沖縄の若き詩人たちの夕べ『ひとりカレンダー』(トーマ・ヒロコ)

街角に似合うのは何だろう。本屋さんと喫茶店、そして映画館に夕暮れ時……。そんな個人的条件にばっちり合うのが、坂道をのぼれば見えてくる、那覇のサブカルチャーの名所「桜坂劇場」である。もうひとつ街角に似合う「詩の朗読」を、その桜坂劇場で行ったのは、先月のことだ。

実は去年も一度詩集を発行した時に朗読会を行ったことがある。劇場の本屋さん「ふくら舎」のS君が「詩集」好きということもあって、こころよく引き受けてくれるのだ。うへへへと片口笑いをしつつ、棚の一角にはおもしろい詩集をそろえている、頼れる青年である。
沖縄は詩人が結構いるが、出される詩集の点数はそんなに多くはない。またたくさん売れる類のものではない。「山之口貘賞」を受賞した作品でも、発行部数が300部とか500部、なんて事は多々ある。でも今回の朗読会のように、詩人仲間以外にも、その作品にふれる機会を増やせば、詩の読者人口も微増しないかしら、という県産本版元としてのねらいもある。朗読する場所は、劇場前のテラスなので、道行く人たちもひょいとのぞくことのできるところが良いのだ。

トーマさんの詩は、自身の生活の中から背伸びすることなく見える風景を描写しながら、そこここに潜む違和感を詞にしていく。
『ひとりカレンダー』は、沖縄を離れて東京で働いていた時期と、沖縄に戻って来てからの日々から生まれた作品が13編収録されている。
ヘリの飛ばない静かな街から手紙を送ろう
生まれ育った島を出てもう四ヶ月
この街からふるさとを見てみたいと思ったのだ
しかしこの街からふるさとは遠くてあまり見えない
島からこの街を見ていた時は
そう遠く思えなかったのに
(「七月三十一日の手紙 〜静かな空の下で」より)
沖縄を離れて暮らしたことのあるウチナーンチュなら味わうであろう、沖縄とあちらとの違いをうまく表している。島から離れて感じた違和感は、島に帰ってきてからといって消え去るものではない。
車をとばし今日はKiroroを唄う
「帰る場所」はここのはずだが
誰が「お帰り」と言えば
心から「ただいま」と言えるのだろう
わナンバーが私の車を追い越していく
(「一ヶ月」より)

朗読会では、トーマ・ヒロコさんが『ひとりカレンダー」の中から六編、宮城隆尋さん、松永朋哉さん、伊波泰志さんが、それぞれ自作とその他の詩人の作品の二作ずつ朗読した。
インタビューなども交えて約一時間、終わる頃にはとっぷり日も暮れていた。打ち上げの店をいろいろ選べるのも、桜坂の街角ならでは、なのだった。
●新城和博の『ryuQ100冊』バックナンバー:
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プロフィール:新城和博(しんじょうかずひろ)
沖縄県産本編集者。1963年生まれ、那覇出身。編集者として沖縄の出版社ボーダーインクに勤務しつつ、沖縄関係のコラムをもろもろ執筆。著者に「うっちん党宣言」「道ゆらり」(ボーダーインク刊)など。
ボーダーインクHP:http://www.borderink.com/
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