映画の秋に『沖縄劇映画大全』『アンヤタサ!』ほか

今回は、映画の話。いやもちろん映画にまつわる沖縄県産本のことである。

これは、戦前の黎明期の作品から、戦後、そして現在までの作品を、その内容や監督や出演者など、作品に関する様々なデータを網羅した、〈沖縄映画〉のデータベースとなる本である。それだけでなく、多分初めてだろうが、その戦前戦後、現在までの〈沖縄映画〉の歴史を語る通史「沖縄映画略史」も収録されている。これは略史と銘打っているが力作である。これだけで一冊の本の内容がある。帯の文句にあるように「沖縄映画を論じるための〈基礎〉となる一冊」だと言える。
著者は、岡山在住の映画研究者で、もともとドイツ映画や松田優作などの研究をしていた方。岡山から沖縄に十年通ってまとめた「大全」と銘打つにふさわしい時間が掛かっているのだ。
さて〈沖縄映画〉という定義は難しいのだが、ここでは「何らかの意味で沖縄がテーマや舞台、あるいは物語の背景となっている作品」と、きわめて大きくとらえている。なので、紹介されている作品の数も半端じゃない。多分500ちかくの作品を取り上げている。戦前の作品の多くは現存していないのだが、著者は、当時の模様を語った文献や新聞記事などをもとに推定したり、また幻とされていた作品を発見したりして、よくぞここまで調べたものだと感心するしかない。当然作品の多くは実際著者が観て内容を記述している。そういう意味では、データだけではなく、映画評としても読めるところがまたおもしろい。特に最近の「沖縄映画」に関しての辛口の批評は、ニヤリとさせらた。最近の「沖縄映画」とは……。
〈……ロケは那覇市など沖縄本島中・南部を中心に行われ、それらをつないだ「架空の沖縄」が舞台として設定されている。中心となる役を本土の俳優が演じ、脇に沖縄の役者を配して地元色を出すというやり方も含め、現在の『沖縄映画ブーム』のスタイルを代表する作品だ。〉
これは少し前に公開されたある沖縄映画に対するものだが、こういう風潮の、実は敢えて沖縄を舞台にしないでもいいテーマの映画を、著者は「沖縄映画略史」の中で〈名前のない沖縄〉と述べている。これは映画だけでなく、沖縄を表現する、そして考える上で覚えておきたい視点だろう。
県産本では、映画に関する本というのは少なくて、ニライ社が2001年に出した『アンヤタサ!—戦後・沖縄の映画1945‐1955 』(山里将人著)くらいしかぱっとは思い浮かばない。著者は本職のお医者さんというよりも、熱狂的な映画マニアとして有名だ。戦後の沖縄での映画興行について、びっくり仰天エピソード満載の一冊。一種の戦後沖縄世相史である。「アンヤタサ!」とは、「そうだったな!」という意味。これもまた沖縄で映画を語る上で欠かせない県産本だろう。……実は手にしたことはあっても読んだことなかったのだが、これを機会に俄然読みたくなった本である。最近出たノン・フィクション作家佐野眞一の『沖縄 誰にも書かれたくなかった戦後史』のネタ本のひとつでもあるし。
〈恐らく、沖縄で後にも先にも私ほど長く映画を愛し、映画に関わり、趣味の域を超え、道楽し、持続するつらさ故に楽が欠け、ひたすら無限の「道」を歩み続けた者はいないだろう〉(「あとがき」より)
世相史で思い出したが、1987に出た『戦後おきなわ物価風俗史』(琉球新報社会部編 沖縄出版)の中にも、沖縄の映画館事情が触れられていた。この本は、戦後の沖縄を様々なものの「物価」の変遷を通してみる、という新聞連載をまとめたもの。理容料金、おふろ屋さん、洋裁学校、バス、沖縄ソバ、アイスクリーム、ポークランチョンミート、塩、ステーキ、煙草、コーラ、保育料、プロパンガス、グルクンなどなど、いろんなものが取り上げられている。映画に関しては「貧しい時代のココロの糧」と題して、戦後の最盛期には221館も映画館が沖縄にあった頃の映画料金は「40円」。あっ、単位は「B円」です。ドルの頃は1958年で35セント、67年ころには1ドルだった。ちなみに沖縄そばは、1959年頃で20〜25セントである。
記録に残しておくということは大切なことで、大変なことだなぁと、つれづれなるままに紹介した本をみてそう思った、秋の日でした……。
●新城和博の『ryuQ100冊』バックナンバー:
http://ryuq100.ti-da.net/c73391.html

プロフィール:新城和博(しんじょうかずひろ)
沖縄県産本編集者。1963年生まれ、那覇出身。編集者として沖縄の出版社ボーダーインクに勤務しつつ、沖縄関係のコラムをもろもろ執筆。著者に「うっちん党宣言」「道ゆらり」(ボーダーインク刊)など。
ボーダーインクHP:http://www.borderink.com/

県産本では、映画に関する本というのは少なくて、ニライ社が2001年に出した『アンヤタサ!—戦後・沖縄の映画1945‐1955 』(山里将人著)くらいしかぱっとは思い浮かばない。著者は本職のお医者さんというよりも、熱狂的な映画マニアとして有名だ。戦後の沖縄での映画興行について、びっくり仰天エピソード満載の一冊。一種の戦後沖縄世相史である。「アンヤタサ!」とは、「そうだったな!」という意味。これもまた沖縄で映画を語る上で欠かせない県産本だろう。……実は手にしたことはあっても読んだことなかったのだが、これを機会に俄然読みたくなった本である。最近出たノン・フィクション作家佐野眞一の『沖縄 誰にも書かれたくなかった戦後史』のネタ本のひとつでもあるし。

世相史で思い出したが、1987に出た『戦後おきなわ物価風俗史』(琉球新報社会部編 沖縄出版)の中にも、沖縄の映画館事情が触れられていた。この本は、戦後の沖縄を様々なものの「物価」の変遷を通してみる、という新聞連載をまとめたもの。理容料金、おふろ屋さん、洋裁学校、バス、沖縄ソバ、アイスクリーム、ポークランチョンミート、塩、ステーキ、煙草、コーラ、保育料、プロパンガス、グルクンなどなど、いろんなものが取り上げられている。映画に関しては「貧しい時代のココロの糧」と題して、戦後の最盛期には221館も映画館が沖縄にあった頃の映画料金は「40円」。あっ、単位は「B円」です。ドルの頃は1958年で35セント、67年ころには1ドルだった。ちなみに沖縄そばは、1959年頃で20〜25セントである。
記録に残しておくということは大切なことで、大変なことだなぁと、つれづれなるままに紹介した本をみてそう思った、秋の日でした……。
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