前川守賢デビュー30周年記念インタビュー【前編】

ryuQ編集室

2010年03月18日 09:00


県民的人気民謡歌手“元ちゃん”こと前川守賢さん(50歳)。みんなに親しまれている『かなさんどー』でデビューして30年、『これからも かなさんどー』を30周年リサイタルの日(3/23)にニューリリースします。“かなさんどー”の言葉へ込めた深い意味を、元ちゃんご本人から教えて頂きました。

——30周年おめでとうございます。30年を振り返ってみていかがですか?

前川守賢:年齢としてはS35年生なので50歳なのですが、何を基準に30周年というのかが一番気になるかと思うんですけども、私の場合は、21歳の時の作品で『かなさんどー』のデビュー作から30周年なんです。

デビュー当時は、ちょうどレコードからCDに切り替わる頃の時代で、レコード盤では最後の頃でしたね。45回転のレコードでドーナツ盤と言われていましたよ。
レコードでは私が一番最後の頃('80年代)で、新しい唄として同世代の若者にもヒットして、ヤング民謡とも呼ばれていました。

また若い人たちだけでなく、年輩の方々にも受け入れて頂いていました。県民の誰もがこの唄を親しんでくださいましたね。もちろん今もずっと歌い続けています。

——唄も県民には馴染み深い唄ですし、“元ちゃん”(前川守賢さん)もまた、県民の誰からも親しまれている民謡歌手ですよね。

前川守賢:漫談師で歌手の前川守康を父に、旧正月に生まれたので若い頃から“元ちゃん”と呼ばれ、みなさんに親しんで頂いています。

ヒットした曲で“この人”ってありますよね。例えば、他の唄者さんでは“田場盛信さんといえば『島の女』”とか。
“元ちゃんといえば『かなさんどー』”。何十年経っても変わらない。デビュー曲でもある『かなさんどー』は、生涯歌っていく唄でしょう。

——元ちゃんの『かなさんどー』をはじめ、お馴染みの曲がいっぱい詰まったオリジナル工工四も発売されましたね。

前川守賢:工工四はこれまでも世の中にたくさん出てきていますが、沖縄民謡歌手・前川守賢作品のオリジナル工工四としてはこれが初となります。30周年を迎えるにあたっての集大成ともいえますね。

——この工工四集の前書きにも『かなさんどー』の歌詞のサビ部分について触れられていますね。
「忘しんなよ〜や〜、忘んなよ〜。我ね思とんど〜、かなさんど〜」の意味、実は深い言葉でもあるのではと思うのですが。ぜひ教えて頂けますか?


前川守賢:直訳すると、“かなさん”は可愛いとか愛おしいですが、“かなさん”に“ど〜”をセットで付け加えたんです。“あなたに”と。

——そして感謝も込めて。

前川守賢:そうですね。感謝も込めて。
「世間の皆さんから“かなさーされなさい”(愛されなさい)」と若い頃からよく言われていました。
「先輩方からも可愛がられるように努力しなさいよ。いつであっても自惚れちゃいけないよ」ということでもありますよね。それくらいに意味合いが深い言葉でもあります。

親であれば子供を目に入れてもいたくないくらいに愛おしい。さらにおじいちゃん、おばあちゃんになると、その愛情がもっと深くなりますよね。

また、友人に使う時もありますよ。
「かなさぐとぅるゆんどぉ」(僕は君を“かなさ”だからこそ言うんだよ)とか、思いやるからこそあえて言うという時とかにも、かなさという言葉を使いますね。

だから大好きな言葉ですね。この言葉にこだわりを持っています。

——それでニューアルバムのタイトルも『これからも かなさんどー』なのですね!

前川守賢:はい。「これから“も”」なんですよ。

で、“かなさー”というのは人だけじゃないんですよね。たとえば、自分の生まれた故郷、育った場所、島、など。
仕事などで、島を離れて都会へ出て行くと、故郷への愛おしさがよく分かるよね。“島がなさ”といいます。

故郷を離れてよく分かる親の気持ちとか、“肝がなさ”ともいいますよね。
ですから、“かなさ”のテーマは大きいですね。

——“かなさ”は“こころ”でもあるんですね。

前川守賢:そうです。いわゆる“心”にあるものなんですよ。心そのものです。胸の中にあるハート(心)ですね。

——その心のこもったニューアルバムがもうすぐ発売ということですね。

前川守賢:はい。来る3月23日(火)に『あしびなー』(沖縄市)にて、『元ちゃんと楽しい仲間』というコンサートが開催されるのですが、その日に発売となります!

——30周年も迎えられて、これからの前川守賢さんは。

前川守賢:僕にとって30年というのは大きいですね。同じ空気を吸った大先輩の嘉手苅林昌先生、小浜守栄先生、喜納昌栄先生、玉城安定先生、そして今もお元気な登川誠仁先生など、先輩たちが言っていた言葉を最近思い出したり。そうやって、先輩たちから頂いたものを繰り返しながら“伝”という、後輩たちに継続していくことですね。そしてお客さんにもCDやコンサートで唄を手渡ししていくこと。それが『これからも かなさんどー』の心です。(つづく)

(取材: 桑村ヒロシ)

関連記事