世界遺産・中城グスク『わかてだ祭』(中城村/北中城村)

ryuQ編集室

2007年12月28日 00:00


古来、琉球の先人たちは冬至の日を冬至正月(トゥンジーショウグヮチ)と呼び、その翌朝には新しい太陽「若太陽=わかてぃだ」が「てだがあな=太陽の穴」から生まれ出るとして、現在の正月と同じくらい大きな行事として=生まれたての太陽を祝い讃える=「てだがあな」行事を行っていたそうです。

沖縄の有名な古謡集「おもろそうし」にも「てだがあな」は歌われ、太陽の活力やその魅力は大きく伝えられています。

しかし、長い間この行事は途絶えていました。

そこで、先人達に学び、この素晴らしい「てだがあな」行事を復活させようと中城村と北中城村では、東り太陽(あがいてぃだ)を拝むには最適な高台にあり、今も久高島や首里への遥拝所など8つの拝所の聖域としても重要な役割を持つ世界遺産中城城跡を発展的に活用して、伝統行事を復活。冬至の翌日の日の出をみんなで祝おうと、今年で10回目を迎えました。

例年なら沖縄でも寒い日が続くころ頃ですが、今年はとてもおだやかで温く、早朝の気温も20度近くあったことで出かけやすかったという声も。
まだうす暗い時間から大勢集まりました。

地元の中城、北中城村はじめ、宜野湾市、北谷町、遠くは読谷村からなど、ご夫婦やお子さんと一緒のご家族、友達同士で誘いあってきたかたなどたくさんの方々が会場の中城城跡・三の郭前広場に集まりました。

広場には特設ステージが組まれ、日の出を待ちながら祝いの宴がまだ薄暗い7時前からスタート。

ライトアップされた中城城壁の前で古典音楽斉唱や太鼓演武などが披露され幻想的なムードを楽しみ、また広場に特別に用意された1456年鋳造というペリー提督ゆかりの大聖禅寺の鐘を参加者が次々と打ち鳴らし、平和への祈りを込めて大空へ響かせました。

この日(23日)の日の出時刻は7時13分。

やや雲が広がる中、空がじょじょに明るくなり、もしかすると太陽の輪郭は雲に隠れたままになるかもと、せっかくの機会を楽しみに来た人たちが固唾をのみながら空をみつめていると、オレンジ色にまぶしい輝く太陽がゆっくりと姿をみせました。

参加者たちからは安堵のため息や「綺麗だねぇ」「観にきて清々しい気分になった」など喜びの声が飛び交い、記念写真など撮って若太陽を拝めたことを喜び合いました。

会場では、今回の来場を機会に中城城跡について知ってもらおうと、ボランティアガイドによる場内歴史解説巡りも行われ、中城城を築いた琉球歴史に活躍した按司・誤佐丸についてや、城の独特な造りなどの説明に耳を傾けながら興味深く参加者たちはゆっくり散策も楽しみました。

また今年は記念すべき10回目の節目を記念して中城城をテーマにした「第1回琉歌中城グスク大賞」も行われ、受賞作品の発表、表彰も行われました。

大賞を受賞したのは中城村の源河史都子さんの作品。

「幾世ひざみても 石積みや残て 世界に鳴響まれる 我村ぐすく」


源河さんは琉歌の趣味は10年以上のキャリアがあり、県内では他地域でも優秀な作品を詠でんで選ばれてきたベテランながら「今回は特に自分住む村がテーマで選ばれたことがとても嬉しく今後の励みになる」と喜びも一入の様子でした。

ステージでは地域に伝わる伝統芸能の獅子舞や無形文化財の伊集のターファークーも披露され、新しい太陽を祝う宴は遅くまで賑わいました。

古琉球の歴史を尊び、太陽に感謝する大事な思いを受け継ぎ中城城跡の歴史とともに、
「わかてだ祭」は地域とともにますます発展し親しまれる行事となっていくことでしょう。

もうすぐ新年ですね。
初日の出を見に出かけるかたも多いでしょう。

太陽に感謝する沖縄の心をどうぞ感じていただけたらと思ます。

良い新年を皆様もお迎えくださいませ。

(文: 吉澤直美、撮影+編集: KUWA)

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