ryuQ100味4月号『サングヮチグヮーシの話』

気がつけばもう新年度の4月。去年から始まったたこの琉球百科シリーズも早一年である。ボクが担当しているこのコーナーは年中行事の料理を中心に紹介しているけれど、一年で代表的な年中行事と料理をだいたい紹介してきた。なので、今年度は前年度、行事が重なって紹介できなかった年中行事の料理を中心に、沖縄の旬の食材や季節の料理なども紹介していきたいと思う。
とういわけで、4月である。4月といえば沖縄の三大年中行事の一つであるシーミーであるが、去年、このコーナーの第1回目がシーミーだったのである。というわけで今回は旧暦3月の中でもわりと大きな年中行事の「浜下り(ハマウイ)」を紹介するね。

旧暦3月3日はサングヮチサンニチとも呼ばれ、沖縄では女の子だけに限らず若い娘を中心にすべての女性が、ヨモギ餅や色とりどりのお菓子、ご馳走などを重箱につめて海で楽しく過ごす「女の節句」である。浜辺で身を清めることから「浜下り」ともいわれている。
浜下りの始まりは、その昔、未婚の美しい娘が誰とも知らない美青年と恋におちいり、夜な夜な逢瀬を重ねているうち娘は身ごもってしまう。母親は素性の知らない男の子供を身ごもったことに困り、男の身元を確認するため娘に男と会うときに、麻糸のついた針を着物の袖に刺すよう命じた。
翌朝、母親が麻糸をたどっていくと石垣の穴に突き当たってしまい、その穴をのぞくと中には2匹のアカマタ(蛇)がいて、1匹のアカマタの尻尾には針が突き刺さっていたという。穴の中からは2匹の話し声が聞こえ、針の刺さったアカマタが「自分は人間の美しい娘に自分の子種を宿らせたので、針が抜けなくて苦しみぬいて死んでも悔いはない」といった。
すると別のアカマタが「人間は利口だからヨモギ餅を作って海辺におり、飛んだり跳ねたりして波とたわむれて遊べば、海水に清められてお腹の子種は流されてしまうかも」といった。それを聞いた母親は急いでうちに帰り、娘を連れて海に行き浜に下りると娘の体は小さなアカマタが7匹も出てきて、娘の体は海水に清められ、元の美しい体になったという。その日が旧暦3月3日だったことから、女性はこの日に浜下りをして白い波に足を浸すと災厄が払われるといわれ、浜下りが始まったという。

昔はこの日の重箱にヨモギ餅やサーターアンダギーのような味わいのサングヮチグヮーシ(三月菓子)、落雁のようなコーグヮーシ、赤寒天などのお菓子、小豆ご飯のおにぎりや赤飯のおにぎり、豚肉のごぼう巻きや魚のてんぷら、赤カマボコ、白カマボコ、赤く染めたゆで卵昆布巻き、祝いの席に欠かせない花イカといったご馳走が詰められている。
かつて浜下りは女性が大手を振って楽しく遊べる日で、浜辺で歌って踊って美味しいご馳走を食べて過ごしたという。今では浜下りにドンチャン騒ぎをする女性はいないが(昔からいないけど)、旧暦3月3日前後に家族で潮干狩りやビーチパーリーを楽しむ人がいる。また、座間味島では島の女性たちが船に乗り、島を周遊しながら船のかなで飲んで歌って踊ったりしていて、何らかの形で浜下りの行事は続いているのである。
ボクが小学生のころ、晩年は寝たきりで亡くなってしまったオバアちゃんが、サングヮチサンニチになると必ずサングヮチグヮーシを孫たちに作ってくれた。小麦粉の卵、砂糖を混ぜてよくこねて、細長く気って油で揚げたサングヮチグヮーシは香ばしく、口に入れるとサックリとしてホロッとくだけ、サーターアンダギーとはぜんぜん違う食感と味があった。大人になった今でもたまにサングヮチグヮーシを食べたくなるときが、市販のサングヮチグヮーシは子供のときに食べた味ではないことが多かった。

だからボクはもうあのオバアちゃんの味は食べられないかと思っていたら、ある日、平良とみさんが作ったサングヮチグヮーシを食べたら、ボクのオバアちゃんの作ったものと同じ味がした。それから、昔ながらの味を知っているサングヮチグヮグヮーシを作る人は必ずいるはずだと思い、たまにマチグヮーに出かけて時、サングヮチグヮーシを買ったりしている。まだ、オバアちゃんの味に出会ってことはないけれど、最近のサングヮチグヮーシの中にはチャンと作っているところもある。
また来年の旧暦3月3日にはマチグヮーにいって、たまにはサングヮチグヮーシを食べてみよう。
●嘉手川 学の『ryuQ100味』バックナンバー:
http://ryuq100.ti-da.net/c73393.html

筆者プロフィール:嘉手川 学(かでかわまなぶ)
フリーライター、沖縄県那覇市生まれ。沖縄のタウン誌の草分け『月刊おきなわJOHO』の創刊メンバーとして参画。沖縄ネタならなんでもOKで特に食べ物関係に強い。現在も『月刊おきなわJOHO』で食べ物コーナーを15年以上掲載中。
著書、編著、共著に『沖縄大衆食堂』、『笑う沖縄ごはん』、『泡盛『通』飲読本』(各双葉社)など多数ある。共著で『沖縄離島のナ・ン・ダ』(双葉文庫)と『もっと好きになっちゃった沖縄』(双葉社)、『沖縄食堂』(生活情報センター)が発売中。
ボクが小学生のころ、晩年は寝たきりで亡くなってしまったオバアちゃんが、サングヮチサンニチになると必ずサングヮチグヮーシを孫たちに作ってくれた。小麦粉の卵、砂糖を混ぜてよくこねて、細長く気って油で揚げたサングヮチグヮーシは香ばしく、口に入れるとサックリとしてホロッとくだけ、サーターアンダギーとはぜんぜん違う食感と味があった。大人になった今でもたまにサングヮチグヮーシを食べたくなるときが、市販のサングヮチグヮーシは子供のときに食べた味ではないことが多かった。

だからボクはもうあのオバアちゃんの味は食べられないかと思っていたら、ある日、平良とみさんが作ったサングヮチグヮーシを食べたら、ボクのオバアちゃんの作ったものと同じ味がした。それから、昔ながらの味を知っているサングヮチグヮグヮーシを作る人は必ずいるはずだと思い、たまにマチグヮーに出かけて時、サングヮチグヮーシを買ったりしている。まだ、オバアちゃんの味に出会ってことはないけれど、最近のサングヮチグヮーシの中にはチャンと作っているところもある。
また来年の旧暦3月3日にはマチグヮーにいって、たまにはサングヮチグヮーシを食べてみよう。
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筆者プロフィール:嘉手川 学(かでかわまなぶ)
フリーライター、沖縄県那覇市生まれ。沖縄のタウン誌の草分け『月刊おきなわJOHO』の創刊メンバーとして参画。沖縄ネタならなんでもOKで特に食べ物関係に強い。現在も『月刊おきなわJOHO』で食べ物コーナーを15年以上掲載中。
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