2008年05月01日
対談『風に聞いた話 〜竜宮(りゅうきゅう)の記憶〜』

宜野湾にあるCAFE UNIZON(カフェ ユニゾン)の店主でもあり作家で編集者の三枝克之氏と、沖縄をリードする南方写真師の垂見健吾氏の二人による沖縄の季節ごとの“風”をテーマにしたタイトル『風に聞いた話 〜竜宮(りゅうきゅう)の記憶〜』(角川書店)がリリースされ、今注目されています。
沖縄の母なる風土・神話をモチーフに三枝氏が連ねた21話のストーリーと、自然や文化の風景を写す垂見氏の写真。そして三枝氏の総合的視点で構成されたこちらの本が出来上がったいきさつを伺いました。
——この『風に聞いた話』は、どういうきっかけで出来たのでしょうか?
三枝克之:角川書店の『野性時代』が一時休刊して新創刊した時に、編集長も沖縄が好きな方なので“沖縄の事を何かやりたいんだけど”という希望がありました。
ちょうど引っ越してきたばかりだったので、沖縄の事は知らなかったのですぐには取り掛かれなかったのですが、僕が本を作るのは“自分が物を知るための方法論”であって、知っているから作るのではなく、知らないから作るんです。
自分が興味持った世界のことを勉強し、読者にも知って欲しいという想いで編集し作り上げていくので、そういう形であれば作れるかもしれないと思ったんです。

僕はちょうど移住ブームの頃に越してきたらしいんですが、僕自身はそういうのは知らなくて、子供の頃から母の生まり島(うまりじま)である沖永良部の原風景を見ていたので、洗骨を覚えていたり。イノー(サンゴ礁に囲まれた浅い海・礁池)で遊んだり、と、そういうものを体験したくて来たので、当時あったような沖縄を紹介する本とは違うものを作りたいな、という事は思っていました。
——“風”をテーマにしようと思ったのはいつ頃ですか?
三枝克之:引っ越して感じたのは風が気持ち良い島だな、というのをまず感じたので、割とはじめの頃から“風を語り部にしたらいいのかな”と思っていました。
——実際にはどんな風にして作り上げたのでしょうか。
三枝克之:『野性時代』で連載していたものを基本にプラスしていったのがこの本なんですが、一つ一つ歩いて話しを集めてというのは無理なので、そこは割り切って文献を読みながら自分が長老か何かになった気分で、自分なら神話や伝説をどう伝えられるかな、というスタンスで書いていきました。あえて創作というほどの事はしていませんが、自分なりにアレンジしたりということは随所にしています。
——写真はどうやってセレクトされたのでしょうか。
垂見健吾:2年の連載が終了して本を作る時に三枝さんからリクエストがあって、連載とはまた違う写真が欲しい、と。そこで僕が沖縄に通い始めてから36年くらいになるんですが、撮りためたストックの中から、こんな物語だからこんな雰囲気の写真が欲しい、と三枝さんに言われた内容をベースに自分なりに検討し、ストーリーに合う写真をセレクションしていったんです。
使わなくて埋もれている写真がまだまだ沢山あるので再び陽の目を浴びて表に出てくるというのは、写真を撮ってる者としては非常に嬉しいですね。

——本では嘉手苅林昌さんの写真など、貴重な写真も紹介されていますね…。
垂見健吾:そういった方たちと交流ができたのも今では貴重な体験でした。また、もちろん行ってない場所もありますが、特に僕は布に関していえば、以前、澤地久枝さんと『琉球布紀行』という本で布を求めて島々を歩きました。
沖縄には今でも貴重な布がたくさんあって、琉球の織りと染めは工芸の中でも特に素晴らしいものだと思うんですよね。
表紙や扉の布は、八重山上布作家の新垣幸子さんという方の作品なんですが、表紙は三枝さんも「これがいい」と言ってくれて、宮古出身の宮川隆さんのデザインでこんな素敵な本になりました。

そして、ここの展示(写真展は〜5月6日(火・祝)まで開催中)をするにも「風を感じられるようにしたいね」ということで、麻の布にプリントし、風で揺れるような展示にしたんです。
——そしてマット紙の紙質がステキでお洒落な本ですね。垂見健吾:三枝さんが作る本はお洒落ですよ。書くもの・編集の力は素晴らしいし、僕は大好きなんです。
三枝克之:いや…僕もそうですが、垂見さんは沖縄に来る物書きやカメラマンにとっては憧れの人、じゃないですか。だから沢山、写真を使わせてもらいました。
垂見健吾:そんなことないですよ〜。ただ写真やってるおじぃなのに〜。

本は琉球の布を表紙と扉に、21話・各章につけられた風をはじめとした季節時候についての話、そして神話が描かれ、章の最後には文中キーワードとなる言葉について解説された辞典ページから構成されている。
大きいサイズだけでも150枚。小さいものもカウントしたら…何枚?
ふんだんに使われている垂見氏の写真。本当に贅沢な書籍です。
また表紙や裏表紙の見返し、と呼ばれる表紙の裏側には見慣れたアングルとは違う地図が描かれている。風や波が太平洋から琉球にどんな流れでたどり着いたか…扉を開けると海原の写真…。そして最後はどこに? 装丁も含め、表紙から裏表紙まで、じっくりと沖縄の風が感じられる作りとなっている。
さまざまな場所を歩いてきた二人だからこそ、表面だけではなく、より深く体で感じた沖縄を表現しクリエイターとして仕掛けていくことができるのでしょう。
三枝氏は、自分が勉強したいから本を作る、と言いました。自分を、沖縄を知ることを「根っ子を掘り起こしてゆく作業」と言う風に表現していたのが印象的でした。
●『風に聞いた話 〜竜宮(りゅうきゅう)の記憶〜』
編・文:三枝克之
写真:垂見健吾
デザイン:宮川隆
出版社:角川書店
▽2008年3月26日発売 ▽2400円(税別) ▽ISBN978-4-04-883995-2 C0072
▽A5判変型/240ページ/オールカラー/上製本カバーつき
[各プロフィール]
●垂見健吾(たるみけんご):南方写真師
桑沢デザイン研究所で学んだ後、写真家・山田脩二氏に師事。文藝春秋写真部を経てフリーランスに。共著『沖縄いろいろ事典』(編・ナイチャーズ/新潮社)、『神々の食』(文・池澤夏樹/文春文庫)他、多数。他に『琉球布紀行』(新潮文庫)、『なんくるなく、ない』(著・よしもとばなな/新潮文庫)等でも写真を担当。
●三枝克之(みえだかつゆき):作家、編集者。
レコード会社・出版社勤務を経てフリーランスのプロデュース・著作業。主な企画編集作品『空の名前』『宙の名前』『色の名前』三部作(角川書店)、『初恋』(著・中原みすず/リトルモア)、著書に『旅のカケラ パリ*コラージュ』『恋ノウタ』(角川書店)、『月のオデッセイ』(リトルモア)など。2003年〜沖縄県在住。宜野湾市にて“ カフェユニゾン”経営、亜熱帯性エキゾチカバンド“ 南国ドロップス” の作詞やプロデュースも手掛ける。またJTAの機内誌『コーラルウェイ』特集ページの取材執筆なども。
●宮川隆(みやがわたかし):デザイン
宮古島出身。書籍などのデザインを多く手掛ける。近年やっと絵を画き始め、仲篠正義らから高く評価されている。次回、カフェユニゾンで展示予定。
●CAFE UNIZON(カフェ ユニゾン)
沖縄県宜野湾市新城2-39-8 MIX life-style 2F
11:30-22:00 定休 火曜日
TEL:098-896-1060 / FAX:098-096-1090
mail:info@cafe-unizon.jp
URL:http://www.cafe-unizon.jp
(取材: YANTY藤原、製作+編集: KUWA)
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