「エンマ様の庭木に“相手を思う樹”を」(比嘉淳子)

5月後半の沖縄はもう梅雨だが、前半のゴールデンウィークは天気にも恵まれ、主婦としては充実した日々を過ごし、たっぷりの充電期間後の初仕事がなぜか「家庭裁判所」訪問である。
(誤解のないように言っておくと、我が家はいたって「円満」であるからご安心を!)
人に頼まれて、ちょっとした届け物を預けに立ち寄ったのだけど、約束の時間より早めに到着したので、せっかくの「家庭裁判所デビュー」に恒例の「世間さまウォッチイングゥ」をしないわけにはいかない。
広い駐車場のサイドに広がる法面には「タイワンレンギョ」で「かていさいばんしょ」と文字が描かれていた。実はこの場所、幼い頃の遊び場だったのである。
実家は背を伸ばすと見えるほどの距離。母がテレビを観ているのがわかるほど近いのだ。
「かあちゃ〜ん」と声を掛けたかったが、何せ「家庭裁判所」にいるのでさすがにやめた。
建物の中は案外明るく受付の女性も感じがいい。
「ふ〜ん、テレビドラマのイメージとは大違いじゃないか」と思いながら勧められるままにパステルカラーのソファーに座った。
しかし、このソファーたちが妙に点在し、不自然な位置に置かれている。
「こんなんじゃぁスペースの無駄でしょ!」とツッコミを入れたくなった。

(「!?」タブン、夫婦か・な?夫婦なのに、遠くの席に座った。)
側のテレビがさっきからずっと同じ番組を放送している。
「調停というものは、離婚、親権、財産の…」と始まり「それが、調停で解決できなければ審判となります。」のような事がずっと流れている。
つまり、大人の喧嘩が、スイミングスクールのクラスのように「めだかさんコース」から始まり「いるかさんコース」に発展し「オリンピック選手養成コース」になるになるのだな。フムフム、と私流に解釈していた。
それからというもの、入場してくる人の顔は鬼のような形相の人たちばかり。一見して親族だなと思われるような“そっくりな人たち”がそれぞれ遠くに分裂して腰掛けているのだ。
道理でソファーの位置関係が多方面に置かれ、不自然だなと思ったわけである。
一般の人々なのに強面の人がドンドン増えてきた。何だかいたたまれない…。
目の前のおじさんが私の隣のほうに居る男性に「えー!いったぁ フラー父ちゃんは?」と言い、その兄さんはギロッと睨み返し「ポッテカおじさんに会わせたくないばぁよー」と、答えた。私を挟んでこの会話である。「ここは、地獄か?!」
裁判所という所は『エンマ様の住処』というイメージが強烈にインプットされてしまった。きっと、2階の各部屋(現場)では怒号が飛び交い、泣き声が響きこの世の地獄絵となっているのだろうな…。
ようやく知人が現れて地獄からは開放されたのだが、彼らから吐き出された「いやぁな感情」に汚染されたようで一刻も早く解毒したかった。

「5月は憲法月間です。身近な人の人権を考えてみませんか」の垂れ幕が悲しい。
歩みを止めて空をみあげると、一面に広がる「相思樹」の黄色。
5月は「相思樹」の季節なのだ。そう「“相手を思う樹”」。
黄色の小さなぽんぽんのような花が、うっすらと甘い香りを漂わせている。
マメ科の「おじぎそう」の仲間である。木ですら「おじぎ」をするのだ!
相手の立場を思いやり、礼を尽くす。そうなれば、閻魔様も暇になるはずだ。
沖縄は「守礼の邦」だった。廉恥を忘れた現代人は一体どこに向かっているのだろう。
「前略 家庭裁判所様へ。
あのタイワンレンギョのそばに「相思樹」を植えてみませんか?
相思樹はマメ科なので、手間は掛かりません。それどころか、
周りの植物に窒素分を与えて共に元気に育っていくのです。
相手の事を思いやる事を忘れた方々にぴったりな木だと思います。
え?そうなると、仕事がなくなるって? 大丈夫ですよ。
じいちゃんが死ぬ時にこう言っていました。
“法律は道徳の延長線上にある”って。
“道徳をしっかり繋いでいけば法律なんていらない”って。
だから、子ども達に道徳を教える場所にすればいいんですよ。
いかがですか? 我ながら良い提案だと思います。」

プロフィール:比嘉淳子(ひがじゅんこ)
2児の母。すっかり“沖縄のおばぁ”的存在になりつつあるこの頃。
『沖縄オバァ列伝・オバァの喝!』『オジィの逆襲』(双葉社刊)、『琉球ガーデンBOOK』『よくわかる御願ハンドブック』(ボーダーインク社刊)、『琉球新報・うない』『琉球新報・かふう』のほか、新刊『沖縄オバァ列伝・オバァの人生指南』(双葉社)が発売中。
あのタイワンレンギョのそばに「相思樹」を植えてみませんか?
相思樹はマメ科なので、手間は掛かりません。それどころか、
周りの植物に窒素分を与えて共に元気に育っていくのです。
相手の事を思いやる事を忘れた方々にぴったりな木だと思います。
え?そうなると、仕事がなくなるって? 大丈夫ですよ。
じいちゃんが死ぬ時にこう言っていました。
“法律は道徳の延長線上にある”って。
“道徳をしっかり繋いでいけば法律なんていらない”って。
だから、子ども達に道徳を教える場所にすればいいんですよ。
いかがですか? 我ながら良い提案だと思います。」

プロフィール:比嘉淳子(ひがじゅんこ)
2児の母。すっかり“沖縄のおばぁ”的存在になりつつあるこの頃。
『沖縄オバァ列伝・オバァの喝!』『オジィの逆襲』(双葉社刊)、『琉球ガーデンBOOK』『よくわかる御願ハンドブック』(ボーダーインク社刊)、『琉球新報・うない』『琉球新報・かふう』のほか、新刊『沖縄オバァ列伝・オバァの人生指南』(双葉社)が発売中。
【ryuQ最新記事】
今月のryuQプレゼント!!
プレゼント情報をもっと見る>>
今月のryuQプレゼント!!
プレゼントの応募は下記の応募フォームからご応募ください。
※酒類のプレゼントへの応募は20歳未満の方はご応募できません。
応募フォームはこちらから
ryuQは携帯からでも閲覧できます!!

ブログランキング【くつろぐ】
ランキングはこちらをクリック!
人気ブログランキング【ブログの殿堂】
にほんブログ村 沖縄情報
この記事へのコメント
久しぶりのブログですね。今回のネタは重い・・
でも、植物と人の道理を結びつけるのはさすがです。これからも頑張ってください。
でも、植物と人の道理を結びつけるのはさすがです。これからも頑張ってください。
Posted by 東京から at 2008年05月26日 17:12
※このブログではブログの持ち主が承認した後、コメントが反映される設定です。
てぃーだな特集新着記事
お気に入り
QRコード

読者登録(更新のお知らせ通知)
アクセスカウンタ
ryuQ特集記事>検索
バックナンバー
ryuQプロフィール
ryuQ編集室
カテゴリー
観光・レジャー (70)
グルメ (29)
ビューティー (6)
アウトドア・スポーツ (3)
エンターテイメント (6)
沖縄の芸能・文化 (36)
ビジネススタイル (1)
暮し生活 (41)
趣味・遊び・お得 (100)
健康・医療 (3)
沖縄の人々 (196)
ペット・アニマル (12)
沖縄の匠 (10)
THE泡盛 (14)
壁紙 (57)
ショップ紹介 (29)
三線 (15)
ECOライフ (8)
戦争と平和 (16)
スピリチュアル (11)
沖縄のスポーツ (11)
CD新譜情報 (35)
映画情報 (23)
南島詩人・平田大一『シマとの対話』 (75)
ryuQ編集部から (4)
琉球百科シリーズ (163)
エイサー (10)
写真でみる沖縄 (7)
新製品情報 (8)
過去記事・月別に表示