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「金運のつく松」の話(比嘉淳子)

「金運のつく松」の話(比嘉淳子)
「金運のつく松」の話(比嘉淳子)正月に始まり大晦日に至るまで、年中行事は季節の移ろいの節として生活にリズムを点してくれる。そして節日には、なにかしらの花で彩りを添えるというように、年中行事と植物はリンクしている事が多い。正月の松竹梅、ひな祭りの桃、端午の菖蒲、七夕の竹、重陽の菊という具合にだ。旬の植物に日本古来のしきたりや地域の民話、それに中国の影響が重層的に進化してきたのであろう。

沖縄では、ご当地植物の利用と伝説を合体させた「ムーチー」や「ふちゃぎ」など、とにかく、読み書きが出来なくても、植物と行事の「オモシロエピソード」を張り付ければ口伝で伝わっていく方法だ。
そんな昔人のセンスの良さに感動する。
実はそこに昔人から隠れたメッセージがこめられているかもしれない…。

さて、木で日本の代表といえば「松」があげられる。
なにせ「百木の長」といわれるほど日本全土にまんべんなく行き渡っている木。神を待つ木だから「まつ」というダジャレっぽいところも胸キュンなところである。

「金運のつく松」の話(比嘉淳子)この松だが、私たちの生活に密着した木でもある。海沿いの集落は松林で海風や砂害から家屋を守り、松の枝や葉は松明燃料として利用してきた。

そして、厳寒の時期も青々としていることや風雨に耐える隆々とした幹肌の美しさから不老長寿の願いを重ねるにふさわしく、神と交わる木として、今でもご利益のありそうな木として重宝されている。

そんな神々しさからか、正月になると門松伝いに神が下りて来るとし、降臨してきた神をキャッチした後、高級料亭並みにもてなし、家内年間幸福量の増大を図る作戦に及ぶようになったのだろう。
おせちの出来不出来で幸福量に陰りが出てくるならば腕によりがかかるってもんだ。

そんな松の中に、不老長寿に加えて金運を得意とするものがある。
一般に松葉は2股の葉であるが、時に3股の葉で生えてくる松がある。変異で生じてくる3股葉の松は、そのめずらしさから神聖な葉として「持っていると金運がつく」とかで「金運松」と呼ばれており、主に神社仏閣で管理され各地に点在している。そのなかでも有名なのが、以前精進料理を食べに行って出会った高野山の「3鈷の松」だ。

なんでも、弘法大師が中国から帰国の際、東の海に向かって「私が、漏らす事なく受け継いだ密教を広めるにふさわしい地を教えてくれ」と密教の法具をなげたところ、海を渡りたどり着いたところが高野山で、弘法大師は10年かけてその法具が引っかかっていた木を見つけたという。投げた法具は「3鈷杵」というもので、引っかかっていた木が松だったことから「3鈷の松」と呼ばれるようになったそうだ。この不思議な松には3股の葉が生える事があり、3股葉を拾って財布に入れておくだけで金運がつくと伝わっている。
「金運のつく松」の話(比嘉淳子)
高野山に精進料理を食べにいったついでに、ガイドさんに促されて探したが、落ちている松葉は2股の葉ばかりで3股葉なんてありゃしない。なんだか四つ葉のクローバーを探すようにあっちにウロウロ、こちらでガサガサ、無駄に時間を浪費しただけで、結局自力では発見できず、心の広い外国観光客からいただいた。私の金運なんてこんなもんである…。

ただ、不思議な感じが残ったのは、大勢の老若男女が腰を屈めて黙々と探している様である。変異葉を探して私を含め大の大人が必死な形相である。

3股の松葉を見ながら、自分と重ねてみた。
私なんか、肉親から変人扱いされ続けて幾年。どうも協調性のないところが鼻につくようだ。他人は他人。私は私。己の目標に向かっていけば、他人の速度なんてアウト・オブ・眼中なのがいけないそうで、いわば一族の変異種だそうだ。
しかし、亡き祖母は「それが個性だ」と言ってくれた。

昔人の教えはここにあるのだろうか。
松葉の変異を「金運がつく」というフレーズをいれるだけで付加価値がつく。
「他と違っていいんだよ。」という事だと理解したい。
なんだか、弘法大師さんが「自分らしく生きよ」と、言ってくれたような精進料理食べ歩きの旅だったなぁ。
弘法大師さん、社会科の苦手な私はあなたが空海だった事さえ忘れていました。
しかし、あなたが開拓した高野山はなかなかイケてる場所でした。
密教の修験の場所だということですが、あのおいしい精進料理だけを楽しみにまた行ってもいいですか?
軽い気持ちで高野山参りをする後世人が出たことは、やはり「弘法も筆のあやまり」だろうか。やはり、私は変異種なのである。

不況とか恐慌だとか言われつつ迎えた2009年。
こんな個性の強い年は、100年にあるかないかのラッキーな年でもある。
時代に翻弄される事なく己をもてば、10年後の勝ち組はあなたかもしれない。
「金運のつく松」の話(比嘉淳子)
●比嘉淳子の『ryuQ100花』バックナンバー:
http://ryuq100.ti-da.net/c73394.html

「金運のつく松」の話(比嘉淳子)
プロフィール:比嘉淳子(ひがじゅんこ)

2児の母。すっかり“沖縄のおばぁ”的存在になりつつあるこの頃。
『沖縄オバァ列伝・オバァの喝!』『オジィの逆襲』『沖縄オバァ列伝・オバァの人生指南』(双葉社刊)、『琉球ガーデンBOOK』『よくわかる御願ハンドブック』(ボーダーインク社刊)、『琉球新報・うない』『琉球新報・かふう』のほか、最新刊『沖縄暮らしのしきたり読本』が発売中!



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Posted by ryuQ編集室 at 2009年01月26日   09:00
Comments( 2 ) 琉球百科シリーズ
この記事へのコメント
いい話を読ませてもらいました。これからは松を見る目が変わりそうです(笑)沖縄から身近でなくなりつつある松並木、将来の金運が気がかり・・?
Posted by chura navi~ at 2009年01月27日 21:48
コメントありがとうございます。
未だもって、松を見ると目が皿のようになります。
琉球松街道は、それはそれは立派だったといいます。
松食い虫に抵抗力のある琉球松の研究がすすみ、風流な松並木を自慢できる沖縄にしたいですよね。
Posted by 比嘉淳子 at 2009年02月05日 10:10
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