う僕の作品に
島人が最も大切にしている「神歌(古謡)」を使用し
シマの財産であるそれを商売道具にして金儲けしている!
そういう傾向は前からあったものの今回だけは度を越している!
許されるべきものではナイ!
それなりの制裁を受けてもらいたい!

言い訳を述べる術もない
誤解を解く余裕もない
謝罪の意思を伝えるしか為す術はない状況で
この人たちを傷つけたことだけは解かった僕は
素直に謝り皆さんが納得いくカタチで侘びをいれたい、と伝えた。

僕への判決は
「島の神事、祭事への出入り禁止」
というものであった。

沈黙の夜、軽蔑の眼差しに追い返されるように
僕は翌日の朝一番の舟でシマを出た。
不思議と悔しさは無かった。
ただ哀しかった。
何かを亡くした喪失感の中
舟の中で僕は遠ざかるシマを見つめていた。
揺れながらだんだん遠ざかるシマを…
親をただ見つめていた。


君には、にわかに信じがたい話だろうけど
シマで生きるということは本当に大変なことなんだ。
生まれたふるさとで生き抜くということは本当に!
本当に大変なことなんだ。


今日も
シマには素敵な風が吹いている
縁側から入ってくる優しい南風が
今日も僕に吹いてくる。

真夏のような入道雲
突き刺すように浜辺に立つ
マングローブの木の一本を見ながら思う。

絶対に誰かを恨むまい
絶対に誰かのせいにすまい
絶対に下をうつむくまい

あの風のように
種のように
根のように

そこに生きる「命」はいつも…
命はいつも
未来に向かって生きている。

  (南島詩人/平田大一)
Photo_KUWA
書籍版『シマとの対話【琉球メッセージ】』ryuQ生まれのコンテンツ『シマとの対話』が、
書籍版として新たに生まれ変わります!
南島詩人・平田大一とKUWA(ryuQ)の写真とが
コラボレーションした、情熱と感動の作品集になりました!!

書籍版『シマとの対話【琉球メッセージ】
文:南島詩人・平田大一 / 写真:桑村ヒロシ(KUWA)
出版:ボーダーインク
発売日:好評発売中!
価格:¥1500(+税)
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Profile
平田大一(ひらた・だいいち)
南島詩人・演出家・那覇市芸術監督
1968年11月7日沖縄県竹富町小浜(こはま)島生まれ。

進学先の東京で、アートユニット「I・N・U」に参加、自作の詩を朗読する舞台活動を開始。卒業後は生まれ島「小浜」に戻り、アーティストへの楽曲・詩の提供、実家の民宿を拠点に「キビ刈り援農塾」をスタートさせるなど、地域と文化に根ざした幅広い活動を行う。
2000年から与勝地域の子供達による現代版組踊『肝高の阿麻和利』の演出を手がける。
2005年3月に勝連町・きむたかホール館長を卒業、4月11日に有限責任中間法人TAO Factoryを立ち上げ、代表理事に就任。同年、那覇市芸術監督に就任。
うるま市、浦添市、八重山、金武町、那覇市、5つの地域の子供たちのための舞台を手がけるほか、毎年、新作舞台を精力的に制作。沖縄県内はもとより、県外、国外にも支持者を増やしている。
代表作に現代版組踊『肝高の阿麻和利』、現代版組踊『大航海レキオス』など多数。著書は詩集『南島詩人』、『歩く詩人』(冨多喜創)、写真詩集『シマとの対話【琉球メッセージ】』ほか。

・平田大一ブログ『シマとの対話』:
http://hiratadaiichi.ti-da.net/


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Posted by ryuQ編集室 at 2010年05月20日   09:00
Comments( 0 ) 南島詩人・平田大一『シマとの対話』
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