嘉手川学のryuQ100味[11月号]『イナムドゥチ』
![嘉手川学のryuQ100味[11月号]『イナムドゥチ』](http://img01.ti-da.net/usr/ryuq100/ryuq100_c_0711.jpg)
嗚呼、悲しや (旧暦)十月の沖縄行事。私は何を食べればいいのだろう。
気が付いたらもう11月である。季節もいつのまにかフェーヌカジ(南風)からひんやりと冷たいニシカジ(北風)に変わり、朝晩は南国沖縄でもそれなりに涼しくなってきた。
旧暦の10月は神無月と呼ばれるよう、沖縄の神様はもちろん日本全国の神様が出雲国(島根県)に集まるため神事の行事が行われず、庶民にとって楽しみな行事行事のクヮッチー(ご馳走)がないため、食べるものが毎日代わり映えしないことから「アチハティ十月(飽き果て十月)」といわれている。ちなみに日本全国どこでも十月を神無月と呼ぶのに対し、日本中の神々が集まる出雲国では神在月と呼ばれている。十月になると出雲国中神様だらけ、まるで神様の修学旅行や一時的な集団疎開である。神様がいっぱいになることで出雲では道端にボーっと佇む神様がいたり、くだを巻いたり深夜徘徊する神様もいるのである(たぶん)。
そんなわけで、旧暦の十月は年中行事がないため、今月の100味はまったく持って何を紹介すればいいのかまったくわからず、なおかつ、ボクはいったい何を食べればいいのだ。
そう思っていてもしょうがないので、年中行事が本当にないが資料を調べてみた。すると旧暦10月1日(今年は新暦11月10日)の「カママーイ」や旧暦9月から10月の立冬の節にかけて行われる「種子取(タントゥイ)」などがとあることはあったのだが、「カママーイ」は集落ごとに行う防火祈念の行事で、集落のノロと呼ばれる神女が御嶽を巡り火事が出ないよう祈るもの。「種子取」は五穀豊穣を祈願する播種行事で、石垣島や竹富島では伝統芸能などを盛り込んだ盛大なものに対し、沖縄本島では日常的行為を禁止する物忌みの儀礼になっており、歌舞音曲が禁止され特にクヮッチーが出るものではないことがわかった。
やっぱり旧暦の十月は何もないので新暦の11月で考えようっと。
11月といえば首里文化祭や七五三、読谷まつりなどがあるが、なんといってもボクにとって大きなウェイトを占めているのがボクの誕生日である。ボクが子供のころ、誕生日といえばお袋がいつもイナムドゥチを作ってくれた。

イナムドゥチとは琉球王朝時代の宮廷料理の流れを汲む祝い料理の一つで、沖縄では家庭のお祝い事に欠かせない白味噌仕立ての汁物である。塊のまま茹でた豚三枚肉を短冊に切り、シイタケ、カステラカマボコ、コンニャクも短冊に切って、豚の茹で汁と鰹節を合わせた出し汁に一緒に入れてしばらく煮て、たっぷりに白味噌を溶き入れしばらく煮込みとろりと仕上げたものである。かつては猪肉を使っていたことから「イナムドゥチ(猪もどき)」という名がついたといわれている。
今でこそまったく料理を作らなくなってしまったが、ボクのお袋は沖縄料理が上手で、ボクの沖縄料理に対する味のルーツはまさにお袋の味に起因している、といっても過言ではない。その料理上手のお袋が作っていたイナムドゥチは絶品で、ボクは今まで食べたどこの店や料亭、家庭で食べたものよりもお袋の味が一番だと思っている。
その根拠としてボクの兄弟がもちろん、ボクのカアちゃん(女房のことね)や兄嫁たちは実家よりも美味しいと絶賛し、お祝い事でウチにきたお客さんがあまりの美味しさに作り方のレシピを教わることが多々あったからである。また、孫たちにも大好評で「お母さんが作るものより、オバァちゃんのイナムドゥチが美味しい」と食べるたびに言っていた。最近では自力で立てなくなり、食べることだけ専門になったお袋だが、イナムドゥチの味はウチにカアちゃんがちゃんと受け継いでおり、ボクは誕生日のたびに幸せなイナムドゥチ生活を送っている。
ところで、マチグヮーで最近見つけた店だけど、生粋のナーファンチュ(那覇人)の姉妹がやっている「琉球料理おきな」(那覇市松尾2-11-13 TEL.098-867-6078)という、美味しい店を見つけた。そこのイナムドゥチはお袋の味に負けず劣らぬ味わいであった。ボクの親父もお袋も生粋のナーファンチュなので、この店の昔ながらのナーファンチュならではの味わいにボクは感動したのである。
![嘉手川学のryuQ100味[11月号]『イナムドゥチ』](http://img01.ti-da.net/usr/ryuq100/line_520px.gif)
筆者プロフィール:嘉手川 学(かでかわまなぶ)
フリーライター、沖縄県那覇市生まれ。沖縄のタウン誌の草分け『月刊おきなわJOHO』の創刊メンバーとして参画。沖縄ネタならなんでもOKで特に食べ物関係に強い。現在も『月刊おきなわJOHO』で食べ物コーナーを15年以上掲載中。
著書、編著、共著に『沖縄大衆食堂』、『笑う沖縄ごはん』、『泡盛『通』飲読本』(各双葉社)など多数ある。今年になって共著で3月に『沖縄離島のナ・ン・ダ』(双葉文庫)と『もっと好きになっちゃった沖縄』(双葉社)、5月には『沖縄食堂』(生活情報センター)が発売。
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