現代版組踊『燃ゆる首里城』

ryuQ編集室

2007年10月25日 00:00


人って誰かの為に役に立つことで、喜びと愛のパワーを発揮する生き物なのかもしれない。
と、この夏に行われた那覇市青少年舞台プログラム『現代版組踊・燃ゆる首里城〜龍の球伝説と未来からの使者〜』の舞台に立つ子ども達をみてそう思った。

物語の中で1人の主人公・空(そら)がその体験をするのだけど、しだいに観ているこちら側もそれを疑似体験するかのように、ふだんの生活の中で、自分や家族のためだけに頑張っている“私”とまるで重なってゆくかのようで。
「でも、人ってみんなで“いっしょに生きている”んだよね」って子ども達が舞台で精一杯表現してくれている。

那覇市の文化振興基本計画に基づき、実施されている演劇を中心としたワークショップであるという『那覇市青少年舞台プログラム』というのは、それに自分で気づくことが出来るための第一歩のよう。

2年前にスタートしたこのプログラムは、演出した平田大一氏(那覇市芸術監督)の指導のもと、その翌年には首里の『綾門大綱引復興・ゆいフェスティバル』や『世界のウチナーンチュ世界大会』のイベントに出演を重ね、今年は本番を前に平田大一氏の南島詩人舞台にも出演し、計10回に渡って様々なプログラムを経験してきた。そしてその集大成が現代版組踊『燃ゆる首里城〜龍の球伝説と未来からの使者〜』となった。舞台にあがるのは那覇市内の小中高の各校から参加する99名の子ども達。

そしてその『燃ゆる首里城』の物語とは、フィクションを通り越す想像力で舞台が展開してゆく。

第3代・尚真王(第2尚氏王統)の時代に時空を飛び越え、沖縄に伝わる羽衣伝説の天女は宇宙からの使者であったとの設定で、
また実際の王府の史書には、尚真王の第2夫人はその天女の娘と書き残されている部分とも絡めながら。

そして宇宙空間をくぐり抜けてこの沖縄(琉球)にいったい何を求めてきたのかというと、中国に伝わる龍の球伝説まで登場する。

昔々、この琉球とは中国の人からみて宝珠をかかえた龍体で、その如意玉の宝珠を巡って異星人までがこの琉球に飛来してきたのではという大スペクタル。
(そしてその時、琉球(古琉球)の人々は…?)

それはまるで琉球の古層にアクセスし魂が動かされたかのような、とても思いつきで出来上がったものではないような、ファンタジーを超えた想像力。

「自分の書いた脚本を超えてメッセージを伝える力というのを子ども達が出してくれた」とは、脚本家の鍵山直子さん。
そう、その“想像を超えた創造”とは子ども達が発揮したものでもあったのです。

「ただの一次元の紙から、こうやって飛び越えて、子ども達が成し遂げたということに、書いた者としては喜びだし、またそれを受け止めてくださる人たちがたくさん生まれたということが嬉しいですね」と鍵山さん。

またお客さんからも、
「尚真王の事とか、羽衣伝説とか、今の子ども達に舞台を通してわかりやすく教えているから、これをきっかけに琉球の歴史にも興味持ってもらえそうですね」とコメントしてくださったのは、姪っ子さんの舞台を楽しみに来られたという金城Hさん(八重瀬町から)。

出演した子ども達からも、
A.Tさん(参加者/那覇国際高):「私達の舞台はこれからさらに進化を遂げたいと思います。今私達の目標である首里城公演を夢に“那覇の船”は今出航しました。私も、那覇と共に成長していきたいと思います。“空”は無限。最高の仲間達と共に、私の中の無限の力を信じます!」と主演を務めた一人の少女の発言には無限大の可能性が秘められているようです。

J.Tさん(参加者/那覇高):「自分たちの成果が今回出せたので良かった。これからは、この舞台を通して“何を学んだか”というのを一人一人が考えて、それを舞台からお客さんにもっと明確に伝えてゆきたいですね」と、もう次に向けての意気込みを話す高校生。那覇の未来は明るいぞと感じさせてくれる頼もしさ。

M.Sさん(参加者/小禄高):「今まで練習ではみんながぶつかり合うことも多かったんですけど、その分、本番を無事に迎えられた事と多くの人に観に来てもらえたことが一番の感動です。この舞台を通して伝えたいことは、那覇の街にもこんなに元気な子ども達がいるんだということを伝えたいですね」と、街で暮らす子ども達の感性もこんなにも豊かなんだと、自分たちの可能性に限りがないことをまず自分たちがしっかりと実感した様子。

そしてこの舞台を演出した平田大一氏は、
「舞台はいつもポイントが2つあって、ひとつは出演してくださった人の達成感(感動)。もうひとつはいかに人に集まってもらうかというのがあるんですけど、両方とも頑張ってくれたところが、那覇はやはり底力のある街だなと思ったし、都会だといわれながらも意外に下町っぽい雰囲気もあったり、地域力があるんじゃないかなと思いましたね。今回の舞台で3年目という節目を迎えるんですけど、また継続させてゆくためにも、子ども達や親御さん達と市の文化行政のみなさんとでいい形に出来ればと思っています」とのこと。

そしてこの感動プロジェクトはここでこのままでは終わりません。まだまだ続いています。
本日、那覇市青少年舞台プログラムは、
「沖縄の戦争体験を次の世代にどう継いでゆくのか」というテーマで、那覇の子ども達が舞台で表現します。

那覇平和芸術祭2007『那覇センセイション 〜語り継ぐ平和の詩〜』
総合演出:平田大一、出演:那覇市青少年舞台プログラム
10/25(木)パレット市民劇場 18:30開場、19:00開演/入場無料
※当日は開場と同時に満席になる恐れがありますので、早めのご来場をオススメします。
※念のため、ハンカチかポケットティッシュをご持参ください。出演者は観客を泣かせる気だそうです。

(取材協力: TAOファクトリー、那覇市文化振興課)
(文: 桑村ヒロシ、写真: KUWA+P2)

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