8度目の「しまほん聴かんかねー」
「県産本がやってきた、ヤァ、ヤァ、ヤァ!」とは、第11回を迎えた「沖縄県産本フェア」の今年のキャッチコピーである。リマスター版で何かと話題の、あのバンドにひっかけたものだ(パクリとも言うが…)。誰が呼んだか、沖縄の出版社が刊行した書籍のことを「県産本」として、年に一度この時期にどーんとブックフェアを開催している。
今年は初めての試みとして、いつも行われているリウボウブックセンター・リブロの他に、沖縄本島中部うるま市は、大城書店石川店、八重山は石垣のタウンパル山田と、3カ所での同時開催と相成った。あなたの街に県産本がやってきた! という意気込みで「ヤァ、ヤァ、ヤァ!」なのである。
県産本フェアでは、基本的に版元自らが書店にたくさんの自社書籍を搬入して展示する。ということは、つまり地産地消のファーマーズ・マーケットみたいなものだ。
このフェアでは毎年様々なイベントも開催するのだが、恒例となっているのが、沖縄県内のテレビ・ラジオ局のアナウンサー、パーソナリティによる県産本の朗読会である。「しまほん聴かんかねー」として2001年からスタートして今年で8回目('03年はお休み)となる。「しまほん」とは、要は「県産本」のことです。プロの読み手が、それぞれのチョイスに基づいた県産本を朗読してお客さんに県産本の魅力、バリエーションを楽しんでもらう企画である。これまでのべ42人のアナウンサーたちが参加してくれた。今年もまたあらたに5人の方が朗読してくれる。今その準備でワタクシらは、パタパタしている真っ最中なのだ。
今年は、これまで「しまほん聴かんかねー」で読まれた本をリブロで展示している。エッセイ、詩集、絵本、小説、ノン・フィクションとジャンルは様々で、沖縄の本といっても実に様々だなと眺めてみるのもなかなか楽しい。民話と沖縄戦、そしてウチナーグチに関する本はだいたい毎年読まれている。沖縄県産本のひとつの傾向というのが浮かび上がってくるだろう。
同じ本が読まれることもある。沖縄文化社の『沖縄昔ばなしの世界』(石川きよ子著)、沖縄タイムス社の『浮世真ん中』(上原直彦著)と『うちなーぐちフィーリング』(儀間進著 これはシリーズものということだが)。作家では、このコラムの第一回に紹介した故・船越義彰さんの作品がよく登場する。『きじむなー物語』(那覇出版社)、『おきなわの路面電車』(ニライ社)、『琉歌・恋歌の情景』。
またアナウンサーの方も何度か参加してくれた人がいる。
一人は諸見里杉子さん(フリー)。彼女は日頃から朗読会を開くなどして、実に聞き応えのある朗読である。『戦争と平和のはざまで』(ひめゆり同窓会相思樹会編 若夏社)、『はなうる』(第一回おきなわ文学賞受賞作品集より)、『琉歌・恋歌の情景』。杉ちゃん、独特のタメのある朗読は、機会があればぜひ聴いてほしい。
そしてもう一人。実は8回中、実に7回参加している方がいる。比嘉雅人さん(琉球朝日放送。第二回目までは琉球放送)である。一度の欠席は朗読会直前に骨折したため、というから、実質皆勤賞だ。僕らは彼のことを「ミスター・県産本朗読会」と読んでいる。毎回趣向を凝らした演出があって、今年はなんと朗読のみならず楽器演奏もするのである。まさに必聴。
ちなみに朗読した本は以下の通り。『沖縄国際通り物語』(大濱聡著 ゆい出版)、『戦後沖縄の新聞人』(真久田巧著 沖縄タイムス社)『組踊りの世界』(勝連繁雄著 ゆい出版)、『おきなわデータ算歩』(沖縄タイムス社)、『窓をあければ』(ボーダーインク)、『おきなわの路面電車』(船越義彰著 ニライ社)、『希望の大地で』(ニライ社)、『忘れ得ぬ人々』(沖縄タイムス社)。
今年は10月5日月曜日、つまりこのコラムがアップされる日が朗読会である。とりあえず間に合えばダッシュで会場であるリウボウホールへお越し下さい。午後5時半開場、6時スタート、もちろん無料です。今年は、大城蘭さん(琉球放送)、宮田隆太郎さん(ラジオ沖縄 二回目)、玉城乃野(FM沖縄・フリー)、前仲美由紀さん(フリー)、そして比嘉雅人さんといったメンバーです。
朗読会聴いて、「県産本、ゲットだぜ!」(ラジオ・コマーシャルより)
●新城和博の『ryuQ100冊』バックナンバー:
http://ryuq100.ti-da.net/c73391.html
プロフィール:新城和博(しんじょうかずひろ)
沖縄県産本編集者。1963年生まれ、那覇出身。編集者として沖縄の出版社ボーダーインクに勤務しつつ、沖縄関係のコラムをもろもろ執筆。著者に「うっちん党宣言」「道ゆらり」(ボーダーインク刊)など。
ボーダーインクHP:http://www.borderink.com/
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