チュラマナ・インタビュー

ryuQ編集室

2007年06月08日 00:00


チュラ=内面の美しさ(沖縄)、マナ=すべてのものに宿る魂(ハワイ)をユニット名にしたチュラマナは、石垣島出身の歌手・宮良牧子、ハワイ系のシンガー・上原まき、TINGARAでお馴染みの三線プレイヤー・ゲレン大嶋、そしてハワイアンギターの名手・山内雄喜の4人による楽園のような音楽。2ndアルバム『楽園の虹』をリリースして間もないチュラマナの宮良牧子さんとゲレン大嶋さんに、楽園音楽の秘密を伺ってみました。

——人々に身近に親しまれる2つの島、沖縄とハワイ。そのエッセンスが融合して、まるで楽園が地上に降りてきたような極上の音楽が“チュラマナ”ですが、そもそもこの4人がいっしょにやっていくことになったキッカケなどから教えて頂けますか?

宮良牧子:ハワイ系音楽の上原まきちゃんとはそれぞれ音楽活動をしてきて、以前から時々は私のライブに彼女が踊ってくれたりもした事はあったんですが、昨年の1月にあるイベントで一緒にジョイントライブをすることになり、二人で声を重ねる機会があったんですね。

ゲレン大嶋:そこにディレクターが、僕の三線を入れることになったら何か生まれて面白いことになるだろうと、沖縄系の宮良牧子の声に三線。さらにはハワイ系の上原まきの歌にはスラッキーギターの名手・山内雄喜さんのこの4人の組み合わせで一緒にやることで、きっと気持ち良い音楽になるだろうって。
その話は一気に進み、さっそくスタジオでセッションすることになって、僕が曲を持って行きマッキー(宮良牧子)には詩をつけてもらって、その日に録ったマッキーの歌があまりにも見事だったんですね。
その時、「あぁ、この4人で音を出したら他には無い味わいの音になって、やっぱりいいね」ってみんなが確信して、その最初に録った歌はファーストテイクのまま1stアルバムの中に収録されたほど。

山内さんも「ハワイのスラッキーギターと沖縄の三線が合うだろうとは思っていたけど、本当にこんなに合うとは!」って笑いながらスタジオのブースから出てきてくれたんですけど、あぁ、これはいい音楽が生まれるなぁって、その瞬間に思いました。
ほかの曲もそのまま雪崩込むように一気にレコーディングしていきましたね。

宮良牧子:おおまかに決まっていたのはコードと構成くらいで、ファーストセッションがそのままパッケージ化されたのが1stアルバムだったんですね。

——このチュラマナの音楽の心地良さはそこにも理由があったんですね?

宮良牧子:気持ちいい音なのは、それぞれがバラバラに録ったんではなくて、空気感までぜんぶ一緒に録っていったからこそだと思うんですよ。

ゲレン大嶋:山内さんなんて、いきなりその場で僕に曲を聴かされてもすぐにパッて弾いてしまうわけで、マッキーなんかもそこでギターの音が入るのは初めてのことだったんですが、その音の出会いがまた音楽の醍醐味なんじゃないのかなと。
今では細かいところを徹底的に直すのは簡単な時代ですが、あえてそういうこともせず、ほぼ一発録りに近いかたちで、何より空気感をまず大事にしました。

——そうやって、“チュラマナ”が誕生していったのですが、沖縄のチュラ(美しい)とハワイのマナ(魂)をユニット名にしたのは?

ゲレン大嶋:ハワイのマナというのは、沖縄のおばあが「塵の中にも魂が籠もっている」というような万物に宿る魂のことをさしているんですけど、それこそ、宮良牧子と上原まきの出会いも魂の結びつきとも言える必然なものかもしれなくて。

宮良牧子:よく2人で言っているんですけど、まったく違う場所にいながら、同じ時に同じ歌を口ずさんでいたりとか、そういうことも多いんですけど、何よりも一番の共通点は名前なんですね。
実は、上原まきの本名は私と同じ“牧子”で、漢字まで一緒なんですよ。

ゲレン大嶋:僕からみても、この2人は運命的に引き寄せられたと感じるところはありますね。山内さんも“この2人の出会いは凄いよね”ってよく言っているし。

——もしかしたらツイン・ソウルかもしれませんね。
チュラマナの“チュラ”が“内面の美しさ”を表しているように、音楽もまた表面的な美しさでなく、もっと内側からくるものを感じるのですが


ゲレン大嶋:楽園っていうのはイマジネーションだと思うんですよ。例えば、旅人にとっては石垣島は楽園かもしれないけど、石垣島の人にとっては生まれた時からその美しい海が当たり前にありすぎて楽園とは思っていないかもしれないですよね。だから、楽園が内側から作り出すイマジネーションだとすれば、どこでも楽園にできるわけだし。

そういう意味では、チュラマナは沖縄音楽とハワイ音楽をやってきた4人というだけにわかりやすそうな楽園をイメージされるかもしれないけど、“もっと想像力の中の楽園”といいますか。
例えば、ジョン・レノンの名曲『イマジン』が“イマジネーションを働かせれば平和な世界を造ることができる”みたいなことを歌っていて感謝しているんですけど、それに近いかもしれませんね。

はじまりはイマジネーションでも、そのイマジネーションがあって初めて具体化していけるのが人間の凄いところであって、チュラマナの音楽の隠しテーマはそういうところなんです。

宮良牧子:ぜんぜん、隠していないし(笑)。

ゲレン大嶋:音楽は五感を刺激するものですけど、チュラマナの音楽も五感ぜんぶで楽しんでみてください。

——ヴォーカル2人の声質がそれぞれ違うところがまた特徴的でもありますよね

宮良牧子:2人とも声がぜんぜん違うので、最初は合うのかなぁ?って想像がつかなかったんですけど、最初のジョイントライブをやった時なんて、とっても気持ち良かったんですよね。

ゲレン大嶋:マッキーの歌は大地の香りがするし(笑)。

宮良牧子:まきちゃんの歌はふんわりと天から降りてくるような歌声だし。

ゲレン大嶋:今回のアルバムでは、沖縄民謡の『♪安里屋ユンタ』を上原まきが歌ったり、またハワイの曲を宮良牧子が歌ったりと。

宮良牧子:それぞれの音楽をリスペクトしているからこそ、というか。

——お互いが、“それぞれの島に遊びにきました”という感じがしますね。
それから、1曲目の『♪ヒイラヴェ 〜 赤田首里殿内』は、同じリズムの中で2つの伝統曲が重なっていって面白いですね


宮良牧子:まきちゃんが『ヒイラヴェ』を口ずさみながら、「このリズムに合う沖縄の曲はない?」っていうことになって。でも、一緒に歩いていた場所が渋谷だったんですけどね(笑)。
「それだったら『赤田首里殿内』が合うんじゃないかな」って。

ゲレン大嶋:2人のアイデアで面白い作りになっていますから聴いてみてくださいね。

——この1曲目がチュラマナを象徴しているようなんですよね。無理矢理溶け込ませるようなことはなく、原形を留めながら重なっていくところが

ゲレン大嶋:そう言って頂けると嬉しいですね。というのはこの曲を1曲目にもってくるのには実はかなりドキドキしたんですよ。

宮良牧子:私はすっごい面白いと思っていたんですけど、ゲレンさんのほうがこの曲順にするのには慎重でしたね(笑)。

——収録されたハワイ音楽のほうはトラディッショナルな伝統曲もありますね

ゲレン大嶋:2曲目の『♪アロハ・オエ』は最後の女王・リリオカラニが作った曲といわれるものですね。それこそハワイ版の『♪花』ともいえるかもしれません。

——チュラマナとしてのオリジナル曲もぜひご紹介ください

ゲレン大嶋:今作品では3曲収録されています。宮良牧子、上原まき、そして僕、とそれぞれが1曲ずつ作りました。3曲目の『♪美らマナ』は沖縄の曲のようでもありハワイの曲のようでもあり、ようはこの2人(マッキーとまき)がそのイメージなんですよ。歌と踊りが最後にはひとつになるというか。
宮良牧子、上原まきにしか歌えない、チュラマナでしか表現できない作品です。

それから、今回は、ブラジル音楽も表現したり、イマジネーションの話もそうですが、世界を拡げてみました。
あと、音的なことで言うと、ストリングスが入っていたりとか、ちょっとゴージャスな音にもなっていて、けれどシンプルな音の作りの曲と並んでいても違和感が無いというか。

宮良牧子:4人が集まれば“チュラマナ・ソングになる”というのがありますね。

ゲレン大嶋:それぞれ音の幅は広いんですけど、どこを切ってもちゃんとチュラマナになっているというか。

——そのチュラマナの音楽を通して、何を伝えていきたいですか?

宮良牧子:島々が育んできたもの。例えば、自然だったりとか、人を大事にすることだったりとか、親を敬う気持ちだったりとか、その背景は沖縄でもハワイでも同じだと思うんですよ。
そういったものを大事にしつつ、イマジネーションも拡げつつやっていけたらいいなと思っています。
その中で感じてもらえるものがあったら嬉しいなって思っています。

ゲレン大嶋:聴く人のそれぞれの楽園を感じてもらえたらいいなって思っています。
例えば、チュラマナの音楽を聴いて「あぁ、今、ここが楽園なんだ!」って感じてもらえたら嬉しいですけど、僕らとしては“どうぞご自由にイマジネーションを楽しんでください”と思っています。

(文+撮影:KUWAこと桑村ヒロシ)

※ライブスケジュールなどは公式サイトにて(♪試聴もできます):
http://www.jvcmusic.co.jp/churamana/
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