66年ぶりに復活! じのーん大綱

ryuQ編集室

2007年08月02日 00:00


「ハーイヤ!」「ハルヤイ!」「ハーイヤ!」「ハルヤイ!」と
天高く復活の喜びの声届けとばかりに、大きな威勢のいい掛け声が響き、
66年ぶりに宜野湾「じのーん大綱引き」が復活!
7月29日(日)に沖縄国際大学グランドで盛大に行われました。

かつて戦前までは、宜野湾市内では14カ所の字(あざ)で綱引きが行われていました。

中でも今回66年ぶりに復活となった「字 宜野湾」では、旧暦6月15日か25日に「六月ウユミ」の行事に「綱引き拝み」があり「宜野湾馬場」で綱引きを行っていたのですが、戦争激化のため昭和16年(1941年)から伝統行事であった綱引きも途絶えてしまい、その馬場も集落のあった場所も現在は普天間基地として接収されてしまったままです。

その頃を知る年輩の方々や字誌などの記録によれば、宜野湾市内の「綱引き」の中でもとりわけ勇壮さで人気があったというのが「字 宜野湾」の綱引き。
勝負後に行われる「戻り綱(ムルイヂナ)」と呼ばれる勝ったほうがその勝綱を高らかに担ぎ上げ、蛇行させながら馬場を駆けめぐる様は勇ましさや迫力に特徴があり、宜野湾市内だけでなく近隣地域でも評判の綱引きだったのだそうです。

昨年(2006年)3月に行われた宜野湾市の創作市民劇「じのーん産泉(ウブガー)」公演の際、
この途絶えていた「じのーん(字 宜野湾)の綱引き」の場面が登場し、当時を偲ぶ想いがつのり、また素晴らしい地域の伝統ある歴史を途絶えたままにせず、実際に復活させ継承しようと地域住民の声が高まり、復活することになったのでした。

その市民劇で登場した綱は劇用のカヤでつくったレプリカ。本物の綱を復活製作のため、藁は伊芸(金武町)のものを取り寄せ、雌雄綱はそれぞれ長さ30M、太さ直径約40cmのものが完成しました。
また、「字 宜野湾」の大事な神様(現在は普天間基地内にあり普段は入ることが出来ない4つの拝所・御嶽)に、地区代表者が復活への取り組み、成功への祈願、土地守りへの感謝を祈願し、綱作りも神聖に執り行ったのでした。

そして綱引き当日、まだまだ日差しもまぶしい夕方午後6:30より、前村渠(メーンダカリ)と後村渠(クシンダカリ)の2つの地区に雌、雄各綱は担がれ、ホラ貝、チジン、ドラ、などの鳴り物の音を先導に響かせながら沖国大駐車場から一般道を練り歩く道ジュネー(グラウンドまで約620m)。

綱パレードで復活の喜びを披露し、地区住民の一致意団結、意気を高揚させ入場のセレモニーでスタート。

大勢の観客も詰めかけ、開会式、ガーエー(旗頭の演舞、勢いの高まりの競い合いの棒チケー)、空手演舞披露など勝負前の祝い演舞が行われ、いよいよ綱を雌雄合わせての勝負へ。

「じのーん綱引き」の大きな特徴は、誰でも参加して一緒に綱をひくことができるとあって、観客の大人も子どもも自由に綱をもって積極的に大勢が両サイドに加勢参加。

雌雄綱の先頭には「支度(したく)」という代表者が各々に乗ったまま向き合い気勢をあげるところもまた特徴的。
そうやって両綱がカヌチ(貫抜)棒でつながり、しっかりと綱が1本に結合となって地面についた瞬間を合図に、勝負がスタートしました!

じのーん綱引きは、待った無しの1本勝負!
両サイドは加勢の一般参加者と声を合わせて力強く一斉に引き合い、なかなか譲らず大勝負で熱戦となり、大歓声の中、審判の勝負合った!の合図で終了。

66年ぶり復活した勝負の綱引きは「前村渠」が戦前の結果に続き、勝ちを決めました!

そしてすぐに「前村渠」チームは、宜野湾ならではの「戻り綱」である勝ち綱を息も荒いうちに全員で持ちあげてグラウンドを駆け回り誇り高い勝ちを披露! 観客からも大拍手が送られました。

また、一部の綱を燃やす「カナチ焼き」の儀式も行われました。これは厄払いの意味もあるようですが、郷友会のかたのお話では、元々、松明の灯りの中で行われていた綱引き行事であった為、ヒーヌケーシ(火の返し)の意味合いもあったのではというコメントも。

勝負後は、前村渠も後村渠もみんな一緒になって、昔のようにシュニンモーアシビー(諸人 毛遊び)で唄三線で余興を楽しみ、宜野湾地区独特の婦人部の伝承踊りサングワチャーの貴重な演舞披露や、じのーんイキガー(宜野湾地区の男性)ならではの特徴ある舞方(メーカタ)で復活と無事勝負の行われた喜びの踊りが披露され、会場内は綱引き後も熱気一杯!

会場で見学していた人達の多くが、
「復活が嬉しい」「宜野湾の綱引きを初めて観た」「昔を思い出す」など、各々に感激の夜となり、また、沖縄各地で行われる綱引きでは、勝負後の勝ち綱を切り分けて一部を家に持ち帰りお守りにする風習があり、66年ぶりに復活した「じのーん綱引き」の勝ち綱も縁起ものとして切り取りお守りにしようとする人達がたくさん綱に集まって談笑しながら分け合っていました。

「区民のみんなが喜んでくれたので、今まで準備してきた8カ月の苦労が報われました」と、字宜野湾郷友会副会長の宮城政一さん。

月が美しく輝く明かりの下、皮肉にも米軍基地に奪われかつて綱引きをしていた馬場と集落だった現在の普天間基地の真横に所在する沖国大グラウンドは66年ぶりの復活の喜びの感激で賑やかに盛り上がりました。

祝・66年ぶりの復活・じのーん大綱!
地域の大切な伝統文化が甦ったあとも、これからまた次の代へと脈々と継承されてゆかれる事でしょう。

(文:吉澤直美、編集: KUWA、写真: KUWA&P2)

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