シマとの対話~第II章(第21話)『偕楽(かいらく)』…

ryuQ編集室

2010年09月21日 09:00


南島詩人・平田大一の“今この瞬間”に綴り出される詩、そしてそれに呼応するような1枚写真とのコラボレーションでお届けする連載『シマとの対話』。第II章を好評連載中!(毎月中旬更新)


第II章(第21話)『偕楽(かいらく)』



「他島(たしま)に行くのは、後世(ぐそー)に行くより難さーる」
というのは亡くなった祖母の言葉だった。
曰く「隣の島は、あの世より遠い」ということである。

近くて遠い島「多良間島」に渡ったのは
「八月踊り」という400年近い伝統を誇る祭りを観るためだ。

宮古島と石垣島の中間の海に浮かぶ「多良間島」。
人口約1500人、島の周囲約26キロの小さな島で
行われる祭り「八月踊り」は年に一度の島の人たちの楽しみだ。

「とにかく、一度は観ておいたほうがいい!」
と友人、知人から誘われていたのであるが
タイミングが合わなかったのか
自分アンテナにキャッチできなかったのか
41年間…ことごとくその機会を失っていた。

旧暦の8月8日から3日間にわたり
「字仲筋」「字塩川」の二つの村で行われるこの祭り
獅子舞い、棒術、若衆舞踊、二才舞踊、狂言に加えて
3時間に及ぶ超大作組踊「忠孝婦人」をふくめた4作品。
全編通した演目披露が一日約9時間から11時間掛けて
絶え間なく演じられ続けていくのである。

勝手のわからない初日。
「字仲筋」の演目を観ながらの自問自答…
「いつ終わるのだ~」
「なぜ、大騒ぎする子ども達を誰も注意しないのだ~」
「誰も舞台に集中しないで酒を酌み交わしているのは何故だ~」
「こんなに騒々しい中で延々と演じ続ける演者たちの気持ちはどうなんだ~」

腰が痛い
お尻が痛い
足がつる~
睡魔との闘い~
風がなくて暑い~

窮屈で熱中症ギリギリの状態での
苛酷ともいえる11時間。
演じるほうも観るほうも
長距離マラソン…否!
鉄人レーストライアスロンの如く体力で
これを乗り越えていく…

汗びっしょりの中、
いつしか僕もその仲間の一人になり
最後の獅子舞いの獅子の間抜けな演技に大笑い
総引きと呼ばれるカーテンコールで踊る
全出演者の笑顔に熱くこみ上げる思いがあった。

何故か涙が溢れてくる。

トランペットスピーカーから流れる
トーガニーアヤグに見送られながらの島の道
とぼとぼ…帰りながら色々考えた。

気がついたら観客全員で舞台の最後を喜び合い
幼い子ども達は思いおもいにシャッターを押して
汗びっしょりの身体に吹く島の夜風が心地いい

帰り道…
出演者として踊ったであろう学校の先生と生徒だろうか
じゃれ合いながら踊りの手ほどきを生徒から教わっている

島の長老達は孫の頑張りに目を細め
狂言でフリムン(道化師)役を演じた親の子は
誇らしげに親の真似をしては周囲の観客を沸かしている。
腰の痛みをさすりながら泥のようにベッドに横になった。

翌日「字塩川」の拝所での二日目の祭り
隣に座った教育長の豊見山氏が上機嫌な顔で僕にこう言った。

「あはは~、お尻痛いでしょ!腰も!足も!
 でもね、平田さん、見てごらん~この会場。
 舞台がメインじゃないんですよー、この祭りは~
 この雰囲気!この雰囲気!
 これが、最高のこの祭りの『肝』なんだよー!」

大人も
子どもも
学校の先生も
生徒も
おじいちゃんも
おばあちゃんも
旅人も
島人も
赤ちゃんも
お母さんも
舞台を真ん中にぐるりとそのままある世界。

会場に掲げられた看板に書いてある
「偕楽」の2文字。
「皆で作り上げ、皆で楽しむ」その言葉の通り島宇宙は永遠だ。

思いがけず声を掛けられ最後の総引きでの飛び入り出演!
拍手と指笛の中また来年もこのトライアスロンな祭りに
帰って来ようと決めている自分がいる。

お尻に優しい敷物と
ビールを持って。


                (南島詩人/平田大一)


10/2 「シマとの対話」イベントをガンガラーの谷で開催!

前回も大好評だった『写真+朗読セッションin洞窟カフェ』が
再び!南城市ガンガラーの谷『ケイブカフェ』で開催されます。

現在連載中の『シマとの対話』の世界観を、
著者である平田大一(南島詩人)、桑村ヒロシ(写真)が自ら表現!

読書の秋に、天然洞窟のガンガラーの谷が舞台となって、
トークライブ+フォトムービー+朗読セッションという形式でお贈りします。
ぜひ、遊びにいらしてください!

・日時:2010年10月2日(土)
 18時半開場 19時開演
・会場:ガンガラーの谷 ケイブカフェ
    (南城市玉城前川202番地/おきなわワールド隣)
・ガンガラーの谷HP(地図あり):
 http://www.gangala.com/
・出演:平田大一、桑村ヒロシ
・入場:1000円(小学生以下無料)
・予約:098-948-4192(ガンガラーの谷)
・主催:ryuQ
    (てぃーだブログ公式Webマガジン)
(ケイブカフェで同時開催中の写真展『シマとの対話2010』は、10月2日まで無料開催中です!)

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