「沖縄のカツ丼って野菜たっぷりだよ」(by.嘉手川学)


その友人がいつもいうには「沖縄の食堂には毎回驚かされる」ということである。黄色いカレーもさることながら、「みそ汁」や「チャンポン」、「すき焼き」や日替りランチではない「ランチ」というメニューになどに驚いている。沖縄の飲み屋や居酒屋のメニューはある程度把握しているが、食堂には食べたことのないメニューがいくつもあり、食堂の数だけ驚きがあると思うとも言っていた。
そこで、ボクは「そうだ、本土と同じな名前のメニューだけど、実際に食べてみると違う料理だったり、似て非なるメニューだった、というものを不定期だけど紹介していこう」と思ったのである。そう思ったら7月の紹介した黄色いカレーも似て非なるメニューなので、今回から紹介する似て非なる食べ物シリーズがPARTIIということになったのである。
で、今回、何を取り上げようか、食堂へいき「煮付」や「チャンポン」、「フーイリチー」、「Aランチ」、「牛丼」、「サンマ定食」、「ミックスフライ定食」というメニューを見ながら、みんなが良く知っていてその違いに驚く、カツ丼に決定したのである。

「え、カツ丼!?カツ丼ってあのカツ丼でしょう?沖縄のカツ丼たって、本土とそんなに変わらないと思うけど、ソースカツ丼や味噌カツ丼じゃないんでしょ」と思ったかもしれない。しかし、そう思った皆さん。あなたは沖縄のカツ丼の底力を知らない。っていうか、沖縄の食堂のオバちゃん(たまにオヂさんもいるけど)たちの底力を侮っている。沖縄のオバちゃんたちの意識は医食同源で(特にオーナーシェフのオバちゃん限定だけど)、食べて体に悪そうなものはあまり出さない(あまり出さないところがミソだけど)。

実を言うとボクは、黄色いカレーもそうだけど沖縄のカツ丼も足掛け3年ぐらいライフワークとして、県内のカツ丼を食べ歩いていて、カツ丼を研究する「OKB(沖縄カツ丼分析会)」を主宰しており、県内のアッチコッチの食堂でカツ丼を頼み、肉の種類や厚さからコロモの厚さ、使われている野菜の種類などを調べて分析しているのである。そこで分かったのが、カツの肉はBロース(肩ロース)が主流で、Aロースを使い食堂は今のところ皆無であったが、唯一、「南風原ドライブイン」だけがロース肉を、糸満市の「まぐろ基地」ではシイラもしくはマンボウのカツを使ったカツ丼であった。

沖縄のカツ丼と本土のカツ丼との大きな違いはその作り方にある。
本土というか、東京風のカツ丼はカリッと上がったカツを薄くスライスした玉ネギと一緒に、甘辛いツユで煮て玉子でとじて半熟の状態でご飯の上にのせるとのだが(たぶん)、シンプルで玉ネギとツユの甘さがカツと絶妙にマッチし、ふんわりとした玉子とご飯とカツの味わいが食欲をそそるのだが、沖縄のカツ丼はひと味もふた味も違う。とにかく体に優しくするため、カツ丼なのに野菜がたっぷりで、野菜を食べるアクセントとしてカツがあるのかと思えるほどである。作りかたもまずは野菜を炒めることからはじめる。炒める野菜は玉ネギニンジンキャベツ。大体どこの食堂でもこの野菜の三本柱に小松菜やピーマン、モヤシなどの野菜を炒めて、沖縄そば用のスープを加え醤油や味醂、砂糖などで味を調えカットしたBロースのカツを入れしばらく煮込み、仕上げに溶き玉子を流し入れ玉子を煮る。溶き玉子が半熟かどうかはこの際、どうでもいいことで、玉子が煮えたところで大きめの丼8分目まで入れたご飯の上に野菜と一緒に煮込んだカツをのせれば沖縄風のカツ丼が完成。

野菜がたっぷりなので、食べていて健康に良さそうなんだけど、いかんせん、量が半端じゃない。食べる人の健康のために野菜たっぷり加えたのはいいけれど、その分だけ量が増えているのである。また、量が多ければ残せばすむことと思うかもしれないけれど、こればまた美味しいから厄介である。美味しいから苦しくてもワシャワシャと食べ進むうちに丼は空っぽになってしまう。だから沖縄のカツ丼は美味しくて苦しい罪だといえる。

こうして、沖縄の食堂のカツ丼をがっつり食べた後、ボクは膨らんだお腹を撫で回しながら、食べきった自分を褒め称え、食堂を後にするのだった。
●嘉手川 学の『ryuQ100味』バックナンバー:
http://ryuq100.ti-da.net/c73393.html

筆者プロフィール:嘉手川 学(かでかわまなぶ)
フリーライター、沖縄県那覇市生まれ。沖縄のタウン誌の草分け『月刊おきなわJOHO』の創刊メンバーとして参画。沖縄ネタならなんでもOKで特に食べ物関係に強い。現在も『月刊おきなわJOHO』で食べ物コーナーを15年以上掲載中。
著書、編著、共著に『沖縄大衆食堂』、『笑う沖縄ごはん』、『泡盛『通』飲読本』(各双葉社)など多数ある。共著で『沖縄離島のナ・ン・ダ』(双葉文庫)と『もっと好きになっちゃった沖縄』(双葉社)、『沖縄食堂』(生活情報センター)が発売中。
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この記事へのコメント
7月から名護で22店食べました.
http://d.hatena.ne.jp/s0met1me/20090829/1251544136
確かに量的にシンドイ店が多いです.
http://d.hatena.ne.jp/s0met1me/20090829/1251544136
確かに量的にシンドイ店が多いです.
Posted by s0met1me at 2009年09月21日 15:04
女子なのでこの手はさすがにトライできませんが(笑)
とんかつ定食にて疑問なのは、薄いとんかつってわりと主流なのでしょうか…。
薄いとんかつはコザで何箇所かあたりましたが
中部特有ですか?
比較的沖縄全般でしょうか?
ご存知でしたら、ぜひとも教えて下さい(笑)
ところで先日食べたとんかつ定食(これまたカツ丼じゃないんですが)
味噌カツとメニューに書かれていましたが…
なんか あんだんすー を伸ばしたような
ソースのような気がしました…。
違うし!
とんかつ定食にて疑問なのは、薄いとんかつってわりと主流なのでしょうか…。
薄いとんかつはコザで何箇所かあたりましたが
中部特有ですか?
比較的沖縄全般でしょうか?
ご存知でしたら、ぜひとも教えて下さい(笑)
ところで先日食べたとんかつ定食(これまたカツ丼じゃないんですが)
味噌カツとメニューに書かれていましたが…
なんか あんだんすー を伸ばしたような
ソースのような気がしました…。
違うし!
Posted by lotus55 at 2009年09月23日 16:57
ハイサイ、こんにちは。
s0met1me1さん、lotus55さんコメントありがとうございます。
沖縄はカツ丼も豚カツの本土と比べて変ですよね。
ところで、s0met1me1さん。ブログ見させてもらいました。ボクは取材でやんばる方面には多々行くのですが、カツ丼を食べに行くというのがなかなかなくて、s0met1me1さんのブログのカツ丼生活、間で全部は読んでいませんが参考になりました。また、新しいカツ丼情報がありましたら教えてください。ボクが主宰する「沖縄カツ丼分析会」(会員なし活動歴皆無だけど)、ゼヒ名護支部として沖縄のカツ丼を極めてください。
それから、lotus55さんもブログ見ました。特に食の話題が中心でしたが。コザの生活って那覇と違いますよね。コザに友達が何人かいるけど、明らかにナーファンチュとクジャンチュ(コザ人のこと)と人種が違うよね。
そうそう、沖縄の食堂の豚カツだけど、確かにおっしゃる通り薄いカツが多いですね。特に丸仲食堂の薄さは群を抜いていますが、ボクの女房の実家の豚カツも同じくらい薄いですよ。女房の実家だけでなく親戚の豚カツ(お正や旧盆、お彼岸のときによく食べる)も薄いですよ。コザ出身ではなく名護と旧玉城村の親戚のカツがそれぞれ薄いですよ。たぶん、沖縄で厚さ1cmくらいのカツが食べたければ、豚カツ専門店にしかないと思いますよ。
とにかく、お二人とも、これからもカツ丼と豚カツを求めて食堂めぐりに励んでください。ホントにコメントありがとう。
嘉手川 学
s0met1me1さん、lotus55さんコメントありがとうございます。
沖縄はカツ丼も豚カツの本土と比べて変ですよね。
ところで、s0met1me1さん。ブログ見させてもらいました。ボクは取材でやんばる方面には多々行くのですが、カツ丼を食べに行くというのがなかなかなくて、s0met1me1さんのブログのカツ丼生活、間で全部は読んでいませんが参考になりました。また、新しいカツ丼情報がありましたら教えてください。ボクが主宰する「沖縄カツ丼分析会」(会員なし活動歴皆無だけど)、ゼヒ名護支部として沖縄のカツ丼を極めてください。
それから、lotus55さんもブログ見ました。特に食の話題が中心でしたが。コザの生活って那覇と違いますよね。コザに友達が何人かいるけど、明らかにナーファンチュとクジャンチュ(コザ人のこと)と人種が違うよね。
そうそう、沖縄の食堂の豚カツだけど、確かにおっしゃる通り薄いカツが多いですね。特に丸仲食堂の薄さは群を抜いていますが、ボクの女房の実家の豚カツも同じくらい薄いですよ。女房の実家だけでなく親戚の豚カツ(お正や旧盆、お彼岸のときによく食べる)も薄いですよ。コザ出身ではなく名護と旧玉城村の親戚のカツがそれぞれ薄いですよ。たぶん、沖縄で厚さ1cmくらいのカツが食べたければ、豚カツ専門店にしかないと思いますよ。
とにかく、お二人とも、これからもカツ丼と豚カツを求めて食堂めぐりに励んでください。ホントにコメントありがとう。
嘉手川 学
Posted by 嘉手川 学 at 2009年09月26日 20:35
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