「正月かぎやで風」(島唄解説・小浜司)

ryuQ編集室

2009年01月12日 09:00


あけましておめでとうございます。島唄解説の小浜司です。今回は正月ということもあり、「正月かぎやで風」を取り上げます。

「正月かぎやで風」
(マルタカレコード TJ-43)

このレコードはSP盤をEP盤に復刻したもの。曲が6曲も収録されていて、ポツリとB面の1曲目にというか、B面の4曲が一鎖のように繋がっているのですが、最初にやはり「かぎやで風」となっていて、恩納節、中城はんた前節、渡りジョウ・江差節という風に歌われている。歌詞(琉歌)も正月にふさわしいめでたい内容となっている。序でながら、A面には繁昌節と稲摺節が収録されていて、歌・三線に船越キヨ、マンドリン・囃子に前川朝昭、囃子・糸数カメ、そして太鼓に嘉手苅林昌と今から考えると涎が出てきそうなメンバーだ。

さて、B面ですが、ここにも嘉手苅林昌参加していまして、マルタカでは珍しく歌(ヴォーカル)を担当しているので、やはりレアものといわざるを得ないでしょう。3人の合唱(もちろんモノラル録音)ですが、嘉手苅林昌の声が目立っている。正月には良い一枚かもしれない。


「正月かぎやで風」歌・演奏=ゴモングループ
(ゴモンレコード GS-2)

沖縄にはそれこそ沢山の古典音楽研究所や民謡研究所があるのですが、新年の弾き初めには必ずと言って良いほどこの歌が歌われるはずなのですが、最近ではそうでもないようで、良いか悪いのかはよく分からないが、見本となる音源が少ないように感じる。形式的にするというよりも気を引き締めるということで、やはり一年の初めにはこの歌、この歌詞から始めるとしゃきっとするような気になるものですがいかがでしょうか。

ところで上のマルタカ盤もこのゴモン盤も歌詞を間違えているのが気になるので訂正して少し解説を加えたい。

マルタカの歌詞;あらたまる年に たんと くーぶかざて
         心からしがた 若くなゆさ
ゴモンの歌詞 ;新たまる年に 炭と昆布飾て
         心から姿 わかくなゆさ

どちらも、あらたまる年と書かれているが、「あらたまの年」が正しいといえよう。あらたまとは掘り出された、まだ加工されていない玉のことで、新玉と当てる人もいるみたいだけど、ひらがなの方が良いのかもしれない。「あらたまの」とは年、月、春のどの枕詞で心が改まるわけである。昆布はよろこぶと掛けて縁起をかついでいる。炭と昆布で、たんと喜ぶという語に引っ掛けている。新年になると、炭と昆布を飾って、たんと喜ぶという縁起を祝って気持ちを新たにして、心も姿も若返る気がする。

まあせめて正月だけでも気持ちを新たにして心を若返らせたいものですね、今年もよろしくお願いいたします。

小浜 司の『ryuQ100歌』バックナンバー:
http://ryuq100.ti-da.net/c73392.html


筆者プロフィール:小浜 司(こはま つかさ)
沖縄県国頭郡本部町出身。幼少期を那覇市で過ごし、中学以降宜野湾市に遊ぶ。大学卒業後ヤマトへ。季節工などの底辺労働に従事しながら、アメリカ、東南アジア、中国、アラブの国々を旅する。沖縄に帰り、クリーニング屋の経営をしながら大城美佐子や嘉手苅林昌のリサイタルなどをプロデュース。「風狂歌人」(嘉手苅林昌)や「絹糸声」(大城美佐子)など沖縄音楽CDを多数製作。2002年、国際通りに島唄カフェまるみかなーを開く。2004年沖縄音楽デジタル販売協同組合に参画しインターネット三線教室を始める。2006年、拠点を壺宮通り(那覇市寄宮)移し、島唄カフェいーやーぐゎーを開店。沖縄音楽の音源や映像の楽しめる店として好評を博している。
島唄カフェいーやーぐゎーHPhttp://www.ryucom.ne.jp/users/iyagwa/

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