厳選・沖縄音楽(6月号)「古典の心」「大浜みね独唱歌集」

ryuQ編集室

2008年06月09日 09:00


今回は私が復刻を望む2枚のアルバム、すなわち、安富祖竹久の「古典の心」と大浜みねの「大浜みね独唱歌集」を紹介したい。

安富祖竹久「古典の心」
(RBCレコード RML-1004 1970年)

2007年、私は金武良仁全曲集「名人の呼吸が聴こえる」という二枚盤復刻CDアルバムをプロデュースした。SP盤レコードを蓄音機で再生させ、録音した。三線の抑揚と声の抑揚とのバランスの微妙さが実にすばらしく、まさに名人の呼吸というものはこういうものだと感動した。

安富祖竹久(1915〜1990)のアルバム「古典の心」はどうしても復刻してもらいたい一枚だ。古典音楽のことをいろいろ書くと、ボロが出そうなので少し控えて、とにかくゆったりとした中でも音が全くぶれない。それは当たり前なのでありますが、普通のぶれなかたではない。低音も高音も限界がないように余裕で発声する。1970年の録音というからまあ絶頂期の録音といってもいいのかもしれない。その後野村流古典音楽保存会会長に就任し、名人ぶりを発揮したことはあえて説明の必要なないでしょう。

とにかくここに名人芸の足跡があり、これを鑑賞できるのだから、その復刻は少なくとも私は待望して久しい。


'76民謡大賞受賞記念「大浜みね独唱歌集」
(マルフクレコード F-34 1976)

八重山民謡の女性歌手といえば、真っ先に大浜みねの名前が浮かぶ。八重山古典民謡の最大の功労者で夫の故大浜安伴を影で支えながら女性歌手の手本として歌い続けてきた、大浜みねのこれまた絶頂期のアルバムがそれである。

1969年、NHKのど自慢コンクールで日本一になった宮良康正の囃子を受け持ち、全国的にも注目された。そして76年、民謡大賞を受賞し、その年に記念公演も行っている。このアルバムはどこをとってもどこから聴いてもすばらしいのだ。とばらーま、つぃんだら、でんさー、脂が乗り切っているというのはこいうアイテムにいうのだろうと聴くたびに感動している。本当にレコードもジャケットもテカテカに光っているように見えるから不思議だ。

希望的結論からいうと、復刻されることなく、自分ひとりだけでイヒヒと聴いておきたいアルバムだが、しかし沖縄音楽の財産として大浜みねの全音源といわないまでも、せめてこのアルバムは復刻してもらいたいものだ。
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筆者プロフィール:小浜 司(こはま つかさ)
沖縄県国頭郡本部町出身。幼少期を那覇市で過ごし、中学以降宜野湾市に遊ぶ。大学卒業後ヤマトへ。季節工などの底辺労働に従事しながら、アメリカ、東南アジア、中国、アラブの国々を旅する。沖縄に帰り、クリーニング屋の経営をしながら大城美佐子や嘉手苅林昌のリサイタルなどをプロデュース。「風狂歌人」(嘉手苅林昌)や「絹糸声」(大城美佐子)など沖縄音楽CDを多数製作。2002年、国際通りに島唄カフェまるみかなーを開く。2004年沖縄音楽デジタル販売協同組合に参画しインターネット三線教室を始める。2006年、拠点を壺宮通り(那覇市寄宮)移し、島唄カフェいーやーぐゎーを開店。沖縄音楽の音源や映像の楽しめる店として好評を博している。
島唄カフェいーやーぐゎーHPhttp://www.ryucom.ne.jp/users/iyagwa/

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