2008年03月17日
旧歴2月で唯一クヮッチーが、彼岸のクヮッチーだ

3月は沖縄でクヮッチーを食べるチャンスが少ない。年中行事といえるものがないわけではないが、旧暦の2月は集落単位や地域単位の大きな行事や屋敷の願い事などをして、大々的のクヮッチーを作って神様を迎えるという行事ではないからである。主な3月(旧暦2月)の沖縄の年中行事といえば「ヤシチヌウガン(屋敷の御願)」。旧暦の2月と8月の吉日(新暦だと3月11日と9月3日から数日間)に行われる行事で、自分の住んでいる屋敷の土地神様を廻り、家内安全を感謝し、家族の健康と子孫繁栄、円満な生活を願うもの。この日は朝から敷地内や屋内を掃き清め、果物や御米、御酒などをビンシーと呼ばれる小型の祭祀用具入れ、いわば携帯用御願セットと一緒に持って屋敷の四隅や井戸、玄関、便所、屋敷の中央を祈っておしまい。とくにクヮッチーなど準備せず、昼食や夕食は普段食べているメニューが食卓に並ぶだけである。
また、旧暦2月15日(3月22日)は「二月ウマチー」があるけど、穂が順調に実ることを願ってお酒を仏壇やヒヌカンに備えて五穀豊穣を願い、収穫のための物忌みを行いこれといったクヮッチーもなく、賑やかな「六月ウマチー」に比べると、どちらかといえば地味な行事である。あまつさえ、二月ウマチーそのものがない地域もある。
地味な行事といえば、旧暦の2月から4月のかけて「クシユクイ」という行事もなかなか地味な行事である。クスユクイには「腰憩い」の漢字が当てられ、もともとは田植えや種まきなど主要作物の植付けや収穫といった大きな農作業を終え、村中が申し合わせて慰労をかねて一日を休養日に当てることいっており、かつては唄三線を楽しんで豪農から酒やクヮッチーがふるまわれたという。近年では田植えだけではなく、サトウキビの収穫後に行ったりするが、今では、生活の多様化で農村部が一斉に休むこともなく、酒をふるまわれることもなくなった。が、会社単位や家族単位でこの時期に、慰労会を行ったり仏壇に手を合わたりするという。
他にも、主に旧暦2月に行われる「シマクサラシ」という行事は、集落に疫病やヤナムン、マジムン、魑魅魍魎といった悪いもの入らないように、アッチの世界とこっちの世界とに境界線を引く行事である。
都市部では行われないが牛や豚、ヤギや鶏などの生贄の血をススキや木の枝、縄などになすりつけ門や屋敷の四隅に差し、集落への出入り口には贄の骨をぶら下げ、いわば結界を張って悪霊や流行病を集落に入れないフーチゲーシ(悪霊を追い返す)の行事である。アッチとこっちの見えない世界の戦いのとき、やっぱり家庭ではクヮッチーは出ないのである。
そんなわけで、旧暦2月はあまりクヮッチーとは縁がないと思っていたら、ボクがいつも参考にしている渡久地初美著の「沖縄の祭祀と行事料理」を見ていると、旧暦2月ではなく、新暦の3月にクヮッチーを食べる行事、お彼岸があったのである。

考えてみたら毎年、お彼岸になるとウチのカァちゃんとこの母親の実家に親戚が集まり、クヮッチーを食べていたのである。あまり旧暦ばかりとらわれていたから思わず見逃すとこれであった。沖縄のお彼岸は春と秋の年2回あり、春分の日と秋分の日を中心に前後3日間のうちに都合のいい日に各家庭で行われている。本土のようにお寺に行ったりお墓参りをしたりという仏教の行事というより、沖縄固有の祖先崇拝の行事になっている。クヮッチーを仏壇の前に供えて、家族揃ってトートーメー(位牌)にウートートー(祈り)して、それから食事となる。大人はビールや泡盛、子供たちはソフトドリンクなどを好きなものを飲みながら、彼岸のクヮッチーをいただくのである。
彼岸のクヮッチーも各家庭のよってそれぞれ違うが、基本的な昔ながらのクヮッチーはほとんど一緒といえる。その基本的料理というのが、沖縄の行事に欠かせないウサンミ(御三味)と呼ばれる料理である。シーミーや旧盆、旧正月などのメイン料理で、重箱の詰められることから重箱料理とも呼ばれている。内容は魚天ぷら、揚げ豆腐、豚三枚肉の煮しめ、結び煮昆布(または昆布巻き)、ゴボウの煮付け、大根の煮付け、コンニャク炒り煮、赤かまぼこ、カステラかまぼこ、田芋のから揚げのなかから七品か九品が重箱の詰められたり大皿に盛られたりして、トートーメーにウサギラれる(供えられる)のである。
それにしても、子供の頃は行事行事でしょっちゅう出てくるウサンミがイヤでイヤでしょうがなかったけど、結婚して子供が生まれ、親戚付き合いが深まるにつれて、行事のクヮッチー、ウサンミが好きになるのである。子供のころから食べなれているはずなのに、奥深い味わいのあるクヮッチーに、沖縄の行事料理に伝統の力を感じるのであった。
●嘉手川 学の『ryuQ100味』バックナンバー:
http://ryuq100.ti-da.net/c73393.html

筆者プロフィール:嘉手川 学(かでかわまなぶ)
フリーライター、沖縄県那覇市生まれ。沖縄のタウン誌の草分け『月刊おきなわJOHO』の創刊メンバーとして参画。沖縄ネタならなんでもOKで特に食べ物関係に強い。現在も『月刊おきなわJOHO』で食べ物コーナーを15年以上掲載中。
著書、編著、共著に『沖縄大衆食堂』、『笑う沖縄ごはん』、『泡盛『通』飲読本』(各双葉社)など多数ある。共著で『沖縄離島のナ・ン・ダ』(双葉文庫)と『もっと好きになっちゃった沖縄』(双葉社)、『沖縄食堂』(生活情報センター)が発売中。
そんなわけで、旧暦2月はあまりクヮッチーとは縁がないと思っていたら、ボクがいつも参考にしている渡久地初美著の「沖縄の祭祀と行事料理」を見ていると、旧暦2月ではなく、新暦の3月にクヮッチーを食べる行事、お彼岸があったのである。

考えてみたら毎年、お彼岸になるとウチのカァちゃんとこの母親の実家に親戚が集まり、クヮッチーを食べていたのである。あまり旧暦ばかりとらわれていたから思わず見逃すとこれであった。沖縄のお彼岸は春と秋の年2回あり、春分の日と秋分の日を中心に前後3日間のうちに都合のいい日に各家庭で行われている。本土のようにお寺に行ったりお墓参りをしたりという仏教の行事というより、沖縄固有の祖先崇拝の行事になっている。クヮッチーを仏壇の前に供えて、家族揃ってトートーメー(位牌)にウートートー(祈り)して、それから食事となる。大人はビールや泡盛、子供たちはソフトドリンクなどを好きなものを飲みながら、彼岸のクヮッチーをいただくのである。
彼岸のクヮッチーも各家庭のよってそれぞれ違うが、基本的な昔ながらのクヮッチーはほとんど一緒といえる。その基本的料理というのが、沖縄の行事に欠かせないウサンミ(御三味)と呼ばれる料理である。シーミーや旧盆、旧正月などのメイン料理で、重箱の詰められることから重箱料理とも呼ばれている。内容は魚天ぷら、揚げ豆腐、豚三枚肉の煮しめ、結び煮昆布(または昆布巻き)、ゴボウの煮付け、大根の煮付け、コンニャク炒り煮、赤かまぼこ、カステラかまぼこ、田芋のから揚げのなかから七品か九品が重箱の詰められたり大皿に盛られたりして、トートーメーにウサギラれる(供えられる)のである。
それにしても、子供の頃は行事行事でしょっちゅう出てくるウサンミがイヤでイヤでしょうがなかったけど、結婚して子供が生まれ、親戚付き合いが深まるにつれて、行事のクヮッチー、ウサンミが好きになるのである。子供のころから食べなれているはずなのに、奥深い味わいのあるクヮッチーに、沖縄の行事料理に伝統の力を感じるのであった。
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筆者プロフィール:嘉手川 学(かでかわまなぶ)
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著書、編著、共著に『沖縄大衆食堂』、『笑う沖縄ごはん』、『泡盛『通』飲読本』(各双葉社)など多数ある。共著で『沖縄離島のナ・ン・ダ』(双葉文庫)と『もっと好きになっちゃった沖縄』(双葉社)、『沖縄食堂』(生活情報センター)が発売中。
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