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大晦日の夜は『年越しテビチ汁』or『ソーキ汁』

大晦日の夜は『年越しテビチ汁』or『ソーキ汁』
早いもので、今年も余すところ2週間とちょっとで大晦日、ウチナー口で言う「トゥシヌユルー(年の夜)」である。

トゥシヌユルーの食べ物といえば、今では沖縄では定番になりつつあるが(もうなっているかも)、多くの人が「年越し沖縄そば」を食べているが、ボクもここ数年、カアちゃんの実家で大晦日に「年越し沖縄そば」を食べるようになり、そのそばダシもボクが担当で「美味しい」と評判なんだけど、どうもその「年越し沖縄そば」に違和感がある。
トゥシヌユルーには伝統的な「ソーキ汁」か「テビチ汁」を食べたい
それはなぜかというと、「年越しそば」は「年越しの蕎麦」であり、「年越し沖縄そば」ではないからである。ボクは大学時代に東京にいて、沖縄に帰る金もないから年末までだいたいバイトをやっていて、そこで、「年越しそば」を食べていたのである。いろいろ、バイトをしていたが、秋葉原の電気街で電化製品を卸す問屋でバイトをしていたころ、大晦日に社員もバイトも全員で遅くまで残業し、仕事終えたあと社長が全員をそば屋へ誘い、そこで「年越しそば」を食べた。その時に社長から教えられた「年越しそば」の由来がすごく納得したので、「年越しそば」は絶対日本そばと思うようになったのである。

バイト先の社長いわく、「年越しそば」の始まりは大阪だか京都だかの金箔を使う職人のいる店から始まったという。金箔とは、金を叩いて叩いて叩いて紙よりも薄く伸ばしたもので、日本の伝統工芸には金箔を切って貼ったいろいろな細工物がある。職人たちが仕事をすると細かい金箔片や金粉が散らばり、それを大晦日になると職人や奉公人たちが、蕎麦粉を練ったもので拾い集めて、最後に蕎麦粉を洗い流せばザルに金箔片や金粉だけが残り、そこから転じて「蕎麦は金を集める」という縁起物として、大晦日に「年越しそば」を食べるようになったといったのである。だから、蕎麦粉を使った日本そばが「年越しそば」だと思うようになったのである。

それに比べて「年越し沖縄そば」の小麦粉は「大晦日にどんな仕事をしたのだ」と問いたい。練った小麦粉は金粉を集めないし、コイやヘラブナを集めるぐらいしかできない。ま、とにかく、沖縄そばは沖縄そばで素晴らしい食文化だとは思うし、ボクは自慢じゃないが人よりたくさん沖縄そばを食べ、沖縄そばの美味しい店を探してはアッチコッチに書いたり喋ったりして、誰よりも沖縄そばを愛し、その普及に取り組んでいる自負はあるが、どうしても「年越し沖縄そば」には納得が行かないのである。

ソーキ汁やっぱりトゥシヌユルーに蕎麦粉の入らない沖縄そばを食べるというのはいかがなものかと思っていた。が、今年の「沖縄そばの日」のシンポジウムで、サン食品の土肥社長とお会いしたとき、土肥社長が「沖縄年越しそば」を推進し、定着させた張本人だと聞いた。土肥社長によると、そばは長く伸びるので「延命長寿」や「身代が細く長く伸びるように」と願う形からきた説を述べ、転じて大晦日に長寿や健康、長者を願って食べるようになったといった。また、地域によって細長い食べ物ならなんでもいいうどんやソーメンを食べるところもあるというので、「年越し沖縄そば」もあながち間違いじゃないと思うようになった。

それでも、「年越し沖縄そば」も悪くないけど、やっぱりウチナーンチュなら、トゥシヌユルーには伝統的な「ソーキ汁」か「テビチ汁」を食べたいと思う。

テビチ汁ボクの実家ではではずっとトゥシヌユルーにはソーキ汁かテビチ汁を食べながら紅白を見るのが恒例だったが、ソーキにするかテビチにするかの決定権は親父にあり、親父が食べたいものをトゥシヌユルーには食べていた。今から15年以上前だけど、ボクが結婚する前年のトゥシヌユルー、親父はテビチとソーキを一緒に食べたいとわがままなリクエストをしたことがあった。料理上手なお袋は朝からテビチ入りソーキ汁というかソーキ入りテビチ汁を作り、ボクは結婚前の今のカアちゃんと実家で家族揃って紅白を見ながら食べていると、親父はいつもより「美味しい美味しい」といってお代わりをした。皮までやわらかいテビチと骨からポロリと外れるソーキ、味のしみ込んだ大根、昆布、シイタケとの味わいと鰹節と豚ダシのきいた汁とのバランスが絶妙で、親父は「また来年も同じもの作って」とリクエストをした。が、翌年、ボクの結婚式のひと月後に親父は緊急入院し、年末年始は看病をしながら病院で過ごしたお袋だったが、時間を見て親父のリクエストのソーキテビチ汁を作り、親父を除く全員でトゥシヌユルーを過ごした。年が明けて約2週間後に親父はなくなったが、しばらく、お袋は「ソーキテビチ汁」を作っていたが、また、テビチ汁かソーキそばに戻った。数年前にお袋は転んで骨折して台所に立てなくなり、姉がトゥシヌユルーにソーキ汁を作るようになったが、お袋の味には遠く及ばず、そのお袋も今年、親父の許に行った。

今年もボクは、トゥシヌユルーに女房の実家で毎年恒例の沖縄そばのスープを作るけれど(自分で言うのもなんだけど、かなり絶品で親戚に商売ができると大好評)、お袋の作ったソーキ入りのテビチ汁(テビチ入りソーキ汁)が、この時期が近づくと食べたくなるのである。

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大晦日の夜は『年越しテビチ汁』or『ソーキ汁』
筆者プロフィール:嘉手川 学(かでかわまなぶ)
フリーライター、沖縄県那覇市生まれ。沖縄のタウン誌の草分け『月刊おきなわJOHO』の創刊メンバーとして参画。沖縄ネタならなんでもOKで特に食べ物関係に強い。現在も『月刊おきなわJOHO』で食べ物コーナーを15年以上掲載中。
著書、編著、共著に『沖縄大衆食堂』、『笑う沖縄ごはん』、『泡盛『通』飲読本』(各双葉社)など多数ある。共著で『沖縄離島のナ・ン・ダ』(双葉文庫)と『もっと好きになっちゃった沖縄』(双葉社)、『沖縄食堂』(生活情報センター)が発売中。


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Posted by ryuQ編集室 at 2009年12月21日   09:00
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