琉球弧は奄美群島から沖縄の島々まで連なるひとつの文化圏。“琉球弧の島唄”をテーマにした公演が6日(日)14時から国立劇場おきなわで開催されます。注目の出演者のひとりとして、奄美島唄の唄者・朝崎郁恵さんが出演します。心の琴線に触れる“懐かしさ”と“魂の唄”を歌う朝崎郁恵さんの特別インタビューは、
【前編】に引き続き、【後編】をお届けしたいと思います。
——奄美の加計呂麻島のご出身とのことですが、加計呂麻島といえば、今、チップ工場問題が起きているそうですね?
朝崎郁恵:内地から来た企業が島の木を伐採してチップ工場を作るという話があって、それが奄美の、しかも故郷の加計呂麻島の木の伐採の話なので、自分は加計呂麻島の出身だから、なおさら心が痛いというか…。
自然豊かな島でなぜこんな事が起きようとしているのか。“自然を大事にしてほしい”という想いで2月にも帰島したんですよ。そして地元の神社でシマ唄を奉納してきました。それで島の方々にもお話を聞いたりしたんだけども…。
——また最近ではすぐ隣の島の徳之島も、普天間基地移設問題で騒がれたりしていますね。
朝崎郁恵:こうやって琉球弧の奄美群島や沖縄が基地問題で注目されるというのがね、いいことで注目されるのではなくてそういうことなので、なんでだろうかなって…。やはり、心が痛いですね。
——先月には奄美群島(加計呂麻島、徳之島、沖永良部島、与論島)出身のアーティストの皆さんと沖縄で公演されましたし、6日(日)にも琉球弧をテーマにした国立劇場おきなわの公演がこのタイミングとなりましたね。
朝崎郁恵:沖縄や加計呂麻島や徳之島の神々様が上から動かしているのではと思うくらいに、私たちのコンサートが開催されるのも偶然ではなくて、なるべくして動いているんだなと凄く感じますね。
沖縄と奄美は兄弟島ですし、文化的にも距離的にも近くにあって、でもどこか遠いような。
こうやって沖縄で歌わせて頂くことで、もっと手をつなぎあって近くならないかなって思っていたんですね。今回のコンサートでまた近づけると思いますし、こういったことは人間の私たちが繋がり合うことですが、やはり神業あってのことではないかなとも思いますね。以前なら難しかったこともさっと物事が動くので、神様が近づけてくれるようですから、私は自然体で動いていますよ。
私が歌っているシマ唄も神唄だと思っていますので、歌う事で神様も喜んでくださっていると思っているんです。
——島の神様が元気にならなければ、島も人間も守ってもらえない。
朝崎郁恵:こんなに世の中が乱れるのも、ものを壊すのも、みんな人間がやっていることでしょう?
海岸は護岸で美しい浜が失われてしまったり。
6日(日)の国立劇場おきなわ公演でも、『諸鈍長浜』を歌おうと思っているんですけど、諸鈍の浜も今よりも綺麗な浜だったんですね。昔の綺麗な風景はシマ唄の中にだけ残っているんです。
また、琉球舞踊にも『諸鈍』という舞いがあるそうですね。
——その6日(日)の国立劇場おきなわ公演では、八重山民謡の大家・大工哲弘さんとも共演されるそうですね。
朝崎郁恵:大工哲弘さんとは古くからもう何度かご一緒させて頂いているんですよ。そして今回は沖縄の国立劇場で、それもテーマが“琉球弧の島唄”というので、これでまた沖縄と奄美がもっと近づくような気がしています。
——奄美出身で本土在住、そして沖縄で公演というのは、奄美〜沖縄〜本土をつなぐような感じですね。
朝崎郁恵:東京の国立劇場のほうでは昭和59年から10年間出演していたのですが、沖縄の国立劇場で歌うのは今回初めてです。
何年か前に沖縄に来た時に、沖縄にも国立劇場が出来たことを知って、いつかはここでコンサートをしたいと思っていました。そして今回御縁を頂いて、それもタイトルが“琉球弧の島唄”ということで、奄美まで含めた琉球弧の島々が一緒になるので“沖縄から奄美までひとつになる”ことが何より嬉しいですね。
——そして昼の公演ではベテランが、夜の公演では次の世代の若手が演奏されるということで、とても意義のある公演になりそうですね。
朝崎郁恵:琉球諸島で何百年も歌い継がれるシマ唄をそのままにしているのではなくて、若い人たちに繋ぐ試みだそうで、伝える人と、受け継ぐ人ということで、はじめての試みともいえると思います。
次に繋げる機会は必要なので、その機会を作ってくださった国立劇場さんには感謝しています。
——いっぺんに琉球弧の島々のシマ唄を聴くこともできますしね。
朝崎郁恵:そうやって繋いでいくことで、(唄や文化が)なくならないと思いますし、大事なことだと思っています。
アリゲティサマリョウタ。
(※インタビュー【前編】を読む)
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朝崎郁恵公式HP:
http://www.asazakiikue.com/
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6月6日(日)14時~ 国立劇場おきなわ『琉球弧の島唄 音故知新』
奄美伝説の唄者・
朝崎郁恵&八重山民謡の大家・
大工哲弘の夢の饗宴!
http://www.asazakiikue.com/live/2010_okinawalive.html#onkochishin
(取材: 桑村ヒロシ、写真協力: YANTY)