松竹梅の「竹」のエピソード話『猛々しい竹』

ryuQ編集室

2010年06月28日 09:00


先日、懐かしい顔が集まった会合があった。
「ひさしぶりー」の声の後は、「この前、Aさんのウチに遊びにいったら、すっごい豪邸でサー。庭から玄関まで徒歩5分は掛かるわー。11も部屋があるんだって!」
数人のおばさん(同級生だが)がたむろって噂話をしていた。

Aさんとは、竹馬の友。まさしく、竹馬で遊び、がじゅまるの木の上に秘密基地を作って遊んだ友人だ。セレブになったと風の噂で聞いていたが、こういう会合にはいっさい顔を出さないから、今では幻の友人である。

一般ピーポーなワタクシは、考えた。
“毎朝5分も歩いて新聞を取りに行くなんて、雨の日なんてなおさら嫌になるじゃん。11も部屋があると掃除が大変だし、我が家なんてトイレに玄関も合わせて5LDKだけど1日掛かりよー”と。
「アンタ、あのねー。ちゃんとメイドさんがいるのよ」。
世の中、いろんな生活形態があるようだ。

そういえば、Aさんのおばあさんの家には、大きな竹林があった。
サワサワと葉擦れの音が、外界と結界を張っているような古い家だった。
と、書けば、かっこ良く聞こえるけど、ヤンバルのさらに奥の瓦葺きの古民家だ。そこんちのタケノコは渋くて食べられないから、家族中からブーイングの嵐だったと聞いている。そこで、おばあさんは、梅と松の木を植えたそうだ。

“松竹梅”が揃ったわけである。
玉の輿の主因は、そこだ。と、娘を持つ友人らがにわかに色めき立った。
たぶん、彼女らは娘の輝かしい将来のために松竹梅を集め始めるのだろう。

偶然か、我が家の庭にも松竹梅の三拍子で揃っている。
竹を植える時に、舅が「ダキ イーチョーネー、ヤーワインドー」(竹を植えると家を割るよ)と、大反対した。

しかし、竹の涼しげな姿に憧れていた当時、沖縄の竹というタグのついた竹の苗を買って植えた。
竹の強靭な根がアスファルトさえ割る事は知っていたので、大きな瓶に小さな苗を置いたのだが、2年もしないうちに巨大な竹の鉢植えになってしまい、正直、困った。

「だから言っただろう。竹が魔除けと言われるのは、1日に50cm伸びるほど猛々しく育つからだよ」と、焼き芋をゆし豆腐で胃に落としながら舅は涼しく言い放った。

かつて、竹は草か木かという論争があったそうだ。竹には、木が固くなる物質のリグニンの前駆物質があるそうだ。
タケノコをゆでた時に出るあの白い粉がそうらしい。なので、木かと言えば、木ならば毎年開花するが、竹は滅多に花を咲かせない。では、草かと言えば、花をつけ種をつけて枯死するでもない。
そういう神秘的なところから、かぐや姫や七夕の話が生まれて来たのだろう。

かくいうワタクシも、娘を持つ母親である。娘に玉の輿の主因が揃っている吉事を伝えた。
「七夕の竹ぇ〜? 七夕って、墓掃除じゃなかったっけ?」
我が娘は、タナボタ的な金満生活には興味がないようである。

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プロフィール:比嘉淳子(ひがじゅんこ)

2児の母。すっかり“沖縄のおばぁ”的存在になりつつあるこの頃。
『沖縄オバァ列伝・オバァの喝!』『オジィの逆襲』『沖縄オバァ列伝・オバァの人生指南』(双葉社刊)、『琉球ガーデンBOOK』『よくわかる御願ハンドブック』(ボーダーインク社刊)、『琉球新報・うない』『琉球新報・かふう』のほか、新刊『家族まるごと福お祝いマニュアル』(双葉社刊)が発売中。

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