南島詩人・平田大一:シマとの対話・第8話『咆哮』
〜沖縄の過去と未来について考えるとき、僕はシマと対話する。シマとは、僕にとって老賢者のような存在〜
南島詩人・演出家として活躍する平田大一。県内外を縦横無尽に走り抜け、骨太な活動を続ける日々の中で、思索の森を歩き、刻む、真実の言葉たち。
『シマとの対話』第8話(毎週水曜日更新)
月に吼える。
獅子、大地踏みしめて。
光る風に舞うが如く。
宙(そら)に向かって獅子
「時代」への咆哮を放て。
今の沖縄に、今のこの国に感じるんだ「危機感」。
「島人よ、近ごろお前は、その生き方が、小さくなっていないか?」
800校近い学校を公演して気がついた。
踊らない先生の多いこと! 威張る先生の多いこと!
恫喝が全てだと思い込んでいる先生の多いこと!
テレビの中。
司会のお笑い芸人に頭を叩かれニヤニヤ笑う「音楽家」達。
誰の為の歌か不在のまま「愛」を歌う「シゴト」。
来年には、忘れられていく「うた」を不本意に謳いあげる「シゴト」。
ドラマの舞台となった島がモテハヤサレル時代だ。
テレビに取り上げられた「モノ」に人が群がり
「モノ」の良し悪しに関係なく誰かの感覚に同調していく
安易な流れに人が群がる時代だ。
嗚呼!
現代(いま)と言う「時代」に疑問を感じず
胡座(あぐら)をかいて、座している「若きおきなわ」よ。
座したその基(した)にあるのは「古の島人たち」が、
先人達が築き上げてきた「魂の軌跡」!
我等はその上にただ、現世(いま)を生きているだけだ。
嗚呼!
古の島人のような「生命力」が欲しい!
自問自答の夜、繰り返される夜の、夜の底。
心の暗雲、眠れずに、明け方まだ暗い島の道。
強く吹く北風に向かって、ゆっくりと歩く。
西の空に大きな丸い月、その前を低い雲が駆け抜けて行く。
電線がひゅうッと鳴き、キビ畑にざらざらッと風が吹き抜け
僕の中の黒い雲を吹き飛ばし、蹴散らしていく。
僕にとって「文化」は癒しではない!
趣味ではない。余暇ではない。
心が奮えるが如くの「檄文」でその人の心を「変化」させる
まさに「文で化する力」なのだ。
情熱のマグマ滔々と流れる大河を渡る、
大いなる精神(こころ)の旅のド真ん中に立つ勢いそのままに!
独り月に吼える!
「前略 南のシマジマ」
この旅の終わりは、新しき道の始まり。
新たな終わりと、古きモノの始まりの瞬間(とき)。
島人よ!ダイナミックに生きよ。
もっと、もっと、雄々しく生きよ。
あの鷲の如く、海を渡る蝶の如く。
新たな夢の産声に吼えるあの獅子の如く!
南島詩人 平田大一
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Profile:
平田大一(ひらた・だいいち)
南島詩人・演出家・那覇市芸術監督
1968年11月7日沖縄県竹富町小浜(こはま)島生まれ。
進学先の東京で、アートユニット「I・N・U」に参加、自作の詩を朗読する舞台活動を開始。卒業後は生まれ島「小浜」に戻り、アーティストへの楽曲・詩の提供、実家の民宿を拠点に「キビ刈り援農塾」をスタートさせるなど、地域と文化に根ざした幅広い活動を行う。
2000年から与勝地域の子供達による現代版組踊『肝高の阿麻和利』の演出を手がける。
2005年3月に勝連町・きむたかホール館長を卒業、4月11日に有限責任中間法人TAO Factoryを立ち上げ、代表理事に就任。同年、那覇市芸術監督に就任。
うるま市、浦添市、八重山、金武町、那覇市、5つの地域の子供たちのための舞台を手がけるほか、毎年、新作舞台を精力的に制作。沖縄県内はもとより、県外、国外にも支持者を増やしている。
代表作に現代版組踊『肝高の阿麻和利』、現代版組踊『大航海レキオス』など多数。著書は詩集『南島詩人』、『歩く詩人』(冨多喜創)。
・平田大一ブログ『シマとの対話』:
http://hiratadaiichi.ti-da.net/
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