勾玉のようなありがたい花

ryuQ編集室

2010年03月29日 09:00


沖縄の空や海のようなヒスイカズラの「青い花」。背筋が伸びるような、言葉を発してはいけないような神秘さを持つ、なんだか、御利益のありそうな青い花である。

ヒスイカズラは、学名ストロンギロドン・マクロポトリス。ジェイドバインとも呼ぶ。フィリピンのルソン島が原産地だそうだ。マメ科のつる植物で、宝石のヒスイから命名され、現地では絶滅が危惧されているという。

我が家のそれは、5年前に「この花は、沖縄では難しいよ〜。この位の暑さでは咲かないさぁ。プロでも難しいっていうよ〜。温室が必要さぁ。」と、念を押されつつ入手したもの。

小市民に温室など無理な話で、でも、捨てるのも忍びなく庭の片隅に放置しておいた。すると、温室育ちは軟弱になるということを物語るように、その強靭な根は、いつの間にか鉢を割り、雨樋を支柱にどんどんテリトリーを伸ばし、とうとう2階に到着した辺りで花を咲かせた。

「なんも難しくないじゃん。」率直な感想だった。
多分、すぐに迫るアスファルトや近隣建物のコンクリートからの輻射熱が熱帯の故郷を想わせたのだろう。
アスファルト地獄の意外な功名かもしれない。

よくみると、この花色、青というより夜明け前の蒼に近い。花軸や花柄の紫のグラディーションは、暗闇を追いやるように昇る光に似ている。

熱帯の花は、香りの強い花を咲かせる事が多い。鼻を近づけてみた。特に香りは感じられない。古い葉軸から伸びだした花軸は、うなだれるように、恥じらうようにたくさんの勾玉のような蕾みをたわわにつけている。

ヒスイも勾玉も幸せを運ぶアイテムだそうだ。巣立ちの春に咲くこの花のように、羽ばたき始めた若者達に幸せがたわわに実るように願ってやまない。

比嘉淳子の『ryuQ100花』バックナンバー:
http://ryuq100.ti-da.net/c73394.html


プロフィール:比嘉淳子(ひがじゅんこ)

2児の母。すっかり“沖縄のおばぁ”的存在になりつつあるこの頃。
『沖縄オバァ列伝・オバァの喝!』『オジィの逆襲』『沖縄オバァ列伝・オバァの人生指南』(双葉社刊)、『琉球ガーデンBOOK』『よくわかる御願ハンドブック』(ボーダーインク社刊)、『琉球新報・うない』『琉球新報・かふう』のほか、新刊『家族まるごと福お祝いマニュアル』(双葉社刊)が発売中。

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